~ 今 日 の 雑 感 ~
北信ローカルの記事から
「わたしは、今まで病気という病気をしたことがない」----そんな風に自慢をしている人が、いざ病気になると、もともと病弱な人に比べて、かなり神経質に思い悩むものだということを、わたしは知っています。
わたし自身、長年に渡って身体の痛みと闘って来ましたから判るのですが、泣いていたのは痛みが激しいためで、手術の不安や、死などという言葉が医師の口から出た時も、正直、ほとんどどうでもよいことでした。この痛みから解放されるのであれば、「もうどうなってもいいや」ぐらいの気持ちであったため、早く手術をして欲しいと、自ら手術日を早めてもらったくらいです。
しかし、そういう究極の経験がない場合は、ほんのささいな病気でも精神的に追い詰められ、うつ病傾向となり悩まれる人もいるそうで、そんな病歴を持つ女性の体験談が、先日の「北信ローカル」新聞に掲載されていました。
Yさんという女性は、六十歳ごろまでは病気らしい病気もしないごく健康な人でしたが、二、三年前から、手のしびれや肩こり、不眠などに悩まされ、県内の病院を数か所受信。とくに、癌に対する不安が大きく、健診の結果、甲状腺腫が見つかり、大学病院で詳しく調べてもらったところ、甲状腺腫は3個あることと、そのうちの一つが「濾(ろ)胞腺がん」だということが判ったのだそうです。
この「濾胞腺がん」というものは進行が非常に遅く、すぐに手術の必要はないため、住んている場所の病院で定期的に検査してもらうように説明され、近くの総合病院へ、(大学病院の)紹介状を持って診察を受けに赴いたのでした。
しかし、そうこうするうちにも、Yさんの中で癌に対する不安は日々大きくなり、インターネットで調べるなど、居ても立ってもいられない気持ちになって行ったのだそうです。その心理的抑うつのために、肩こりや喉の圧迫感が強くなり、思い余って総合病院の外来の担当医にそのことを話したのですが、聞き入れてもらえなかったのだといいます。
それがためか、外来のスタッフの対応までもが冷たく感じられ、担当医師からは、喉の痛みと甲状腺腫は何の関係もないとの診断をもらい、Yさんのために診察時間をとられると、他の患者にも迷惑になる、神経内科か神経科に相談してほしい、インターネットの情報を質問されても答えようがない、大学病院へ戻りますか?-----と、シャットアウトされてしまったのだそうです。
現在、Yさんは、東京の甲状腺専門病院で定期的に診察してもらっているとのことでしたが、ここでは、心のケアも一緒に診てくれるので、とても助かっているという内容でした。
この手記を読んだ時、わたしは、この女性は、もともと受診する病院を間違えていたのだと感じました。
地方病院の医師不足は、今や誰もが周知のことです。そういう地域医療の拠点病院で優先されるのは、まずは緊急を要する患者さんなのです。少ない医師が、大勢の患者を診察するためには、緊急性のない患者の治療は、後回しになるのは当然のことです。進行の遅い病気のために、より大変な病気の患者の治療をないがしろには出来ません。
ですから、その担当医の先生が説明したことは、至極理にかなったものだと思うのです。
わたしは、自分の病気が相当にひどいと判った時も、救急外来に親指を切断した男性がやって来た時は、その蒼白になった顔面を観て、「先に、診察してもらってください」と、受診の順番を譲りました。(まあ、これは常識でしょうけれど・・・・)
このYさんは、幸いなことに、東京の病院へ通院することが出来るのです。しかし、病気のせいで、どうしても身動きがとれない患者も大勢いるのですから、そういう患者が地元の病院へ集まるのは仕方がないことです。精神的な問題よりも、そこには命にかかわる問題が、日々ひしめいているのです。
自分の身体のことが心配なことは判ります。病気の大小にかかわらず、病気が怖いと思う気持ちは、誰しも同じです。しかし、病院には、その病院が抱える事情というものもありますし、すべての人に満足のいく医療を提供するということは、今の地域病院には無理難題というものではないでしょうか。
正直、心療内科医でもない医師に、心のケアまでお願いするというのは、酷な話なのだと思います。
現民主党政権は、そうした地方の医師不足、医療崩壊を救済するべく、勤務医に手厚い政策を実施する運びであると聞きます。この新たな診療・医療制度改革が実行されれば、少しは、患者一人一人の気持ちに副った、手厚い治療が可能になるやもしれません。
それまでは、「患者側にも、自分だけがよければいいというような考え方は、改めて欲しい」と、いう地域医療人の意見にも耳を傾ける必要があるのではないかと、考える次第です。
<今日のおまけ>
国内の新型インフルエンザ感染患者が、100万人を突破したという。(ホントだったら凄い!!)
もはや、大流行の兆しである。持病のある人や妊婦、受験生などへのワクチンの接種をこれまでの予定よりも前倒しで行なう自治体が増え、長野県もこの11月から開始する運びだという。
そこで、理容師や美容師の人たちも、お客さんとかなりに至近距離で接する仕事なので、ワクチン接種も優先的なのかと訊ねたところ、まったく関係ないという答えだった。
「医療関係は、判るけど、わたしたちだって似たような商売なのにねェ・・・・」
本当に、何故なんだろう?