ユニークなケーキ屋さん・・・・・188  

ちよみ

2009年10月03日 23:05

~ 今 日 の 雑 感 ~


☆★ユニークなケーキ屋さん★☆



    かつて、隣町に、とてもユニークなケーキ屋さんがあり、わたしは、よく友人とそのケーキ屋さんへ通いました。

    そこは、喫茶店も併設していて、店の奥のテーブルでは、ケーキやコーヒー、紅茶、軽食も頂けるようになっていました。

    ケーキ類は、とにかく絶品で、紅茶シフォンケーキやチョコレートシフォンケーキなどが、口の中でホロホロとほどける食感は、まるで、淡雪を食べているように思いました。

    わたしも、それまでに、色々なお店のケーキを食べては来ましたが、こういう味わいは初めての経験で、とても感動したのを覚えています。

    しかも、そのケーキ屋さんで軽食を頂く時は、スパゲティーやトーストだけを頼んでも、作ってはくれません。必ず、ケーキを頼まなくてはいけないのです。そうです。そこは「ケーキ屋」なのですから。

    そして、ユニークなのは、その経営方針だけではありません。使われているケーキのお皿やカップフォーク、スプーンに至るまで、すべてが統一されていないのです。

    ある客には、「こんな大きなお皿にケーキを載せるの?」と、思うような大皿を使っているかと思うと、可愛らしい花柄のお皿に載って出てくる場合もあり、また、カフェオレ・ボールのような器に、コーヒーがナミナミそそがれて運ばれて来る客もいれば、ごく普通のカップで出される客もいて、「今日は、どんな器で出て来るのかな?」などと、想像するのも楽しいものでした。

    しかし、そのお店のオーナーのもっともユニークな点は、「子供の入店お断わり」というところでした。

    「ケーキは、大人が優雅に楽しむ贅沢なのだから、子供に、その時間を乱されてはならない」という、オーナー独特の哲学によるものでした。

    しかし、ある日、わたしは、そのお店の前を自動車で通った時、どうしても、ケーキが買いたくなり、自動車を停めました。ところが、その時、助手席のチャイルドシートには、その頃まだ三、四歳だった甥っ子の一人が乗っていたのです。

    わたしは、甥っ子に、「ケーキを買ってくるから、ちょっと、待っていなさい」と、言ったのですが、甥っ子は、「一人で待つのは嫌だ」といいます。そこで、わたしは、彼に因果を含めるべく、

    「ここのケーキ屋さんは、ちっちゃい子お断わりだから、一緒に来ても、絶対に声を出してはダメだよ」と、いうと、甥っ子は、大きく頷き、「絶対に、シ~だね」というので、「よし!」と、一緒に自動車を降り、そのお店へ入りました。

    でも、子供との約束など、何の意味も持たないことを、わたしはこの時、しっかりと思い知らされました。

    甥っ子は、そこへ入店するや否や、

    「こんにちは~!ケーキくだちゃい!」

    止める間もない、いきなりの、大声でした。

    わたしのかん口令は、何の効力も発揮せず、「これは、まずいことになった」と、内心ビビっているところへ、応対に出て来たのは、その日に限って、奥さんだったのです。

    「すみません。子供が大きな声を出して・・・・」

    恐る恐る詫びると、奥さんは、ニコニコ微笑んで、「いいんですよ。今、主人いませんから」と、言います。わたしは、ほっとして、ケーキを買い、お店を出ました。

    あれから、もう既に十年以上もたっていますが、あのケーキ屋さんは、まだ御商売をされているのでしょうか?

    頑固者のパティシエのオーナーと、優しい奥さんが作るケーキのほの甘さは、未だに わたしの味の記憶から消えてはいません。
<今日のおまけ>

    近所の農協-----もとい、JAから、「市田ひろみデザイン・スプーンセット」を頂きました。

    陶器製ですが、とても可愛い感じです。

    こういうのを使って飲むのは、やっぱりポタージュ・スープ系でしょうか?

    「秋の夜長に、あったか~いカップ・スープでも飲んでおくれやす」

    市田さんの、そんな声が聞こえてきそうですね。


    
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