クリスマス・プレゼント・・・・・297

ちよみ

2009年12月23日 23:31

< 不 思 議 な 話 >



クリスマス・プレゼント


    
    これは、高校二年生のある女子生徒が、昨年のクリスマス・シーズンに体験したクリスマス・プレゼントにまつわる不思議なお話です。



    長野県内の女子高に通う風間さやかは、クラスの友達数人と帰宅途中の道すがら、クリスマス・パーティーをやろうという話で盛り上がっていた。

    「----で、誰の家でやる?さやかの家はどう?」

    「うち?別にいいけど・・・・、うち、けっこう狭いよ」

    「いいよ、別に狭くたって。プレゼント交換して、ケーキ食べるだけだからさ」

    「プレゼント交換やるの?」

    「当然でしょ。クリスマスだもん」

    と、いうことで話はとんとん拍子にまとまり、ちょうど十日後の土曜日の午後に、さやかの家で友人ばかり七人が集まってのクリスマス・パーティーを行なうことに決定したのだった。


    クリスマス・パーティー当日の午前中、さやかの家には、既に、近所のケーキ屋さんから、友人たちと割り勘で出し合ったパーティー会費で買ったクリスマス・ケーキも届き、リビングにはツリーの飾り付けも終えて、さやかは、おめかしの真っ最中であった。

    集まるのは、いつもの顔見知りのクラスメートだけでも、こういう時はやはり、それなりのおしゃれをしたいと思うのは乙女心というもので、わざわざこの日のために用意したフリルの可愛いブルーのワンピースを着たさやかは、鏡の前で自分の姿を再度確認する。

    そして、気付いた。何か、物足りない・・・・・。

    「そうだ、ブローチでも付けようかな?この胸元の真ん中に-----。どれがいいだろう・・・・?」

    その時、ふと思い出したのが、三年前に亡くなった祖母からもらっておいた真珠のブローチのことだった。

    そこで、あちらこちらとタンスの引き出しやらドレッサーの上に置かれている母親のアクセサリー入れの中などを手当たり次第に捜しては見たものの、どうしても、そのブローチが見付からない。さやかは、焦り、母親のいる台所へ行くと、

    「お母さん、前にお祖母ちゃんが、わたしにくれた真珠のブローチ、何処にあるか知らない?」

    「真珠のブローチ? どんなのかしら?」

    「ほら、丸くて、大きな真珠の周りを小さな真珠が囲むように並んでいるブローチよ」

    すると、母親は、ああ、それなら-----と、思い出したように言うと、

    「そのブローチなら、お祖母ちゃんが亡くなった時、あんたがお棺の中に一緒に入れたじゃないの。お祖母ちゃんの大好きなブローチだったからって-----」

    「え~、そうだった!?お棺に入れちゃったんだっけ?」

    さやかには、どうしても、その時のことが思い出せなかったが、そうだったのかと自分自身を納得させて、諦めることにした。

    やがて、さやかの家へ友人たちが集まると、CDプレーヤーでクリスマスソングを聴きながら、クリスマス・パーティーは、盛況のうちに進み、プレゼント交換が始まった。

    時刻は午後六時を回り、冬の短い日はとっくに暮れて、室内は既に暗く、クリスマス・キャンドルの炎だけを頼りの闇の中で、床に敷かれた絨毯の上へ円座に座ったさやかたちは、ジングルベルを歌いながら、各々が持ち寄ったクリスマス・プレゼントを次々に隣の友人へと回し始めた。

    そして、歌が終ったところで、室内の電気を付け、自分の手に持っているプレゼントを確認する。

    すると、一人の友人が、突然、頓狂な声をあげた。

    「あれ!?あたし、プレゼント二つ持っている」

    「え~?どうして?持っていない人いる?」

    「ううん、みんな持っているけど・・・・。どうしたの?一つ、余っちゃった?」

    皆は、不思議そうに思いながらも、自分が持っているプレゼントの包みを開けたのだった。さやかも、同じように自分が隣の友人から渡されたプレゼントの包装紙をおもむろに開ける。

    途端、彼女は、息を飲み、自分の目を疑った。

    なんと、彼女が開けた包みの中から出て来たのは、お棺に入れたと思われていた祖母の真珠のブローチだったのである。

    さやかは、驚くとともに、考えた。もしかしたら、今のプレゼント交換の円座の中に、祖母がいたのではないかと-----。

    彼女がそのブローチを胸元につけると、友人たちは、さらにびっくりして、

    「そんなブローチ、誰もプレゼントに持ってきていないけど・・・・」

    しかし、さやかは、ニッコリと笑顔を見せ、こう言った。

    「いいのよ。とっても、素敵なクリスマス・プレゼントだわ」

    その声を聞きながら、台所では皆に出すデザートの用意をしながら、さやかの母が微笑んでいた。
<今日のおまけ>

    スーパーで買い物をしてレジに並ぼうとすると、とんでもない長蛇の列。どのレジの通りも、陳列通路まで人があふれている。

    しかし、その列に並んでいて奇妙なことに気付いた。それは、並んでいる客の持っているスーパー備え付けのレジ籠が、どれも一つだということである。いつもの年末ならば、籠を二つ三つとカートへ載せ、家族で買い物をしている姿が多かった。中には、商品を段ボールで運び出す客も姿もあるなど、一人で一万円、二万円の買い物はざらだったと思う。

    それが、今年は、買い物かご一つにほんのわずかな商品を入れて、皆、レジに並んでいるのである。

    平均した買い物の金額は、せいぜい3000円ほど。主婦たちの財布のひもがどれほどきつく締められているかがよく判るというものだ。

    人出はあるが、売上金額は伸びない。ボーナスも軒並みカットでは、仕方がないのかもしれないが、例年の師走とは全く違う様相に、何だか不安がより大きくなるような気がした。



    ところで、ひと足早く、クリスマス・ケーキを頂いた。わたしの大好きなチョコレートケーキだ。

    しかし、直径12センチ。小さい!(~_~;)

    ところが、これがずっしりと重く、まるで爆弾のような重厚さ。食べでも充分で、正直、負けた。

    チョコレートケーキ、恐るべし!!(>_<)
関連記事