高橋大輔選手とモロゾフコーチ

ちよみ

2012年12月09日 17:29

高橋大輔選手とモロゾフコーチ




    フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが8日、ロシアのソチで行われ、男子フリースケーティング(FS)では、高橋大輔(関大大学院)がFS177.11点の総合269.40点で、日本男子初となる優勝を飾った。2位は羽生結弦(東北高)でFS177.12点の総合264.29点。男子初のファイナル3連覇を狙ったパトリック・チャン(カナダ)は総合258.66点で3位だった。
    日本勢はそのほか、小塚崇彦(トヨタ自動車)が総合253.27点で5位、町田樹(関大)が総合198.63点で6位だった。(YAHOO!ニュース)





    完璧ではなかったが、高橋選手の演技は、確かに他の選手のレベルを圧倒していたと思う。

    羽生選手は、試合後のインタビューの際、やや納得の行かない表情を見せてはいたが、情感の厚みはやはり高橋選手の方が数段上だった。

    高橋選手と今季振付アドバイザーとして組んだニコライ・モロゾフコーチは、2008年、モロゾフコーチが当時組んでいた高橋選手には告げずに、織田信成選手へのコーチ契約を結んだことで、一時期契約が破たんしていたのだという。

    その織田選手も、モロゾフコーチとの契約を2年で打ち切った。

    その間、高橋選手はバンクーバー五輪で銅、2010年には世界タイトルを取るなどの快進撃を見せると、モロゾフコーチ自身が、「ダイスケに嫉妬心を懐いた」と語るように、荒川静香選手以来、再びオリンピック金メダリストを自らの手で作り出したいという強い思いから、昨シーズンの終わりに高橋選手に改めてコーチのオファーをしたのだという。

    一度、裏切られるような形で決別した相手から再びコーチの申し込みを受けた高橋選手は、初めは困惑したそうだが、安定した信頼関係でこれまで指導してくれている長光歌子コーチとの契約は継続する形でならば、モロゾフコーチの斬新な発想は演技のスパイスになるだろうという大人の判断で、そのオファーを受けたのだそうである。

    フィギュアスケート界では、コーチから選手にオファーをするということはかなりまれなことだそうだが、モロゾフコーチは、そういう通例にこだわらない面があるという。

    安藤美姫選手とも契約を解消したモロゾフコーチにとっては、やはり、高橋大輔選手の類まれな天才的演技力を、あたら横目で指をくわえて見ていることは出来なかったようである。

    トランジッション(演技と演技のつなぎ)がうまくないモロゾフの振り付けではもはや点数が伸びない----という風評もあるそうだが、高橋選手は、ソチ五輪へ向けて、今飛ぶ鳥を落とす勢いの振付師ローリー・ニコル女史を諦め、モロゾフを選んだ。

    「高橋選手はあなたを必要としていると思うか?」の質問に、モロゾフコーチは、「彼もぼくを必要としていると思いたい」と、珍しく謙虚に語ったという。

    その二人の思惑が功を奏しての今回のGPにおける日本男子フィギュア界悲願の優勝。

    果たして、本番のソチ五輪ではこの選択がどのように結実するのか、今から楽しみである。




<今日のおまけ>

    何か、あのとんでもない高得点をたたき出すキムヨナ選手が、女子フィギュア界へ帰って来たみたいだなァ・・・。

    他の選手を寄せ付けないほどの驚異的点数を稼ぐ彼女の判定には、疑惑の「陰謀説」もささやかれるほどだというが、フィギュアスケートの詳しいルールなどは、素人には判らないものの、彼女の卓越した表現力に太刀打ちできる選手は、確かに世界には見当たらないといっていいだろう。

    あの女優も脱帽のやるせなく悩ましげな表情は、とても日本の女子選手が束になってもかなわない迫力がある。

    もしも、浅田選手や鈴木選手がキムヨナ選手に正面から挑むのならば、彼女以上の演技力を身につける必要があるだろう。明るく溌剌も大事だが、全身からにじみ出る情念を振付に盛り込まなくては、ソチ五輪ではキムヨナ選手の二連覇を許すことにもなり兼ねない。
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