踏切の小さな手・・・・・364

< 不 思 議 な 話 >


踏切の小さな手


    ある私鉄沿線の警報機も遮断機もない、第四種踏切では、小雪のちらつく寒い冬の夜に、奇妙な出来事が起きるという。

    一人のサラリーマンが、家路を急いでその踏切を渡ろうとした時、いきなり、着ているオーバーコートの裾が、何かに引っ張られるような感覚がして、思わずそちらへ目を落とすと、暗闇の中に小さな子どもの手が伸びて来て、オーバーコートの裾を摑んでいるというのである。

    驚いてサラリーマンが目を凝らすと、その小さな手の先には、保育園の年長さんと思われる園児服姿の幼い男の子の愛らしい顔があり、じっと彼を見上げているのであった。

    その男の子は、悲しそうな表情でサラリーマンを見詰めながら、踏切の小さな手・・・・・364

    「おじちゃん、あぶないよ。気を付けてね」

    そう小声で言うと、ふっと、闇の中に消えてしまったのだそうである。

    また、ある夜には、近所の主婦がその踏切を渡ろうとした時、突然、カーディガンの袖を引っ張られるような気がして振り向くと、そこに、同じような園児服姿の男の子が立っていて、蒼白い顔で彼女を見ると、

    「おばちゃん、この踏切は気を付けてね。カンカンが鳴らないからね・・・・」

    と、言うので、主婦が、思わず、

    「坊や、何処の子?こんな所で何しているの?」

    と、訊ねた途端、その男の子の姿は、消えてしまったのだともいう。
 
    この第四種踏切に現われる小さな男の子の噂は、いつしか、街中に広まり、きっと、以前にこの踏切で電車にはねられて亡くなった保育園児の男の子ではないかと、住民たちは話し合うようになったそうである。

    その男の子が、踏切を渡る人たちを心配して、「警報機も遮断機もない踏切だから、気を付けて渡ってね。ぼくみたいにならないでね」と、教えているのではないかと、考えた住民の有志は、その後、その踏切にせめて警報機だけでもつけて欲しいと、鉄道会社に頼み込み、それからしばらくして、その第四種踏切には、警報機が設置されたということである。

    それからというもの、男の子の霊をその踏切で見かける人たちはいなくなったが、今でも、警報機の傍らには、花を手向けて手を合わせる住民の姿がたえないという。   

<今日のおまけ>

    わたしは、手術をする前、血液中のカリウム値がもの凄く低下していた。カリウムが少なくなると、心筋に影響が出て心不全などで突然死する可能性もあるそうで、そのせいか、身体中の筋肉が衰え、片足に500グラムの重りを付けただけで、その足をあげることが出来なかった。

    しかし、手術が終わり、カリウム値が一定になると、不思議なことに筋力はどんどん回復し、5センチの段差を上れなかった足で、平気で椅子の上へのぼり、立つことも出来るようになるのである。

    しばらくは、まるで、自分の身体にパワースーツを着ているかのように、奇妙な感覚であった。

    100歳だった身体が、次第に若返って行く-----。なんとも、不思議な体験である。face08


    ところで、横綱・朝青龍と彼に殴られた一般人サラリーマンの間で示談が成立したそうだ。高砂親方(元大関・朝潮)は、かなりの大金をサラリーマンに慰謝料として支払ったのかもしれない。

    しかし、これは、間違い無く傷害事件である。麻布署も、ここは、しっかりと刑事事件として対処して欲しいものである。icon23

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