リハビリは、目標を持って!・・・・79

ちよみ

2009年06月30日 11:57

~ 今 日 の 雑 感 ~


リハビリは、目標を持って!


    ほぼ一年ほど、寝たきりのような状態だったわたしは、副甲状腺を除去する手術の後も、足のひどいむくみなどもあって、ほとんど歩くことができない状態でした。

    点滴台を持ちながらだと、それを杖がわりに何とか歩行出来ましたが、これがないと、ほんの五メートルも自力で歩くことは難しかったのです。

    それでも、病院としては、外科的治療が一通り終わった患者を、何時までも入院させておくことは出来ません。わたし自身も、早く退院したいばかりに、何とか自力で歩けるようにと、病棟の廊下に備え付けられている歩行訓練用の手すりを使い、必死で歩く練習をしました。

    すると、長い廊下の一番端に、必ず一人の若い医師が立ってこちらを見ているのです。その医師の姿は、わたしのいる位置からは逆光で黒いシルエットにしか見えないのですが、それが、わたしの手術を担当してくださった医師であることは、はっきりと判りました。その先生は、わたしが近くまで行くと、さっと姿を隠すように見えなくなるのですが、わたしが元来た廊下を戻り始めると、また、前方に姿を現わして、じっとこちらを見ているのです。

    こんな歩き方しか出来ないまま退院させなくてはならないことを、その先生も、気にされていたのかもしれません。

    わたしは、その後退院してからも、杖を使いながら、自分で言うのもなんですが、かなり一生懸命歩く訓練をしました。痛み止めを飲みながら、正にへたばりそうになりながら、家の周りを十メートル、三十メートル、五十メートルと、次第に歩く距離を増やし、ある日の通院日に、診察室までの廊下を杖なしで歩いて入室したところ、その先生は、本当に喜んで、

    「今日は、杖なしで来られたんですね。よかった----」
  
    と、おっしゃって微笑みました。自宅にいる間も、別の診療科との診療日の調整で電話をすると、すぐに直接出て下さって、毎日のように手術をして大勢の患者さんを担当されているのにもかかわらず、「足の様子はどうですか?おうちの階段は、何とか上り下りできるようになりましたか?」と、カルテも見ずに、即座に、訊いて下さるなど、その記憶力と、患者に対する真摯な気持ちに、わたしは、感謝すると同時に驚いてもいました。

    そんな担当医の励ましがあったことで、わたしは、何とか、根性のリハビリを続けることが出来、現在は、ほぼ以前と変わらない歩行で(自分では、そう思っているのですが・・・・)、杖なしで歩けるようになりました。

    リハビリは、正直、辛いです。かなり、心身ともにダメージも受けますが、痛くても、辛くても、地道に続けることで、亀の歩みではありますが、少しづつ前へ進んでいけるものなのです。でも、それには、やはり、一人の力では限界があるように思えます。そんな時、そっと背中を押してくれる医師や友人、家族のさりげない励ましが、とても大事だと気付きました。

    今思うと、わたし自身も、自分のためであることはもちろんなのですが、あの担当医の先生のためにも頑張らねばならないと、思った気持ちが大きかったと思います。

    その先生は、「ぼくは、何処へも行きません」と、言っておられましたが、大学病院の要請で、去年の七月に別の病院へ転勤して行かれました。

    この体験から、わたしは、リハビリには目標となる物が必要だということを、認識しました。それが、たとえば、身体が動けるようになったら、家族で旅行しようという目標でもいいですし、愛する人の笑顔をみたいという目標でもいいでしょう。子供たちと、もう一度かけっこをしたいと言っていた、元プロ野球選手の清原和博さんの例もあります。

    しかし、リハビリは、わたしのように自己流でただがむしゃらに頑張ればいいというだけのものではありません。ちゃんと、専門の理学療法士や作業療法士の方々のアドバイスに沿ってされる方が、より確実な成果が現われるものと思います。

    わたしの身体は、一時、百歳の人の体力や骨密度にも劣ると言われたのですが、それが、ここまで回復出来るのですから、何事も継続が大切なのだなァと、実感しました。 

    

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