言葉は使いよう・・・・・972

~ 今 日 の 雑 感 ~


言葉は使いよう




    本の買取りを専門としている企業が、始めに考えた宣伝文句に「本、買います」というのがあったそうだ。

    しかし、この言葉を読んで、本を売りに来た客はあまりいなかったそうである。

    そこで、今度は、「本、お売りください」と替えたところ、お客が来るようになったというのである。

    「買う」というのは、企業側の言い分である。

    しかし、「売る」という行為は、客側の判断にゆだねられたものである。言葉は使いよう・・・・・972

    ここに、この会社の業績向上の鍵があったのだそうだ。

    人間は、決めるのは自分で、相手ではないというプライドを誰しも持っている。ここをうまく利用した訳である。

    とかく、病院や自治体でも、住民に検診の大切さを説いている。

    その係の人たちの言葉を聞くと、たいていが、こういう言い方である。

    「ご自分の健康のために、検診を受けましょう」

    でも、この言い方では、おそらく率先して検診を受けようと思う人は増えないであろう。

    特に、高齢になればなるほど、体力的にもきつくなるし、面倒くささの方が先に立って、関心は低くなるはずである。

    そして、この言葉である。

    「ご自分のために・・・・」

    人間は、自分のために何かをしましょうと言われて、動く人はあまりいないのである。自尊心を強く持つ人に限って、その傾向は顕著になる。

    そして、「・・・・しましょう」などと、他人から促されて何かを行なうなど、プライドが許さないのだ。

    しかも、検診という行為は、たとえ医療者が相手とはいえ、赤の他人の前で恥ずかしい格好をしなければならないという、これ以上ないリスクを伴うことである。

    簡単に、承服できる問題ではない。

    では、どのように説得すればいいのか?

    上記の例を参考に考えてみよう。

    つまり、検診対象者に自らの意思で検診を受けようと思わせればいいのである。

    そこで、こういう言い方に替えてみる。

    「お願いですから、わたしのために検診を受けて頂けませんでしょうか?ノルマが達成できないと、上司に叱られてしまうんです」

    人間は、自分のためにはやりたくないことも、他人の役に立つことならば一肌脱ごうという気持ちになるものなのだ。

    しかも、この言葉を、出来るだけ権威のある人に言わせることで、相手の受けとめ方は更に重くなる。

    たとえば、医師の口から、「ぼくのために検診を受けて頂けませんか。お願いします」などと言われれば、渋々でも重い腰をあげる高齢者も増えるのではないかと思われる。

    人を動かす時に一番大事なことは、その行為が自分のためというよりも、別の他人のためになるという「役に立つことが出来る」という気持ちをくすぐるところにあるのだ。

    「本、お売りください」も、「本を売って頂かないと、会社が立ち行かないんです。お願いします」の意味を汲んで、「じゃァ、おれが会社を助けてやろう」の感覚で客が詰めかけるようになったわけである。

    正に、言葉は使いよう----なのである。

    

<今日のおまけ>

    今回の巨大地震は、複数の場所を震源とする大規模地震が多発的に起きたための大惨事であったことが判りました。

    正に、日本列島の狭さを思い知らされる状況です。

    東京という大都市のもろさも露呈する結果となり、避難訓練もさることながら、いざという際に、被災者がまるごと移住するための第二都市計画を、考える時期に来ているのかもしれません。

    それにしても、福島東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)1号機で、核燃料棒が高温で溶ける「炉心溶融」が起きている可能性が高いと発表された-----とか。

    映画「チャイナ・シンドローム」が現実の物とならないことを祈るばかりです。    

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この記事へのコメント
こんばんは。

今回の地震には、何と言って良いのか言葉もみつからないです。

被災された地域の方々にはお見舞い申し上げます。
自然の恐ろしさをまざまざと見せ付けられた想いです。
津波の恐ろしさを、本当に感じました。
なすすべが無いというのを今回、感じました。

さて、言葉は使いよう、ということですが、
なるほど、と思って読みました。
僕のところへも、検診の通知が来ますが
受けたことがありません。

しかし、もし記事にあるような、私のために受けていただけないでしょうか、などと言われたら、受けてしまうかもしれませんね。

きっと、人間は皆、あまのじゃくなのかもしれませんね(笑)
Posted by こみさん at 2011年03月12日 22:54
こみさまへ>

 本当に、その通り、言葉が見つかりません。
 津波というものは、海がそのまま陸まで移動するということだったんですね。海のない信州に住んでいると、耳で聞いただけでは、その恐ろしさは良く判りませんでしたが、こうして映像で観ると、その凄まじさが実感できます。
 報道番組を観ていると、町一つが壊滅するのに数分もかからなかったようで、役場、消防、警察など、自治体の中心部が機能しなくなるという事態は、国も想定外だったのでしょう。
 亡くなられた方はもちろんのこと、一瞬にして我が家を失うことになってしまった方たちの無念は、如何ばかりかとお察しするばかりです。

 今、また、地震がありました。これは、栄村を震源とする余震だと思います。

 こみさんも、検診は受けない方なんですね。受けない人は多いと思います。何か病気が見付かっても嫌だし、かといって、毎日大したこともなく過ごせれば、それで良いと思うものですね。
 医師の間でも、検診に対して見解は分かれるようで、あまり神経質にならなくてもいいという人もいるようですね。
 
 確かに、人間はあまのじゃくなところがありますね。頼まれればやるが、自発的に動くことは苦手な人が多いようです。
 実は、わたしも、検査を拒んだことがあったのですが、担当の先生に「ぼくが興味があるんです」と、言われて、検査を受けたことがありました。(笑)
 正に、言葉は使いようですね。「先生のデータのためなら・・・」と、思いましたから。
Posted by ちよみちよみ at 2011年03月13日 11:26
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