ちょっと、一服・・・・・⑦

あ る 外 科 医 の 話


 この前も書きましたが、わたし、約一年ほど前に身体の不調で入院しました。あまり、メジャーな病気ではないのでご存じの方はごく少数だと思いますが、「原発性副甲状腺機能亢進症」と、いう病気です。原発と言いましても、別に原子力発電とは何の関係もありません。そこに患部が特化しているという意味だそうです。患者の数はといいますと、これは、ある内科医の先生のお話なんですが、
 「たとえば、人口約六万人の市があったとして、その市民のうち女性が半分として、そのうちの約三百人ぐらいが発症する可能性のある病気なんだよ」
 とのこと。つまり、女性の発症率が高いようなんですが、男性ももちろん例外ではなく・・・・。つまりは、誰にでもリスクはあるらしいのです。
 ところで、「副甲状腺」て、どこにあるの?ということなんですが、皆さん、「甲状腺」は、ご存知ですよね。そうです。首の下の方で、咽喉側にある、ちょうど蝶々が羽を広げたような格好をしている内分泌腺です。その「甲状腺」の蝶々の羽の四隅に、一つずつ、米粒大の小さなものが付いているのですが、この四つが「副甲状腺」というものなのです。「機能亢進症」とは、その「副甲状腺」の一つが腫れて、大きくなり、ホルモンが過剰に分泌され、身体に支障をきたすというものなのです。
 そうなると、これを治療するには、現在の医学では、手術で患部を取ってしまうしか手がない訳で、「甲状腺」の治療と違って、薬で抑えるということは、一切選択肢にないのが現状のようです。
 -------で、それでも手術を回避したいとういう悪あがきの末、体中の激痛に耐えられず、ついに、覚悟を決めました。(この激痛の理由は、また折を見てお話したいと思います)

 
 前置きが長くなってしまいましたが、本題はその入院中の出来事です。ちょっと、一服・・・・・⑦
 わたしの執刀医は、三十代半ばの若い男性外科医の先生でした。中肉中背で、いつも医療用マスクをかけたままで、ほとんど素顔を見せたことがありません。看護師さんや薬剤師さんには時々顔を見せるらしいのですが、患者には皆無と言ってもいいほどの徹底ぶりでした。他の先生方は、いつも素顔のままで患者さんに接していましたので、その徹底ぶりが際立っていたのです。必然的に、患者さんたちの間では、その先生の素顔がどのようなものか話題になりました。(なにせ、患者は皆暇をもてあまし気味ですから、そんな他愛もないことが、気晴らしになるもので・・・・)
 「ねえ、知っています?〇〇先生って、まだ独身らしいですよ」
 「そうなんですか。でも、一度も、あの先生の素顔を見たことありませんねェ」
 「わたしもですよ。どうしていつもマスクをしているんでしょうね?」
 「退院までには、一度拝見してみたいものですね」
 そんな会話を交わしていた次の日です。なんと、その先生がマスクを外して回診に見えたのです。これには、皆びっくりしました。
 「どうして、わたしたちの話が判ったんでしょうね?」
 「看護師さんが伝えてくれたんじゃないですか?」
 「でも、あの時、看護師さんは、この病室にはいませんでしたよ」
 「もしや、ナースコールを押しっぱなしだったとか・・・?」
 ナースコールの機械は、ボタンを押すと看護師さんの方へ、患者の声が伝わるように出来ています。が、その時は誰もナースコールを押していた人などいません。
 「不思議ですねェ・・・・」
 先生がマスクを外してきたのは、本当に単なる偶然だったのでしょうか?でも、次の回診からは、またマスクをして来られました。つまり、わたしが、その先生の素顔を見ることが出来たのは、後にも先にも、その一度限りだった訳です。
 そして、また、不思議なことが・・・・。
 手術前、病気のせいで、わたしの歯はとても弱くなり、固いものは全く食べられない状態でした。でも、麻酔科医の先生に、、
 「大丈夫、手術が終われば、また何でもガリガリ食べられるようになりますよ」
 と、おっしゃって頂き、正にその通りになりました。
 そこで、やはり同じ病室の患者さんに、
 「リンゴも食べられるようになったんですよ」
 と、何気なく話したところ、翌日、わたしのその担当医の先生が、
 「リンゴ、食べられるようになったんですってね。よかったですね」
 と、ニコニコ微笑んで(マスクをかけていても、これは判ります)話されるのです。
 「・・・・どうして、判ったのかな?」
 思わず首を傾げてしまいました。
 「ぼく、何処へも行きませんよ・・・・」
 先生は、おっしゃっていましたが、結局、それから半年後に、別の病院への転勤が決まり、異動して行かれました。
 ところが、不思議なことは、そのあとも続くのです。
 その先生が病院を去られてから、しばらくして、わたしは、何度も同じ夢を見るようになりました。夢のシチュエーションはそのつど違うのですが、夢の中で必ず電話がかかってくるのです。
 「〇〇先生から電話------」
 と、言われて、受話器を取るのですが、相手はいつも無言のままです。そのうちに、また、外来通院の日が来て、病院へ行ったところ、あるスタッフの方が、わたしの所へ来て、
 「この前、〇〇先生に会いましたよ。何だか、あなたのことを話していました。急に転勤になってしまったのは、自分にも予想外だったって言っていましたよ」
 と、教えて下さいました。その方には、夢の話はしませんでしたが、もしや、そのことを伝えたかったのでしょうか・・・・?
 穿ち過ぎかもしれませんが、そんなことを、ふっと、考えました。それから、電話の夢はまったく見ていません。

 
 先生は、今も何処かの病院で、あの不思議な能力(少なくともわたしにはそう思えます)を、発揮されているのでしょうか?
 ちょっと、ファンタスティックな外科医との出会いは、とかく暗くなりがちな入院生活を、ちょっぴりミステリアスな愉快な気分で乗り越えさせてくれました。



   では、引き続き、「地域医療最前線~七人の外科医~」を、お読みください。


   「今日の一枚」-------『都の夢』 


 


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Posted by ちよみ at 10:41│Comments(0)不思議な話
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