おれは、癌じゃない!・・・・・208

ちよみ

2009年10月18日 00:07

~ 今 日 の 雑 感 ~


おれは、癌じゃない!



    外科病棟へ入院すると判りますが、入院患者のほぼ九割が癌患者です。

    残りの約一割が、その他の病気の患者で、わたしもその一人でしたが、医師は、わたしが退院するまで癌の疑いを持っていて、剔出した部分のかなり詳しい病理検査を行ったようです。

    また、現在、医師たちは、癌であることを、必ずといっていいほど患者に告知します。なんで、こんなにもあっさりと-----と、思うくらいに、何の躊躇もなく、余命も伝えます。

    昔と違って、ここまで癌患者が増えると、医師の間では別に珍しくもないため、「風邪ですね」というのと同じくらい気楽に、「癌ですね」と、言うのです。でも、言われた患者の方は、ほとんどの人がパニック状態になります。

    そのパニクり方が尋常でない者も中にはいて、「そんなはずはない!絶対違う!こんなヤブ医者、信用するか!」と、大騒ぎになってしまう患者もいるそうで、そんな男性患者の一人を、わたしも知っています。

    医師は、本人を説得しようにもどうしようもないので、妻と娘だけを別室へ呼び、そこで詳しい話を聞かせたのですが、妻の方は、頭が真っ白になってしまったようで、その場で泣き崩れてしまい、娘だけが何とか気持ちを落ち着けて、医師の説明を聞いたのだということでした。

    男性の癌は、前立腺癌で、検査入院をしたのですが、既に七十歳を過ぎているとのことで、手術はせず、薬で治療して行こうという話になりました。しかし、男性は、同じ病室の男性患者が、前立腺肥大の手術のために車椅子で病室を出て行く際、泌尿器科の医師に、「おれのも切ってくれ」と、何度も頼み、医師は、「何回説明しても判ってくれない」と、困っていたそうです。

    男性は、約一週間の検査入院を終え、自宅からの通院治療に切り替えることになっても、自分は癌ではないと医師に言い続けているのです。家族も、その男性の気持ちを酌んで、ただの前立腺肥大ということに話を合わせているということですが、困るのは、病院での待合室で、同じ症状の近所の男性と時々会うため、その男性が、自分の薬と同じ物を処方されていることを知り、「ああ、あんたもおれと同じ前立腺癌なんだな。小便の出はどうだい?」などと、声をかけて来ることなのだそうです。

    そんな日は、病院から帰って来ても、ひどい落ち込みようで、今まで大好きだった大相撲中継も観なくなり、お笑いタレントたちがゲラゲラと馬鹿騒ぎしていると、「あいつら、人がこんなに悩んでいるのに、ふざけやがって!」と、テレビも消してしまうのだとか。

    これまではとても話し好きだった男性が、散歩もすることなく、家に閉じこもってから、早くも三年になろうとしているのです。その間に、足腰も衰え、今では家の中の移動も大変になってしまいました。でも、癌の方はというと、これが治療の甲斐あって数値も大幅に下がり、身体自体に特別な問題はなくなっているのです。でも、問題は気持ちの方で、家の中はいつも暗く、沈んでいます。

    そして、男性は、未だに自分の本当の病気を認めようとしません。

    病気のことが四六時中頭から離れないため、夜もよく眠れず、あの告知から今日まで、布団に横になって寝たことがないというのです。

    あの時、もしも医師が、「ああ、前立腺肥大ですね。でも、かなり進んでいますから、強い薬で治療して行かなくてはなりませんよ」などと、言っていたら、この男性の生活は、もっと違ったものになっていたのかもしれないと、ふと考えてしまいました。  
<今日のおまけ>

    新聞には時々、結婚相手募集の記事が載ることがある。

    こういうところに掲載される最近の婚活者は、男女問わず三十歳以上だ。そして、この募集の内容を読むと、面白いことが色々判る。

    たとえば、「女性  32歳  高卒  会社員  年収500万円以上の次男で35歳~39歳を希望」と、あれば、この女性は、自己評価が世間一般の見方よりも高く、嫁づとめを嫌い、世間体を気にする面倒な性格ということが、何となく見当がつく。

    また、「男性  45歳  短大卒  公務員  年齢30歳~38歳の女性  再婚可  両親との同居希望」と、あれば、相手の女性に子供がいても構わない訳で、しかも、自分の子供も産んでもらいたいし、両親の介護も引き受けて欲しいという下心が見え見えであることが判る。

    こんな想像を働かせて記事を読むと、どうでもいい婚活記事も、案外楽しく読めるものである。    
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