黒猫の話・・・・・101

ちよみ

2009年07月20日 23:36

~ 今 日 の 雑 感 ~


黒 猫 の 話


    わたしの家には、昔、まだわたしが生まれる前から、「クマ」という名の真っ黒な雌猫がいました。

    身体は、あまり大きくはなかったものの、毛並みの綺麗な気性の穏やかな猫でした。

    クマは、わたしのことを自分の子供とでも思っていたのか、わたしが何をしても怒ったり威嚇したりすることがなく、わたしが乱暴な扱い方をしても、常にされるがままでした。

    その態度は、わたしの友達にも同様で、古い写真を見ると、一人の友達がクマの尻尾を手に持って、背中にぶら下げている様子が写っています。

    また、クマは、わたしが保育園から一人で帰って来る時、どちらの道から歩いて来るのかが判るように、必ず歩いて来る方の道の途中まで迎えに来ているのです。

    そんなクマも、わたしが小学校に入る頃には、お婆さんになり、いつの間にか姿が見えなくなってしまいました。そして、しばらくして、家の物置の階段裏で死んでいるのが見つかりました。

    猫は、自分の死期を悟ると、家人の前から突然姿を消し、人知れずひっそりと死ぬのだそうです。それが、他の動物に死体を荒らされたくないという、猫の最後のプライドなのかもしれません。

    クマの死体は、祖母が経営していたアパートの柿の木の下に埋められました。

    そして、それからです。我が家に不思議な現象が起きるようになったのは------。

    まだ、幼かった弟が、家の中でクマを見たと言ったり、障子の破れが、猫の形になっていたり、新しく飼った子猫が相次いで死んだり、様々なことがありました。

    そんな訳で、そのあと、我が家では、猫は飼わなくなりました。

    今でも家族の間では、何かの話のついでに、クマの話題が出ます。

    手拭で頬かぶりをさせても、それを取ろうとはしないで、まるで自分も楽しんでいたようだったとか、何匹も子供を産んだのに、みんな死んでしまって可哀そうだったとか、まるで、家族の一人の思い出話をするかのように、クマの話題は尽きません。

    わたしには、今も家の何処かに、クマがいるのではないかと思える時があるのです。
 
    
<今日のおまけ>

    理容室で、髪をカットしました。
  
    蒸し暑さに負けました。

    その時、隣の椅子に腰かけていた、おばさんの話し声が聞こえて来ました。

    「顔そりもお願いね。でも、わたし、皮膚が弱いの。ちょっと、触られただけでも赤くなってしまうのよ。それで、皮膚科にかかって、薬も飲んでいるの。だから、上手に剃ってね」

    「・・・・・・・・」

    理容師さん、絶句。

    怖いお客さんもいるものですね~。(汗)
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