入院病棟で・・・・・801

ちよみ

2010年09月21日 09:54

~ 今 日 の 雑 感 ~


入院病棟で・・・・




    わたしが病院へ入院していた時、動かない身体を何とか少しでも回復させようと、病棟の長い廊下を一生懸命に伝い歩きのリハビリをしていた際のことです。

    ある病室の前の廊下の隅に、一人の男性がへたり込むようにして腰をおろしていました。

    両腕で頭を抱え込む格好で座り込むその男性は、ようやく60代になったかといった歳格好で、その顔には疲れの色が溜まっていました。

    「大丈夫ですか?」

    わたしが声をかけると男性は立ち上がり、妻の術後の経過が思わしくなくて、今人工透析に行っていると、心底心配そうに話しました。

    「もう、三時間にもなるんだけれど、まだ帰って来ないんだよ。何やってんのかな?」

    男性があまりに不安そうなので、看護師さんに訊いてみたら如何でしょうか?と、わたしが言い、男性は、ナースステーションへ行きました。

    そして、戻ってきて報告するには、

    「まだ、何の連絡も入っていないので、透析が終わらないのだと思うって、看護婦さんは言っていたよ」

    「人工透析って、時間がかかるんですね」

    わたしが言うと、男性は、大きな溜息をついて、こう話しました。

    「長年勤めた会社を、最近、定年になって、これから女房と何処か旅行でもしようかと思った矢先に、この病気だろ?いったい、何のためにこれまで一生懸命仕事して来たのか判りゃしない。医療費にかけるために退職金をもらった訳じゃないんだよ。おれも女房も、何も悪いことなんかしていないのに、なんで、こんなに心配ごとばかり重なるんだろうな・・・・」

    「そうですか・・・・。奥さま、早く良くなられるといいですね」

    男性の落胆ぶりと愕然とした様子に、わたしは、そう言葉をかけるだけが精一杯でした。

    結婚し、子供が出来て、独身では味わえない何倍もの幸せを手に入れれば、その反動で不幸も何倍にもなって返って来てしまいます。

    自分以外の人生を受け入れるとは、そういうことなんだと思うのです。

    世の中は、結局、最後は帳尻が合うように出来ているのかもしれない----時々、そんな風に思います。

    医師や看護師に独身者が多いのも、案外そんな人生の矛盾を判り過ぎるほどに判っているからなのかもしれません。
<今日のおまけ>

    先日、このあたりで朝からアメリカシロヒトリという害虫の駆除が行なわれた。

    植木や屋敷林などと持つ家ごとに薬剤をまくので、風に乗って薬剤が流れて来ることも予想して、窓を開けることが出来ず、洗濯物も干せなかった。

    この夏のスーパー猛暑が原因で、大量発生しているらしい。

    来年の夏は、もう少し涼しいと良いんだけれどね。

    
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