ゆっくり話も出来ない!・・・・・383
~ 今 日 の 雑 感 ~
ゆっくり話も出来ない!
従姉が珍しく家にやってきた。
高齢の両親を自動車に乗せているが、よそから頂いた野菜や果物などを我が家でも食べて欲しいと、持って来てくれたのである。
こちらもご近所からの頂き物を、従姉におすそ分けしたのだが、彼女は、
「親たちを自動車に乗せたままなので、時間がないんだけれど、ちょっと、話聞いてくれる?」
と、言うので、わたしが、いいよと、答えると、
「あたし、最近、血圧がやたらに高くなって、三ヵ月にいっぺん病院へ行って診てもらっているんだけれど、降圧剤を飲むように言われちゃったのよ。肝臓も悪いっていうんだけれど、この前は、地域の検診にも行って来たの」
従姉は、とても不安そうに話しだした。
「血圧が高いって、どれくらい?」
わたしが訊ねると、薬を飲まないと、最高血圧が180ぐらいになるという。そうなると、頭が痛くなり、めまいがして、吐き気までするので、今は、降圧剤で130ぐらいまで落としているのだそうである。
「-----で、先生は、とにかく太り過ぎが原因の一つだから、痩せなさいって言うんだけれど、あたし、もう一日中両親の世話で動きっぱなしでしょう。だから、あんまり食べてもいないんだけれど、とにかく太るのよ。痩せなさいって言われても、どうしたらいいのか判らないの」
確かに、従姉は、一日中働き過ぎるほど働いている。両親の足腰が満足でないために、朝から朝食作り、掃除、洗濯、そして家庭風呂は嫌だという両親を自動車に乗せて温泉へ入浴させに行き、また、家まで戻り、買い物に食事作りと、それこそ寝る間も惜しんで動いている。
それだけではない。今度は、親戚の叔母から連絡が入り、病院へ行きたいので連れて行って欲しいと言われれば、また、自動車で叔母を迎えに行き、病院の送り迎えも手伝うことになる。
そして、ついに去年には、従姉自身が過労で倒れた。
それでも、両親は、彼女に休みをくれようとはしない。少し元気になった途端、また、いつものように身の回りの世話をさせるのだ。
「そんなことばかりをしているのに、ぜんぜん痩せないんだから、本当に不思議だよね」
従姉は、我がことながら呆れるように話した。
もっと話をしていきたかったようなのだが、ここで時間を取られていると、あとのことが出来なくなるというので、彼女は、そこまでで言いたいことを切り上げて、自動車のところまで戻ったが、わたしが、何気に、
「また、時間見付けて話しに来てよ」
と、声をかけた途端、彼女は、突然、キッとした顔をこちらに振り向けた。そして、一言、
「こんな状態で、ゆっくり話なんか出来る訳ないじゃないの!」
そう言うと、車内の両親を恨めしそうに睨んで、自分も運転席に腰掛け、自動車をスタートさせたのだった。
この家族を見ていて、わたしはいつも思う。何故、彼女の両親は、もっと娘のことを気遣ってやれないのかと。どうして、自分の脚で歩こうと努力しないのだろうかと。
今度こそ従姉が倒れて入院などしてしまったら、その時は、どうやって生活するつもりなのかと、高齢という理由に甘えている彼らの危機感のなさには、怒りすら覚えるのである。
<今日の雑感>
よく買い物に行くスーパーの奥さんがぼやいていた。
「うちは、昔、大きいお祖父ちゃん夫婦がいて、中お祖父ちゃん夫婦がいて、わたしたち夫婦がいて、娘が三人。まだお嫁に行かなかった主人の妹もいて、十人が一緒に暮らしていたのよね。それが、お祖父ちゃんお祖母ちゃんたちが次々に亡くなって、主人の妹がお嫁に行って、今度は娘三人がみんな嫁いで行ってしまって、今じゃ、家の中には、わたしと主人の二人だけ。娘なんか産むんじゃなかった。一人でも、男の子がいてくれたら、お嫁さんが来て、孫が生まれて----って、また、家の中が賑やかになったのに・・・・。本当に、つまらない・・・・」
十人家族が、たったの二人になってしまうという今の現実が、奥さんには、どうにも寂しくてならないようであった。
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