言葉の魔術・・・・・935

ちよみ

2011年02月16日 18:25

~ 今 日 の 雑 感 ~


言葉の魔術




    言葉というものは、同じことを話すにしても、その言い方で相手への影響がまったく異なって来るものである。

    以前、このブログに書いたが、何か人に訊ねる時にも、相手が答えられやすい訊き方と、答えにくい訊き方があるのだ。

    「あなたは、どんな映画が好きですか?」

    いきなりこう訊かれても、訊かれた方は、映画のジャンルを訊かれているのか、それともタイトルそのものを訊かれているのか、戸惑ってしまう。

    いや、そもそも、質問を投げかけられた人が、映画自体を好きかどうかも判らない。

    そういう時は、まず、

    「あなたは、映画をよく観る方ですか?」と、訊ねてから、「ええ、よく観ますね」と、返事が来たら、

    「では、どういうジャンルが好みですか?アクション系?恋愛系?それとも、ホラーかな?」

    と、具体的に種類を持ち出してやることで、相手も返事がしやすくなるというものなのだ。

    「主に、往年のラブストーリーを良く観ます。オードリー・ヘップバーンが好きなので・・・」

    「そうですか。では、ヘップバーンの映画で、何が一番好きですか?」

    「『ローマの休日』が最高ですね!」

    こういう具合に話を運んで行くと、相手の好みや趣味がはっきりと判るのである。

    一見、まるで、英会話の教材かとも思えるような言葉運びだが、これが案外会話を長続きさせるコツでもあるのだ。

    実は、先日、どうにも会話が噛み合わないことがあった。

    母親を二度目に病院へ担ぎ込んだ時、担当して下さった医師が、ベッドで横になる母親に向かい、

    「何回、吐きましたか?」と、訊ねた。

    母親は、「吐きっぱなしです・・・」と、答える。

    母親にしてみれば、自動車に乗っている間中、常に間断もなくビニール袋の中へゲェゲェやっていたので、そう答えたのだが、担当医師は、おそらく、

    「胃の中の物が口から出たのは何回ですか?」

    と、訊きたかったのだと思う。そう質問されていたら、たぶん、母親も、

    「胃の中は、もう空っぽですから、黄色い水のような物しか出ませんでした」

    と、答えられたのである。

    つまり、言葉とは、ちょっとした言い回しの違いで、相手の答えも変わって来るのである。

    また、答えにくくもなったり、気軽に返事が出来たりもする。

    些細なことだが、言葉の選び方一つで、重大なことを聞き出すことが出来たり、逆に聞き漏らしたりもするのだ。

    相手が返事に困っていたら、まず、自分の方から具体例をあげて、相手がYESかNOで答えられるような質問の仕方をお勧めする。

    そうやって、小さなとっかかりが付けば、今度は簡単に相手の方から色々と話し出してくれることもあるのだ。

    
    
<今日のおまけ>

    「みんなのアンテナ」という相談コーナーを読んでいたら、何とも「?」な質問と答えにぶつかった。

    妻が「こたつ寝」をするので、やめさせたいのだという。

    理由は、電気代の無駄だし、風邪をひくし、だらしないからだそうだ。

    それに対する答えが、「こたつを撤去する」「ベッドへ電気毛布を入れ、こたつのようにして奥さんを誘導する」という物が多かった。

    しかし、わたしには、疑問がある。まず、どうして「こたつ寝」がいけないのかが判らない。

    わたしの住む地方は、冬、こたつがないと夜も眠れない。昔から室内暖房などは皆無で、こたつに敷布団をくっつけて布団をかけ、眠るのが常識である。

    風邪なんかひかないし、電気代だって電気ストーブなどに比べれば安いものだ。

    だらしないなどということは絶対にない。

    質問者や回答者の感覚の方がおかしいと思う。

    冬になったら、家の中に誰もいない時は、むろん、コンセントを抜けばいいが、それ以外はこたつの電気は入れっぱなし---これが、雪国の常識だ。

    寝る時は必ずベッドへ入るというのは、暖かい時だけでいい。

    「こたつ寝」結構。布団をかけて、眠らせてやっておいて欲しい。

    
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