避暑地の舞踏会・・・・・136

~ 今 日 の 雑 感 ~


避暑地の舞踏会



    数年前、テレビで観たあるファンタジードラマに、わたしの大好きな物語がありました。icon06

    題名は忘れましたが、それは、夏の信州の避暑地を舞台にしたものでした。これを制作したスタッフは、おそらく、軽井沢辺りを想定していたのではないかと思います。

    それは、こんなストーリーでした。



避暑地の舞踏会・・・・・136ある夏の日、ひと組の若い男女のカップルが自動車で信州のとある避暑地を走っていました。

    女性は、ひどく不機嫌そうで、どうやら、男性が予約しておいてくれた筈の有名なホテルに、その予約が入っていなかったということのようです。

    「それで、今日は何処で泊まるわけ?まさか、自動車(くるま)の中なんていうんじゃないわよね」
   
    女性は、恋人の男性に、不満をぶつけます。男性は、何処か別のホテルを見付けるから、心配するなよと、女性をなだめながら、自動車を運転して行きますと、目の前に、一軒の高級そうなリゾートホテルが現われました。

    もっけの幸いと、二人は、そのホテルのフロントで、宿泊を頼みますが、フロント係の男性は、

    「今の時季、避暑のお客様で、生憎当ホテルも満館です。申し訳ございません」

    と、すまなそうに言います。しかし、どうしても、諦めきれない二人は、そのままロビーのソファーに、座り込んでしまいました。しばらくすると、そんな二人を見付けて、ホテルの支配人らしき中年男性が声をかけて来ました。

    「お客様、どうしても、当ホテルにお泊りになりたいと言われるのでしたら、この新館は満室ですが、旧館の方に、一室空きがございますから、そちらへご案内いたしましょう」
  
    願ってもない話に、二人は、安堵し、その旧館へと、支配人に案内してもらいました。

    確かに、旧館というだけあって、部屋もややカビ臭く、やたらにレトロで、テレビもありません。汗を流そうと、女性が入った部屋付の浴室も、蛇口からは水しか出ず、どうやら、お湯は、ホテルのボーイが運んでくるというシステムになっているようでした。

    「もう、何なの、この部屋?古いといったって、限度ってものがあるじゃない」

    「そうカリカリするなよ。一晩、屋根の下で眠れるだけ良しとしようよ」

    「なによ、こうなってしまったのは、誰のせいだと思っているのよ!」

    二人が、またも口喧嘩を始めた時です。館内の何処からか、弦楽器が奏でる美しいクラシック音楽の響きが聞こえてきました。

    不思議に思った二人が、部屋を出て、その音楽の方へと廊下を歩いて行くと、そこには、重厚そうな木製の扉があり、音楽は、どうやらその扉の向こうから流れて来ているようです。扉の中を覗いてみようとそのドアノブに手をかけて瞬間、ゆっくりと扉が左右に開き、そこに大きなダンスフロアーが現われたのです。

    そのダンスフロアーでは、大勢の紳士淑女が三つ揃えのスーツや煌びやかなドレスに身を包み、如何にも楽しそうに、ワルツ音楽に乗って、優雅なステップを踏んでいたのでした。

    「何なの、ここ------?まるで、社交界の世界ね・・・・・」

    女性は、思わず溜息をつき、男性は、目を丸くしたまま、言葉を失いました。すると、そんな彼らを見た一人の品の良い婦人がそばへ近付いて来ると、優しげな目で、

    「まあ、こんなお若い方が来て下さるとは、なんて、今夜は素敵なのかしら・・・・。さあ、あなた方も、フロアーにお入りになって。ご一緒に踊りましょうよ」

    「え・・・・?でも、あたしたち、ダンスなんて出来ないし・・・・。それに、こんな恰好じゃァ-------」

    女性が慌てて遠慮すると、その品のいい婦人は、いきなり、自分が肩にかけていたオーガンジー(薄絹)のショールを、彼女のショートパンツ姿の腰に巻いて、

    「ほら、これでいいわ。綺麗になってよ------]

    「・・・・素敵、ドレスみたい」

    女性は、うっとりした表情になり、恋人の男性のエスコートで、ダンスの輪の中に入りました。ひとしきりダンスが続いた後で、司会者と思しき男性が、おもむろに人々の前に歩み出ると、こんなことを言いだしたのです。

    「お集まりの紳士淑女の皆様、ここで、今年の『ひまわり娘』の発表に参りたいと存じます。『ひまわり娘』は、このひと夏を、ヒマワリの花のように、もっとも朗らかに、優雅に楽しく過ごしたと思われる女性に与えられる栄誉であります。------では、今年の『ひまわり娘』に選ばれたご婦人は、〇〇氏夫人の〇〇様であります!」

    瞬間、会場中の視線が、いっせいに一人の年配の女性に集まりました。それは、今しがた、女性の腰にショールを巻いてくれた、あの婦人でした。

    若い二人も嬉しくなって、会場の人々と一緒に、その年配の婦人へ、思いきり拍手を 送ったのでした。






    
    「ちょっと、お客様、起きて下さい。こんな所で、眠られては困りますよ。お客様------」
 
    「・・・・・・・・?」
 
    肩をゆすられた二人が、ふっと目を覚ますと、そこには、如何にも迷惑顔で覗き込んでいる、ホテルのフロント係の男性がいました。彼らは、どうやら、ホテルのロビーのソファーに座り込んだまま、疲れのためにいつしか眠りこんで、そのまま翌朝を迎えてしまったらしいのでした。

    「え・・・・・?今のは、夢・・・・・・?」

    男性が、寝ぼけ眼で呟くと、女性も、また、

    「ダンスフロアーは・・・・?」

    不思議そうに、首を傾げます。そして、二人は、その後そのホテルをあとにしましたが、何故か、気持ちは、とても清々しく、幸せそのものでした。 

    自動車に乗り込んだ二人は、お互いが同じ夢を見ていたことを奇妙に思いましたが、それが、ただの夢ではなかったことは、判っていました。何故なら、助手席の女性の腰には、あの婦人のショールが、巻かれたままだったのですから・・・・・。icon06    

<今日のおまけ>

    
    わたしのブログは、日々の出来事を綴るというよりも、過去の出来事や、時事ネタなどを書くことが多いので、とかく、記事が重複したり、まったく同じ物を書いてしまったりする時があります。

    最近は、記憶力も鈍ってきていますので、「これ、いつか書いたような気がするなァ・・・・」などということも、ままあります。

    タグを付けて、整理をすればいいのでしょうが、何せ面倒くさがり屋なので、そういうマメな仕事は苦手なのです。

    とにかく、その日に書きたいことを書く-----。それだけですから、もしも、「あれ?こんな文章、前にも読んだぞ」などと思うことがあっても、どうか大目に見て、読み過ごして下さいね。face02

    

    ところで、今日の「北信ローカル」に、ミス・志賀高原コンテストの出場者たちの写真とプロフィールが掲載されていました。

    でも、どう見ても、正真正銘の素人女性は、二、三名で、あとはフリーターとか大学生なんて書いてあるけれど、結局はモデル事務所所属のプロばかりなんでしょうね。

    地元のこともほとんど判らない女性がミスになっても、意味がないのでは?-----と、毎年のように思います。

    ミスになるためには、これからは、最近はやりの地元検定試験を突破することを条件にした方がいいのではないでしょうか?たとえば、長野県の地図を出題して、山ノ内町の場所を書き込みなさいとか、志賀高原のスキー場の名前と池の名前を五つ答えなさいとか、北信五岳を、右から順番に答えなさいとか、地獄谷野猿公苑の名物は、猿の他に何?とか-----。

    なにせ、県内出身でも、志賀高原が山ノ内町の中にあることすら知らない出場者もいるんですから、呆れてものが言えません。

    こんなこと、長野県在住なら、知っていて当然のことなんですけれどね。

    また、かつての候補者の中には、「信州って、何処ですか?」と、訊いたお利口さんもいたそうです。face03

    顔や体形など、十人並みで結構。これからは、知識とユーモアが物を言う時代だと思います。icon21

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この記事へのコメント
おはようございます。
確かに最近の「ミスコン」は?って思います。地元の子じゃないのって。
一応は優勝したら、そこの観光アピールなどする場合もあるわけですからもう少し、主催者側も考えたほうがいいですよね。
外見の美しさなんてもんははっきりいっていくらでも、手を加えればどーにかなるもんです。でも、知性はそうはいきませんから。
Posted by ティンク at 2009年08月22日 09:59
「ミスコン」そうそう 他県からの
応募はなくして地元の人ONLYにすればいいのになぁと思いますよ。
自然を愛する 知的な美人 しかも地元
これに限ります!!!
今おバカを売りに頑張っている芸能人もいますがどこまで本気なんだ?やらせか?
と思うところもあって・・・そろそろ飽きてきました。
アタックチャーンス!!!のクイズ番組じゃ絶対回答できないだろうなぁ
私もあの番組だと一問ぐらいしか
答えられないかも・・・。話がそれてすみません。。。
ファンタジードラマ・軽井沢といえば
あの有名なホテルしか浮かんできませんが。。。名前が出てこない・・・
不思議系好きですよ^^
Posted by り・まんぼーり・まんぼー at 2009年08月22日 10:59
ティンクさまへ>

 そうなんです。優勝すると、日本各地へ飛び、その地域や産物などについてアピールをするという、大変な役目がミスにはあるんですよね。しかも、そういう場所では、行政や企業、観光業の関係者など、様々な人たちとの交流もあるので、地元に関する知識がなければ、話にもならないのではないかと思うのです。
 でも、これまでのミスは、ほとんどが飾りものだったそうで、美しければ、東京や大阪から来た、いわゆるミスコン荒らしのタレントやモデルでもよかったそうなのです。
 しかし、そんなものは何の意味もありませんよね。ティンクさんの言われるように、外見の美しさなど、何とでもなります。要は、どれだけ、本気でその地域のために働く意思があるかということなのではないかと、考えます。
 わたしは、正直、年齢、未婚などの条件も撤廃してもいいとさえ思うのです。
 
Posted by ちよみちよみ at 2009年08月22日 11:51
り・まんぼーさまへ>

 他県からの応募はなくして、地元オンリーにするというのも、いいアイデアですね。
 ただ、そうなると、地元から本当に出場してもいいという女性が何人集まるかというところが、主催者側としては不安なのだといいます。
 他県のミスコンでは、何ヶ月待っても、三人ほどしか応募がなかったという例もあるそうですから。そんな訳で、このミス志賀高原コンテストも、最近は抵抗感が強い水着審査をやめて、浴衣審査にしたという話も聞きます。
 ティンクさんのレスにも書かせて頂きましたが、この際、年齢や既婚未婚問わずということにした方がよいのでは?とも思います。そうなれば、地元の女性も大勢応募してくれるのではないでしょうか?

 軽井沢って、本当にこういうファンタジー系が似合う土地柄ですよね。このドラマは、とても気に入って観ていました。
 有名なホテルは、「万平ホテル」ですか?ジョン・レノンの常宿でしたよね。「万平ホテル」は、やはりどこか敷居が高くて、ホテルのテラス喫茶で紅茶を飲むのがやっとでした。小心者です。(汗)
 
Posted by ちよみちよみ at 2009年08月22日 12:16
ちよみさん こんにちは~
このドラマは見て事がないけれど
腰に巻かれたショールと同じ夢と舞踏♫
なんかしゃれていて ちゃんとした
趣旨を感じるドラマってとてもいいね^^
私も 先日昔のアンコールドラマを
見たんだけど いつ見てもいいものは
いいなぁ~と思いました
印象に残るものや 時間をおいて
見てもいいというものは きちんとした
ドラマも仕立てがあるものですよね
最近そういうの少なくなったように
思います また主役のほかに その主役を
引きたたせる脇役の存在も大きいですね
(=^・^=)
Posted by 福寿荘 女将福寿荘 女将 at 2009年08月22日 15:50
福寿荘 女将さまへ>

 どんなジャンルでも、コンセプトのしっかりしたドラマというのは、何度観てもいいものですよね。出演している役者さんも、主役、脇役ともに、きっちりと物語を成り立たせていますから。
 おっしゃるように、最近は、ドラマの作り方も何処となく雑になって、印象に残る物が少なくなりました。
 でも、このドラマは、舞踏会のシーンを演じる年配の俳優さんたちが、とても良かったです。この二人の主人公は、おそらく、明治、大正の頃、夏の避暑地のホテル内で行われていた上流社会の舞踏会の一場面にタイムスリップしてしまったのでしょうね。
 いいえ、それとも、短い夏のひと時が忘れられずに集まってきた、幽霊たちの宴だったのでしょうか?
 いずれにしても、古き良き時代をほうふつとさせつつ、人生は一度きり。あくせくせずに、優雅に時を過ごすのもまた、おつなもの----。そんなメッセージが込められた、シャレた物語でした。♫
Posted by ちよみちよみ at 2009年08月22日 20:48
そうです!万平ホテル!そうそう
ジョンレノンの泊まったという有名なところ・・・私はロビーどまりでした。
お茶すら飲まなかったですよ^^;
夏の軽井沢は人気ナンバーワンですもんね。
Posted by り・まんぼーり・まんぼー at 2009年08月23日 16:35
り・まんぼーさまへ>

 「万平ホテル」は、憧れですよね~。
 本物の紳士淑女になったようで、ホテルの中へ入るだけでも、ちょっぴり鼻が高い感じがしました。
 り・まんぼーさんも、行かれたんですね。ロビーでうろうろするだけでも、何となくウキウキ、ドキドキしますよね。
 わたしが、テラスで飲んだミルクティーも、少し大ぶりの素敵なカップに入っていて、とてもおいしかったです。あ、その時の写真があったかな?
 こんな所めったに来られないだろうと思い、友人と撮影し合いましたから。(爆)
 力いっぱい、庶民ですよね~。(^◇^)
Posted by ちよみちよみ at 2009年08月23日 16:51
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