表情で演じられる俳優---?
表情で演じられる俳優---?
渋温泉・温泉寺の鐘楼
『表情で演じられる俳優』といわれても、俳優って、だいたい表情で演じるのが仕事なんじゃないの---?と、普通はそう考えるものだが、実際は、目や顔の表情で演じることの出来る役者は、そう多くはないのだそうだ。
そつなく台詞をしゃべり、そこそこの笑顔や泣き顔、怒り顔、困り顔などが出来れば、何とかストーリーは伝えられるもので、役柄の細部に至るまで演じ尽くそうと努力している俳優が、いったい何人いることやら・・・。
ドラマを観るたびに、
「どうせ、この役者たちも、一回出演すればいくらになる---ぐらいの算段で、その場限りのやっつけ仕事をしているだけなんだろうな・・・」
と、思ってしまう。
マシンが選んだ未来に起きるであろう犯罪を予測し、解決していくという次世代クライム・サスペンスドラマ『パーソン・オブ・インタレスト 犯罪予知ユニット』の脚本を手掛けているジョナサン・ノーランが、番組中のインタビューに応えて、こんなことを話していた。
「主人公のジョン・リース役に選んだジム・カヴィーゼルは、自分がどんな人間を演じるのかを徹底的に研究している。もちろん、(アクションシーンも多いので)体力の維持は欠かさないが、それだけではなく、彼は人物の気持ちを表情で演じられる俳優でもあるんだ」
だから、彼を主役に抜擢した----と、いうことのようだ。
確かに、これまでの鉄仮面的な完全無欠のアメリカン・ヒーロー像とは一味違う繊細さや脆(もろ)さが、ジム・カヴィーゼルの演技からは感じられる。
俳優の真の魅力---これを色気(いろけ)と表現する評論家もいるが---とは、正にこうしたところにあるのだろうと思う。
『善徳女王』のピダム役---キム・ナムギルの迫真の演技に魅せられたという人たちの多くもまた、役柄における微妙な心の葛藤ややるせなさを、狂おしいほど律儀に演じた彼の真摯な努力に感銘を受けたものと想像する。
そしてピダム同様、『ジョンイ』では、決して報われることのない幼なじみへ寄せる思慕のために命を落とす悲劇のヒーロー・テドを演じたキム・ボムのいじらしく健気な表情もまた、大いに観る者の心の琴線をふるわせるに足る力を秘めていたといえよう。
ただ、この似通った---愛する人への想いが届けられない---境涯の剣士を演じた二人の俳優には、決定的に異なる演技的素養の存在が否めないこともまた事実のようで、これはわたしの勝手な憶測なのだが、そこには彼らの血液型が関係しているように思えてならない。(血液型と性格の関連性については、懐疑的見解を持つ人もいるだろうが・・・)
他の俳優陣との協調性よりも、自らの演技力の向上を希求することに重きを置くキム・ナムギルに対して、周囲との調和や共演者への気配りを優先するキム・ボム。
同じように表情で演じられる俳優同士といえども、天才肌のAB型と努力肌のO型では、その質がかなり違ってくるという比較の上での発見もあり、二人のイケメンぶりも相まって、更に楽しめる二佳作となっている。
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