きみは親友を裏切れるか?

ちよみ

2013年01月19日 14:52

きみは親友を裏切れるか?




     NHKのEテレで、若者たちばかりを集めて文学を通じて語り合うという番組を放送している。

    ここで、夏目漱石の代表的長編小説「こころ」の「下 先生と遺書」を取り上げて、もしも自分が登場人物たちの立場になった時、どうするか?----と、いうことを話し合っていた。

    この「先生と遺書」では、主人公「私」が先生と呼ぶ男性の独白の形で、物語が進む。

    


    私(先生)は、大学生の時、ある家に下宿しているのだが、その下宿屋の「お嬢さん」に恋をする。

    そんな折、同じ大学に通う親友のKが、その下宿屋にやって来て住み始める。

    Kとお嬢さんは、二人だけで部屋で話をしたり、一緒に外出していたりと次第に仲が良くなってきて、ある時Kは、私に「お嬢さんのことが好きになった」と打ち明ける。

    これまで勉強しか興味のなかったKが、初めて女性を好きになったことを打ち明けられ、私は絶句するが、大好きなお嬢さんを奪われてはならないと、ある日、Kとお嬢さんが下宿屋にいない隙を見計らい、お嬢さんの母親に「娘さんと結婚させて下さい」と、頼み込んでしまう。

    お嬢さんを手に入れることに成功した私に出し抜かれ、裏切られた親友Kは、遺書を残して自殺してしまう。

    その遺書の中に、Kの気持ちを知りながら、抜け駆けしてお嬢さんを手に入れたことが書かれているのではないかと、心配する私の懸念は外れ、遺書にはそれに関することは何も書かれていなかった。

    その後、罪悪感から逃れられないままに生き続けねばならなかった私(先生)も自殺する。




    このような小説なのだが、因みに、これは漱石文学の特徴でもあるのだが、小説内に「お嬢さん」の気持ちはまったくというほど触れられていない。(「坊っちゃん」のマドンナに関しても同様のことが言える)

    この小説の中において、番組に参加している若者たちがもっとも関心を示したのが、「もしも親友と好きな人がかぶった時、自分はどうするか?」ということであった。

    A 「親友との友情を大切にしたいので、自分も相手を好きだということは絶対に言わない」

    B 「親友と好きな人が同じだと思った途端、とにかくびっくりしてしまうと思うので、何も言わないというか、言えない」

    C 「親友だからって、何も遠慮することはない。わたしも好きだということをはっきりと伝える」

    D 「『え~~?お前も好きなの?マジ?実は、おれも~~~』と、いうように半分茶化した感じでそれとなく伝える」

    参加者たちからは、こんな意見が出ていた。

    でも、CやDと答えた人は、親友を失うことも覚悟した方がいいということのようだ。

    「はっきり伝えても、友情は変わらない」

    と、いう実際の経験者の意見もあったが、ほとんどの人たちは懐疑的だった。

    「この小説のKだけれど、何も女に振られたくらいで自殺しなくたって・・・」

    と、呆れ返る女の子もいたが、初めての恋をして、恋する相手と親友の二人から一度に裏切られたことで、Kの寂しさは極限に達し、もはや生きるべき意味を失ってしまったのだろうという、解説者の意見だった。

    文学の中にある身近な問題を深く考えてみるというような体験は、今の若者たちにはあまりないのかもしれないが、面白い学習方法もあるものだと、ちょっと感心した。

    さて、あなたが私の立場ならば、いったいどうしただろうか?
    
    
<今日のおまけ>

    学生の頃に使っていたバッグが出て来たので、中を調べていたら、な、なんとお札が一枚出てきた。

    「しょ、聖徳太子だ~~~~!!」

    一瞬、タイムスリップしたような気分になった。

    それにしても、今見ると「聖徳太子」は、かなりの違和感だ。

    時間の流れを痛感した。

    
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