~ 今 日 の 雑 感 ~
職場の鬱憤は、病院で晴らす
わたしが、入院していた時、同じ病室の五十代後半の女性が、とても深刻そうな顔付きで、近付いて来て、
「ちょっと、わたしの話、聞いてくれない?」
と、いうので、わたしも、どうせ暇を持て余していましたから、いいですよと、答え、二人して、病棟の談話コーナーへ行きました。
時刻は、午後の八時を過ぎていましたので、談話コーナーには、わたしとその人以外誰もいませんでした。
その女性は、乳がんで入院している患者で、もう手術も終え、毎日腕の上げ下げのリハビリをしているのです。乳がんの手術で、わきの下のリンパ腺まで取ってしまった患者さんの中には、一時的に腕が上がらなくなってしまう人もいるそうで、この筋肉を固まらせないためにも、毎日のリハビリは欠かせないのだといいます。
でも、その人は、いつも理学療法士さんの指示で真面目に頑張っていたので、その頃、腕はもうかなり良く上がるようになっていました。
おそらく、退院も間近だろうと思われるその女性が、何の話をしたいのかと、わたしは、訝しく思いながら聞いていたのですが、横並びの長椅子の隣に腰をかけながらしゃべり始めた女性の話を聞くうちに、わたしは、職場のイジメというものが、そこまですさまじいものなのかと、正直、仰天しました。
その女性は、地元の小さな会社の機械部品組み立て部門で働いているとのことで、社長も彼女の正確で手際のよい仕事ぶりを高く評価していて、特に、お得意先の会社からは、彼女に部品の組み立てを頼みたいと、指名されるほどの腕前なのだそうです。
そんな彼女の職場では、かなり以前からイジメが始まっていて、やはり有能な女性社員が一人、同じ部署の六十代の女性パート社員から頻繁にイジメを受け、体調を崩して会社を辞めてしまったことがあったというのです。そして、そのいじめのターゲットが、今度は、この女性になってしまったのだというのです。
社長の信頼も厚い彼女は、何かにつけて、その六十代の女性から嫌がらせを受け始めたのですが、ある時は、せっかく組み立てて、あとは納品するだけという製品を、故意に壊されたり、社内に不倫の噂を流されたりもしたのだといいます。
しかし、彼女の性格をよく知っている他の社員たちは、そんな噂を信じなかったので、とうとう六十代の女性は、キレて、彼女が社長室で次の仕事の指示を受けて出て来た時、階段を降りかけた彼女の後ろから近づき、いきなり背中を思いっきり押したのだといいます。
彼女は、階段を転がり落ちました。でも、幸いなことに、怪我は、手足の打撲で済んだのだといいます。彼女は、そのことを会社側へ話しましたが、如何せん、目撃者が一人もいなかったために、犯人の女性が、処分されることはなかったのだとか。
そんな陰湿なイジメや暴力は、六十代の女性の性格を表すに十分だと見えて、その女性のご主人も精神的に追い込まれ、自殺してしまったのだそうです。それからというもの、その女性はますます荒れはじめ、現在も、会社の鼻つまみ者なのだといいます。
しかし、このイジメによるストレスが原因で、彼女は、乳がんになってしまったのだと、担当医師も話していたのだといいます。
それでも、自分の中の気持ちを家族にぶつけると、家族も共に悩んでしまうだろうし、子供たちへの影響や、仕事をしているご主人の心痛を考えると、本当のことも言えず、退院してからも、再び、一人悶々と悩み続けなくてはならないので、今のうちに、言いたいことは全部誰かに聞いてもらって、すっきりした気分で、また仕事に復帰したいのだという話でした。
わたしも、聞いているうちに、本当に腹が立って来てしまいました。焼きもちも、ここまで来れば、間違いなく犯罪です。自分の不幸を八つ当たりで解決しようなどとしても、無駄なことは、その六十代の女性も判っているはずなのです。それでも、幸せな人が憎らしくてたまらない。
ふざけた話です!!
わたしは、「そんなバカ女、やっつけちゃって下さい!そいつが組み立てた部品、今度は、あなたが、躓いたふりでもして踏みつぶしてしまって下さい」と、言いました。
すると、彼女は、思いっ切り声を出して笑って、「そうね!今度、そうやっちゃおう。我慢しているなんて、バカ臭いもんね。こんな病気になったのだって、あいつのせいだもん。仕返しされたって、自業自得よね」と、晴れ晴れした顔で言いました。
でも、話をしてくれたのが、どうして、わたしだったのか?と、その女性に訊ねると、
「だって、病室の中で、一番元気そうだったから-----」
「・・・・・は、そうでしたか」
まあ、何はともあれ、お腹の中にある嫌な気持ちは全部吐き出してしまった方が、病気も退散するでしょう。自分の身体が大事だと思ったら、我慢して「耐える女」を演じる必要などないと思います。
それにしても、こんな経験から思いました。病院には、患者の話を何でも聞いてくれるカウンセラーのような人が必要だと。それも、気軽に話が出来るような立場の人が------。
患者は、憤懣の塊なのだから、諭されるような話は聞きたくないのです。
ともに、拳を振り上げてくれるような味方の出現を待っているのです。
<今日のおまけ>
とかく太っている女性の中に、「わたしって、あまり食べないのに、すぐ太るのよね。体質だから仕方がないのかしら」と、いう人がいるが、そんなのは、言い訳に過ぎない。(-----と、思う)
食べないでも太るなどということは、理屈の上でもあり得ないのだ。確かに、痩せにくいという体質の人はいるだろう。しかし、食べなければ、痩せるのは道理で、理論上「空気太り」などということはあり得ないのである。(ある種の病気でホルモン異常をきたしている人は、別である)
わたしの知り合いにも、上記のようなことを言う女性がいたので、「あまり食べない」とは、どのくらいのことを言うのだろうかと、調べてみたら、確かに、三度の食事としては、それほどの量は食べていなかったが、間食の量が半端ではなかった。
牛乳を大鍋で沸かして、コーヒーに入れてたっぷりと飲み、クッキーも大箱で買い込んで、マーガリンやクリームチーズを塗って食べる。果物も、グレープフルーツ、リンゴ、スイカ、ミカン、バナナ等々を常に食卓の上へ置いて手を出しており、ケーキや生菓子類も、大好きと来ている。
やはり、かなりの量を食べているのである。
これでは、どんなに身体を動かしていたとしても、摂取カロリーを消費することなど出来る訳はない。
わたしは、その人に、「食べていないというのは、妄想だよ」と、説明したが、まだよく判らないようである。