ある商店主の悩み

ちよみ

2011年11月27日 16:34

ある商店主の悩み




    それでも、晩秋の休日ともなると、大勢の観光客が街の中を歩いている。

    しかし、ある商店主の話では、そんな観光客が店へ入って来ても、ほとんど商品を買おうとしないというのである。

    では、観光客は何が目的で店を訪れるのか?

    「おしゃべりですよ」

    と、店主はため息をついた。

    店主が言うには、入店して来た客が、店内の雰囲気を一通り眺めたあとで、

    「最近の、こちらの景気はどうですか?」

    と、いうようなことを言い始めたら、この客はなにも買う気がないな----と、即座に判るらしい。

    そこで、客の話に乗ったら最後、延々と身の上話が続くだけで、結局買い物などせずに立ち去られるのが落ちだという。

    とにかく、相手は話がしたくて旅に出て来るのだから、端から買い物などする気はないのが普通なのだそうだ。

    また、買い物は、別の場所で既に済ませて来ている場合もあり、そのあとの商店には、だいたいにおいて子供自慢やこれまで旅行して来た場所の思い出話などを聞いてもらいたいためだけの目的で、立ち寄るのがせいぜいなのだそうである。

    もしも、本当に買い物が目的ならば、客自身が真っ先に商品を購入してから、なりゆきで話を始めるのだという。

    そこで、その店主は、そういういわゆる「冷やかし客」を見極めるために、ある方法を考案した。

    店舗へ入って来て世間話をし始めた客に対して、わざとこう言うのだという。

    「お話は、あとでうかがいますから、お買い物を先にされたら如何ですか?」

    話だけが目的で入って来た客は、その一言で出鼻をくじかれたと思い、渋々店から出て行くというのである。

    長々時間をとられて話に付き合ったあげく、何も買ってもらえないのではあまりに腹が立つ。

    しかも、その一人の客につき切りになることで、別の客への応対が出来ず、そちらも逃がしてしまうことになり兼ねないというわけだ。

    実は、コンビニの従業員もこうした話し好きの客には悩まされていると聞く。

    コンビニの従業員は、原則、長い時間客の世間話に応じることは禁止されているそうで、道案内や商品説明などには丁寧に応じるが、身の上話を聞くようなことは出来ないのだという。

    とはいえ、近所の常連客がレジカウンターの前に立ったまま、孫が、息子が----と、話し出すのを無下に無視することも出来ず、いつも困惑するのだという。

    もしも、そこで、話を聞かずにいれば、あとで、

    「あのコンビニで働いている〇〇さんちの娘、薄情だよね」

    などという噂を流されることだって考えられる。

    そういえば、以前、一時間いくらで身の上話を聞いてくれるという商売を始めた人がいるという話題をニュースで取り上げていたが、あの商売はどうなったのだろうか?

    その後の状況は耳にしない。

    話は聞いて欲しいが、料金を支払ってまでは・・・と、いうことなのだろうか?

    とにかく、昨今は、話を聞いて欲しくてたまらない人が異常に増えた。

    つまりは、自分がここにいるということを誰かれなしに知って欲しいという、孤独な人が増えているということなのだと思う。

    

    
    
    

    

    
<今日のおまけ>

    女子フィギュアスケートのキーラ・コルピ選手(フィンランド)、本当に美しいですね。

    真の美女とはこういう人を言うのではないかと思うくらい、洗練された優雅さを持つブロンド女性です。

    もしも、ブロンド好きのヒッチコック監督が生きていたら、彼女を主人公に「めまい」や「鳥」のリメイク版を撮りたいと思うのではないでしょうか?

    やっぱり、クラシックな美しさは強いです。

    
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