何じゃ、そりゃ?2
ヤフー知恵袋には、実に奇妙な質問や相談ごとが投稿されるが、これもまた、そんな投稿質問の一つだった。
投稿者には、24歳になる会社員の娘さんがいて、その娘さんがお見合いで一流企業の29歳のビジネスマンと知り合い、相思相愛になった。
投稿者夫婦もそのビジネスマン青年をとても気に入り、何度か家にも招いては家族ぐるみの交流を持っていた。
娘さんは、いわゆる深窓の令嬢として育てられた箱入り娘なので、会社へ就職したのも社会経験を積むためという理由だったそうだ。
そんな娘さんと付き合うことになった青年は、デートの際も門限をきっちりと守り、二人で旅行へ行くなどということもしたことがない、実に真面目な関係を続けていたのだという。
ところが、ある日、青年が投稿者夫婦の家庭を訪れ、大事な話があるというので、「これは、きっと娘への結婚の申し込みに違いない」と、喜んでいたところ、青年の口から出た言葉は、驚くべき内容だった。
「自分の兄は結婚に失敗している。それは、相手の女性が結婚に向いているか否かを事前に見極められなかったからだ。自分は、兄のような失敗をしたくはないので、お嬢さんとテスト同棲をさせて欲しい」
テスト同棲という言葉を聞いて、投稿者は愕然とした。いったい、これまで手塩にかけ可愛がって育てて来た自慢の娘に対して、何という無作法な言い草か!
特に投稿者の夫は、娘を侮辱されたも同然だと大激怒し、「もしも、その同棲がうまく行かなかった場合は、娘を傷物にして捨てる気なのか?そんな無礼な奴に娘は任せられない」と、二人の付き合いをやめるよう娘さんを説得。早くも新しい見合い話を持ってきているということだった。
しかしながら、娘さん自身は、青年が同棲したいというのならそれでも構わないと思っているようだとのこと。
そんなわけで、投稿者は、どうしたらよいものか悩み続けているというのである。
この質問に対する回答は、「同棲ぐらい、今時少しも珍しいことではないのだから目くじら立てる方がおかしい。しかも、24歳にもなる娘さんの将来を両親が決めるという方が不自然で過保護」というものが多かった。
「同棲は今時珍しいことではない」という考え方が当たり前のようにまかり通る世の中にも、何処か古くからの日本人の美意識のタガが外れているような危機感を持つのだが、そんな中でも、一つ面白い回答があった。
それは、「同棲は女性の方にリスクがあり過ぎるので、同棲を認める代わりに、その青年から10億円ほどもらっておけ。そして、同棲が失敗したらその金は没収。成功したら、返すということでいいのでは?」というものだった。
まあ、10億円は少し高額過ぎると思うが、なかなかいいアイデアではないかと思う。失敗したらお金を没収されると思えば、男性側も軽はずみな真似は出来ないと、生活態度を自重自戒するのではないだろうか。
また、もしも、どうしても同棲したいと娘さんがいうのなら、その同棲を投稿者の家で行なうという手もあるように考える。
お互いに結婚に向いているか否かを確かめるための同居ならば、娘さんの実家で行なっても何ら問題はないはずだ。青年は、娘さん宅から会社へ通えばいいのである。
そうすれば、両親の目の届くところへ二人を置いておくことが可能なので、青年も下手なことはできないし、真摯に結婚を考えるのではないかと思うのだが。
それにしても、「テスト同棲をさせて欲しい」などと、良くも平気でそんな相手の神経を逆なでする台詞が口から出たものである。
回答者の中には、「青年が誠実な証拠だ」などという者もいたが、わたしには、単なる物の言いようを知らない世間知らずとしか思えないのだが・・・。
それでも一流企業へ勤めているということの方が、「何じゃ、そりゃ?」である。