叱っていい人いけない人・・・・・514
~ 今 日 の 雑 感 ~
叱っていい人いけない人
昔、大相撲の力士の横綱・輪島と大関・魁傑の二人を並べて、こんなことを言った評論家がいた。
「『輪島』は、どれほど厳しく叱っても、歯を食いしばって稽古を続ける力士だが、『魁傑』は叱ったらダメだ。落ち込んでしまって、まったくやる気を失ってしまう」
これを聞いて、わたしは力士にも厳しく当たれば当たるほど本領を発揮する者と、まったく戦意を喪失してしまう者とがいるのだと、面白く思った。
子供にも大人にもそうだが、叱るという行為は実に難しいものである。
全員を一律に叱ることはたやすいが、それでは、本当に叱ったことにはならない。
つまり、人間は、育った環境や親の教育、性格などで、相手の言葉の受け止め方も千差万別だからである。やはり、一人一人の個性や生い立ちをすべて把握したうえで、叱らなくてはほとんど意味をなさないものなのではなかろうか。
男子と女子でもこの反応は異なるもので、また、時代によってもまったく違うということである。
男子は、比較的根性教育に従いやすい面を持っているが、女子は、こういうものにはまったく懐疑的な人間が多い。
昔は、『東洋の魔女』などといって、鬼監督のもとで根性から鍛えるような猛特訓を行なっても、それについて来た女子バレーボーラーたちがいたが、今の女子バレーでこんなことをしたら、とんでもないことになると、ある日本代表監督は話していた。
この監督は、ある時、代表チームの要となる一人の女子選手が、オリンピックを目の前にした練習時間に遅れたことを責めて、
「やる気がないなら、もうお前はこのチームにいらない。さっさと荷物をまとめて家へ帰れ!」
と、叱ったのだという。監督は、もちろん、この女子選手が、「申し訳ありませんでした。これからは遅刻などしませんから、チームにおいて下さい!オリンピックに出させて下さい!」と、泣いて懇願するものとばかり思っていたのだが、事態はとんでもない方向へ動くことになってしまったそうで、部屋へ戻った女子選手の様子をのぞきに行ったところ、彼女は、詫びるどころかむしろサバサバとした面持ちで、さっさと荷物をまとめていたというのである。
驚いた監督が、「お前、何をしているんだ!?」と、言うと、女子選手は、「だって、やる気がないなら家へ帰れと言われたので、帰ります。お世話様でした」と、言って、宿舎を出て行ってしまったというのである。
監督は、慌ててその女子選手を引き戻すために、今度は自分の方が頭を下げなくてはならないことになり、残って欲しいと頼み込む破目になってしまったそうである。
今の女子選手は、とにかく欲がない。おそらく、男子選手にも同じような傾向があるのであろう。
痛い思いや辛い思いをするくらいなら、選手をやめた方がましだと、ごく軽く考えている者たちがとにかく多いらしい。楽しいうちは頑張るが、飽きたら終わり。勝てるうちは競技を続けても、負けたら即引退。
そういう考え方の人間には、どのような叱り方をすればいいのか、実に悩ましい問題が日本のスポーツ界の根底には潜んでいるようにも思えるのである。
<今日のおまけ>
最近は、年のせいか身体を動かしたつけが翌日ではなく、翌々日あたりから出てくるようになってしまった。
ただでさえ、まともな運動など出来ないものだから、ウォーキングの距離をいつもよりも多めにしただけで、身体中がバキバキになってしまうのだ。
鴨居にぶら下がるようにして背中を伸ばす時の音など、恐ろしくさえある。毎日何回かこれをやらないと、頭の重さで肋骨がつぶされるような感じに縮んでしまうのだ。
まるで、アコーディオンみたいなものだと、可笑しくなる。
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