~ 今 日 の 雑 感 ~
包丁を隠せ!
連日、報道される酒井法子容疑者の覚せい剤使用による逮捕報道。
あの清純派タレントの「のりピー」までが、何故?------日本はもとより、中国、台湾、韓国までが、衝撃と失意に騒然となっています。
しかし、報道では、今や覚せい剤は、日常生活でも簡単に手に入るようになっている薬物の一つで、特に、芸能関係者は、人気があり、売れていればいるほど、その疲労感を緩和するために手を出し、また、その逆の場合は、挫折感や、早く有名になりたいとの焦燥感から逃げるために、容易に手を出してしまうのだそうです。
今から十年程前、わたしの家に、突然、一人の女性が訪ねて来ました。
年齢は三十代前半、身長一七〇センチ近くはある大柄な女性で、髪は長く、ワンピースを着ていました。
その女性は、わたしの母が応対に出ると、いきなり、奇妙なことを言いだしたのです。
「わたし、綺麗でしょ?そう思うでしょ?」
母は、何のことやら判らず、用件を訊きますが、その女性は、ただニヤニヤするばかりで、次第に母の方へと近付いてきます。そして、
「なんだ、ビクビクして、笑っちゃうよ!馬鹿みたい」
女性は、そんなことを言いながらも、意味もなくそこにいるものですから、わたしも不思議に思い、居間から玄関へ出て行きました。すると、今度は、女性は、わたしの方を見て、
「へ~、自分より、わたしのほうが綺麗なもんだから、面白くないんだ」
と、やはり訳の分からないことを言いながら、横目でチラチラと、母の脇のほうを見ます。わたしが、そちらに目をやると、まずいことに、そこには、荷ほどきのために使う小さな包丁が置いてあったのです。
(これは、やばいぞ!)
わたしが思った時、同じことを感じていたのか、母が、すっと手をのばしてその包丁をつかみ、わたしに手渡しました。わたしは、その包丁をすぐに家の奥の方へ持って行き、また、その場へ戻ると、母と女性は、まだ睨み合ったまま対峙しています。そして、母は、今度は左側にある事務机の方を指さしました。
すると、そこには、果物をむくために用意したナイフが---!
驚いたわたしは、女性に気付かれないように、そのナイフの方へ横歩きに近付き、それを手に取ると、背中へ隠すようにして握りました。
女性は、ヘラヘラ笑いながら、「バカじゃないの!みっともない奴!」などと、暴言を吐いていましたが、わたしが、じいっと睨み続けていると、訳の分からない言葉を毒づきながら、ようやく玄関から出て行きました。
「なんなの、あの女!?」
わたしも、ほっとしてナイフを事務机に上へ置くと、母は、すぐさま警察署へ電話をし、今あったことの一部始終を話しました。すると、近くの派出所の警察官がすぐに駆け付けて来てくれたので、詳しく女性の年格好を伝えると、それから、三日ほどして、その女性が何処かのホテルにいる所を逮捕されたという知らせを受けました。
どうやら、他の家でも、我が家と同様のことをして、住人を脅したようです。そして、判ったことは、その女性は、覚せい剤を使用していたということでした。
覚せい剤を常用すると、幻聴が聞こえたり、幻覚が見えたりなどするため、こういう奇怪な行動を取ることがあるのだと、警察官は話してくれました。
ただ、女性が、誰にも、実際に危害を加えなかったことだけが幸いでした。
しかし、あの言動から、彼女がこちらを敵とみなしていたことは確かなようです。たった数分の出来事でしたが、冷や汗ものの、瞬間でした。