北風小僧の寒太郎・・・・・253
< 不 思 議 な 話 >
♫北風小僧の寒太郎☆
北風小僧(きたかぜこぞう)の寒太郎(かんたろう)
今年も町までやってきた
ヒューン ヒューン
ヒュルルンルンルンルン
冬でござんす
ヒュルルルルルルン
北風小僧の寒太郎
口笛(くちぶえ)吹き吹き一人旅(ひとりたび)
ヒューン ヒューン
ヒュルルンルンルンルン
寒(さむ)うござんす
ヒュルルルルルルン
北風小僧の寒太郎
電信柱(でんしんばしら)も泣いている
ヒューン ヒューン
ヒュルルンルンルンルン
雪(ゆき)でござんす
ヒュルルルルルルン
わたしは、まだ、身体が自由に動く頃、真冬のさなか、雪混じりの北風が吹きなぐる日でも、きっちりと防寒対策をして、何キロもウォーキングをしていた。
そんな訳で、防寒用の帽子とマフラーは、いくつも持っていて、その日の気分に合わせて取り替えては、身につけて歩いていたのである。
ところが、風が強いと、マフラーは、何度首に巻きなおしても外れてしまったりして、実に煩わしいものであるが、それでも、寒さを防ぐためには巻かないわけにはいかず、しまいには、首の周りにぐるぐる巻きに縛り付けてしまったりもした。
しかし、そうやってしまうと、せっかくのお気に入りのマフラーに皺ができてしまうため、できれば、あまりきっちりと巻きつけたくはないので、風のない穏やかな日など、中でも一番好きなマフラーをおしゃれに巻いて出かけたりもしたものである。
そして、そんな日に限って、本当に不思議なことが起きるもので、わたしは、何回もこういう奇妙な現象を体験しているのである。それというのは、風もない日にもかかわらず、首に巻いて背中の方へ垂らしているマフラーが、フワリと、前へ戻ってきてしまい、首から外れてしまうのである。
誰かの悪戯か?-----と、思い、背後を見るが、誰もいない。気を取り直してマフラーを巻き直し、歩き始めると、しばらくして、また、後ろに垂れたマフラーがフワッと前へ戻ってきてしまうのである。
最初の頃は、これが気味が悪くて仕方がなかったが、それでも、何度か経験しているうちにだんだん慣れてきた。そして、これは、きっと「北風小僧の寒太郎」の仕業だと思うようになったのである。
寒太郎が、意味もなく寒い中を一生懸命に歩いているわたしを見て、「変な奴だ」と、からかいにきているに違いない。
そう思うと、なんだか、冬のウォーキングにも一つ楽しみが増えたように思えた。そして、またいつ寒太郎がやって来るかと、ちょっぴりワクワクしながら歩くのである。
そして、いつも、そばに彼がいるような気持ちがして、なんとも愉快である。そんな時、そっと、小さくこの歌を口ずさんだりもする。
あなたが、もしも、木枯らしの吹く街で、誰かがそばにいるような錯覚を覚えたら、それは、北風小僧の寒太郎の悪戯かもしれませんよ。
<今日のおまけ>
軽井沢は、昭和の初めまるで上海の租界のように、雑多な国籍の人々であふれていたそうである。
東京や名古屋などの都会から避暑に訪れる外国人の国籍は、20カ国を超えていて、ナチス・ドイツの駐日大使とイタリア駐日大使がクラス別荘もあり、「ハイル・ヒトラー」の声が聞こえてきたり、旧ソ連のスパイであるリヒャルト・ゾルゲが、ドイツ駐日大使宅に出入りしていたこともあったらしい。
長野県の中にあって、軽井沢は、やはりその歴史から、かなり特殊な地域であったようである。
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