無神経なCM・・・・・69
~ 今 日 の 雑 感 ~
無神経なCM
これは、何年か前のテレビコマーシャルだったのですが、あるビールメーカーのCMに、何とも無神経だと思われるものがありました。
それは、ビール会社の工場に若い男性社員が就職し、年配の男性社員からビール造りの心得を教えてもらうというもので、しかも、その二人の社員たちは、親子だという設定でした。
画面に流れるナレーションも、「父の精神を子が受け継ぐ。そうやって、我が社は本物の味を後世に伝えるのです」と、いうような、如何にも微笑ましく伝統的製法を重んじているといった内容の、一見グッと胸に迫る構成になっていました。
しかし、わたしは、このコマーシャルを観た瞬間から、なんて、視聴者を馬鹿にしたCMなのだろうかと、腹立たしく思ったのです。おりしも、世の中はニート問題や、失業風が吹き始めていた頃です。ただでさえ、大手の会社への就職など一般の若者には難しいという社会風潮の最中に、親と子が、同じ会社の同じ職場、しかも大手のビール会社で働くなどということが、現実問題としてありうるでしょうか?
もし、あるとしたら、それは間違いなく縁故採用の最たるものでしかないはずです。つまり、あのCMは、堂々と、コネで就職した若者の話を取り上げたものだということなのです。百歩譲って、あの若者に、それなりの学識と才能があったために就職試験に合格出来たのだとしても、そういうことは、就職できなかった人たちの反感を買うことは目に見えている訳で、出来れば、隠しておきたいエピソードとして、会社側も謙虚に扱うべきものであると思うのです。
しかし、これが、個人経営の小さなビール工場で、親父のあとを息子が継ぐ-----などというCMだったとしたら、話はまた変わって来ますが------。
わたしの友人たちの中にも、就職のためには本当に大変な経験をした者もいます。面接試験でとんでもない嫌味を言われたり、容姿をけなされたり------。どうして、こんな思いまでして就職試験を受けなくてはならないのかと、涙ぐましい努力をしたものなのです。ですから、縁故採用などで、ぬくぬくと、就職試験を突破している社員を見ると、実に腹が立つのです。
そんな中の友人の一人が、かつて、リストラ地獄で中堅サラリーマンたちの自殺が相次いだ時、こんなことを言っていました。「
わたし、あの人たちのことを少しも可哀そうとか気の毒とか思わないわ。だって、わたしを面接して馬鹿にしきった末に不採用にしたのは、あの世代の人たちなんだもの。あの時、わたしだって、真剣に自殺を考えた。だから、彼らは、自業自得なのよ」と----。
関連記事