ある仲居さんの徒然話

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    ある旅館で仲居さんをしている女性に訊いてみた。

    「近頃のそちらの景気はどうですか?街に観光客らしき人たちの姿はありますか」

    すると、その女性は、露骨に顔をしかめ、

    「ぜんぜん、ダメ。旅館街は綺麗だけれど、お客さんの姿なんてパラパラしかないよ」

    と、首を振った。

    そして、

    「旅館に泊っても、せいぜい一晩泊まり。食事はいらないなんてお客さんも多いしね。あたしらだって、毎日決まった出勤じゃないし、電話がかかってくれば行くって感じ・・・。客室なんかほとんどガラガラだから、大丈夫なのかなって、心配になっちゃうくらいだよ」

    と、肩をすくめた。

    また、宿泊客からは、こんな質問も良く出るという。

    「どうして、こんなに人が少ないの?お店もほとんどないじゃない」

    そんな時は、冗談まじりにこう答えているそうだ。

    「お客さまたちが、もっとお金を落として下されば、こんな閑古鳥が鳴くような街にはならないんですけれどね」

    常連客もだんだん高齢化してくれば、やがて旅行になど出て来なくなることは目に見えている。

    「また、イベントを計画している温泉場もあるようだけれど、子供ばかり来てもお金を落としてくれなければ意味ないしね」

    女性は、もはやどんな誘客イベントが始まっても、心底期待などしていないと苦笑する。

    ホテルや旅館は大概大きな借金を抱えているのだから、宿泊客のサイクルが途絶えればあっという間に廃業に追い込まれてしまうことだろう。
    
    「生き残れるとしたら、本当に家族だけで経営しているような小さな規模のビジネス旅館ぐらいじゃないの」

    彼女は、そうため息をついて去って行った。

    本当に、これからどうなってしまうのか・・・。考えるだけでも気がめいる。

ある仲居さんの徒然話


<今日のおまけ>

    ニュースで長野新幹線が開通してからというもの、佐久平駅周辺や東京まで一時間ちょっとの利便性が受けて、駅周辺には高層マンションが建ち、商業施設が林立するなど、ものすごい発展を見せているが、そのあおりを受けて、それまで観光地としてにぎわっていた小諸の商店街などは、見る影もなく客足が遠のいたと報じていた。

    岩村田商店街は、それでも何とか頑張ってはいるようだが、新幹線が落とした影響は小さくない。

    本当に景気が良い時ならば、たとえ新幹線の駅が開業したとしても、それはそれで他の商業地の客足までが奪われるようなことはないはずなのだ。

    つまり、新幹線景気は、どんぶりの中をかき回しているだけに過ぎないのであり、本物の景気回復ではない。

    この長野新幹線が北陸新幹線となり飯山駅にも止まることになれば、やはり、同じような現象が近隣地域に起きるのだろうか?

    これが飯山以外の他の地域の不景気に、ますます拍車をかけることにもなり兼ねない。

    長野県内の自治体は、ほとんどが四苦八苦の赤字経営である。

    新幹線駅周辺自治体の一人勝ちになれば、影響を受ける破産自治体が県内に出て来ることもあながちあり得ないことではない。

    県内経済は持ちつ持たれつなのだから、そのつけは、結局は一人勝ちした自治体が払うことになるのだろうな・・・。

    

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