探してくれませんか?・・・・・110

< 不 思 議 な 話 >


探してくれませんか?



    夏休みですからね~。やっぱり、これでしょう!!

    ----ってなことで、またひとつ書いてみました。では、ごゆるりと、お読み下さい。diary



    昭和六十年のある夏の蒸し暑い夜のこと、信州にある高原の山道の国道を、一台の大型トラックが走っていました。

    運転していたのは、地元の運送店経営の四十代の男性で、山のホテルまで宿泊客の荷物を届けた帰り道でした。

    真っ暗な狭い国道を、トラックのヘッドライトだけを頼りに麓へと下って行くのですが、ほとんど毎日のように行き来している道ですから、運転も手慣れたもので、鼻歌まじりにハンドルを握っていました。

    既に、夜も更けていたため、走っている自動車は、男性のトラック以外、一台もなく、男性は、早く家へ帰って冷たいビールで一杯やりたいと、そんなことばかりを考えていました。

    しばらくすると、国道が大きく右にカーブする林道沿いに差し掛かります。探してくれませんか?・・・・・110

    男性は、いつものように巧みなハンドル操作で、そのカーブを難なく過ぎたその直後、目の前のヘッドライトの中に、いきなり、一人の男の姿が浮かび上がりました。

    男は、道路の真ん中で大きく両手を広げて、男性のトラックを制止するような仕種を見せたのですが、時すでに遅く、急ブレーキをかけたものの、トラックは、その男の姿を車体の下へ巻き込んでしまったのでした。

    「しまった!!」

    男性は、仰天し、慌ててトラックを停めました。そして、車内から外へ降りると、今、そこにいた男の様子を確かめるべく、トラックの車体の下を覗き込みます。

    しかし、そこには誰の姿もありません。もしかしたら、跳ね飛ばしていまったのかもしれないと、トラックの車内から懐中電灯を持ち出して、辺りをくまなく探してみました。が、それらしき男の姿は、やはり何処にも見当たらないのです。

    「おれの見間違いだったのかな・・・・?」

    男性は、冷や汗を拭き、不思議に思いながらも、やや安堵の胸を撫でて、再びトラックへ戻ると、そのまま国道を走行し始めました。しかし、たった今のショックのせいか、やけに喉が渇いて来たので、何処かに自動販売機があったはずだと思い、山道を下る途中、古いバス停の小さな建物の辺りで、運よく清涼飲料水の自動販売機の灯りを発見しました。

    男性は、ガードレールのある路肩にトラックを止め、その自動販売機に近付くと、投貨口にお金を入れて、缶入りのコーラを出し、その場でそれを飲み始めました。

    そして、ようやく人心地ついた時、背後に何かの気配を感じて、思わず振り返りました。すると、自動販売機の灯りの中に、ぼんやりと一人の男が立っているではありませんか。

    男性は、奇妙なうすら寒さを覚えながら、その男に向かい、

    「おれは、もういいから、どうぞ使って下さい」

    と、場所を空けようとしたところ、その男が蒼白い顔で、男性にこう言ったのです。

    「------探してくれませんか?」

    「探すって、何か落し物でもしたのかい?」

    「ええ、そうなんです・・・・。一緒に、探してくれませんか?」

    男性は、少しばかり、薄気味悪さを感じながらも、もう一度、その男に訊きました。

    「だから、何を探せばいいんだい?」

    すると、男は、ほんの少しさびしそうな微笑を浮かべると、低い声で、こう言ったのです。

    「わたしの、身体を、探して下さい・・・・」

    「---------!?」

    男性は、それを聞いた直後、何気なく男の下半身へ目を移しました。

    と、そこにある筈の男の腰から下が、完全に闇の中に溶け込んで、まったく見当たらなかったのでした。

    「うわァッ!!」

    男性は、驚愕し、手に持っていたコーラの缶を放り出すと、急いでトラックの方へ駆け戻ろうとしましたが、男は、そんな男性の腕をつかみ、物凄い力で引っ張りながら、

    「お前が轢いたおれの身体を、探して欲しいんだよ!」

    「放せ!化け物!」

    男性は、叫ぶと、力任せにその男の手を振りほどき、一目散にトラックへ乗り込むと、めいっぱいアクセルを踏み、必死の思いでその場から逃げだしたのだそうです。

    後日、男性が聞いた話では、この下半身がなかった男は、かつて、この国道で自動車事故に遭い、亡くなった人の地縛霊ではないのかということでした。   

<今日のおまけ>

    裁判員制度が始まってから、強盗傷害や殺人などの重罪事件に関係する容疑者の起訴状の内容が、軽減方向に流れていると聞く。

    つまり、警察、検察側が、裁判員制度に適応する容疑者を少しでも減らそうと、考えているためではないかと、推測する専門家もいる。

    法律知識のない一般市民に、過度な重責を担わせないようにしようという狙いなのかもしれないが、それでは、たとえば、死刑に相当する重大犯罪を犯した容疑者が、軽犯罪者として裁かれるというケースも出て来るやもしれず、何とも、不可解な現象が起き始めているといえる。

    警察、検察が、自分たちの持つ権限を、一般人に侵されないようにするための手段なのであろうか?

    わたしたち素人には、摩訶不思議な話である。(?_?)

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この記事へのコメント
こんにちは

実話なんですか?体感温度2度ほど
下がりますね。地縛霊は成仏できないんですかね。夏ですねぇ。
霊も夏ほど出るのかしら・・
携帯の童話集を毎晩子供に読んでいますが8月は何故かおばけの話ばかり・・・
Posted by り・まんぼーり・まんぼー at 2009年07月29日 17:48
リ・まんぼーさまへ>

 さあ、真偽のほどはよく判りません。
 わたしが、友人たちと山小屋で泊まった時に、聞いた話ですから。
 この話は、夜、部屋の電気を消して、一番怖がらせたい人の背後に、仕掛け人を控えさせ、語り手が、「おれの身体を探してっほしいんだよ!」と、言った瞬間に、背後から身体に抱きつくと、物凄く効果的な恐怖を味わわせられるというものなのです。
 でも、その時、相手を失神させるほど怖がらせてしまっては、困りますけれどね。(笑)

 携帯の童話集というものがあるんですね。八月は、子供さん向けの話も、お化け物が多いんですね。やっぱり、日本の夏ですね~。

 
Posted by ちよみちよみ at 2009年07月29日 20:19
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