共同浴場の声・・・・・382

< 不 思 議 な 話 >


共同浴場の声



    ある猛吹雪の夜、街には、ひとっ子一人姿が見えなかった。

    吹きすさぶ風は雪の渦を巻きあがらせ、家々の窓を激しく殴りつけていた。

    共同浴場の声・・・・・382そんな夜は、厳しい寒さも影響して、たとえ近所の人たちといえども、共同浴場まで足を運ぶ者はほとんどいない。しかし、足あと一つない新雪の上を慎重に歩みながら、身体を大判のショールで包んだ女性が一人、正に、意を決して、外湯まで出て来たのであった。

    女湯のドアを開けて中に入ると、他には誰ひとり入浴していない証拠に、照明がすべて消されている。彼女は、電源のスイッチを入れると、蛍光灯の明かりが点いた脱衣所へと上がった。

    浴室内の電気も点いて、女性は、冷え切った身体を湯船につからせて一心地ついた時、不透明のガラス壁で仕切られている男湯の方へ眼をやった。

    男湯も、この悪天候のためか誰も入浴しているものはいないので、浴室内の電気は消えて、真っ暗であった。

    女性は、戸外に吹きすさぶ風の音を聞きながら、温かな湯の中で思い切り手足を伸ばし、独りきりの貸切風呂をゆっくりと満喫していた。ところが、そのうちに、彼女の耳に奇妙な音が聞こえてきたのである。

    「ザバーッ、ザバーッ!」

    その音は、男湯の方から聞こえてくるもので、明らかに誰かがお湯を使う音である。洗面器で汲んだお湯を、身体に掛けていると思われる気配の音が、はっきりと聞こえてきたのだった。

    女性は、誰もいないはずの真っ暗な男湯から聞こえてくるお湯を流す音に、思わず聞き耳を立てた。

    (誰か入っているのかしら?だったら、どうして、電気を点けないの・・・・?)

    そう思いながら洗髪をしていると、今度は、もっと不気味な物音が聞こえてきたのであった。それは、男性の低い唸り声のような音であった。

    「お~っ!お~っ!」

    女性は、思わず恐怖心を覚え、髪を洗うのもほどほどに、上がり湯を身体にかけると、慌てて浴室から出ようとした。----と、その時である。

    「あれ?もう、行っちゃうのォ?」

    「-------!?」

    まるで、女性の行動を見ているかのような男のくぐもり声が聞こえ、彼女は、仰天して、濡れた身体を拭くことも忘れ、脱衣所へと戻ったのであった。そして、急いで服を着ると、共同浴場から逃げ出すように吹雪の中へと駆け出したのだった。

    あの真っ暗な男湯の浴室内に、いったい何者がいたのか?-----今もって、謎のままである。


<今日のおまけ>

    本当に、今年は暖冬なのだろうか?確かに、いつもの年に比べて雪の量は多くないようだが、寒さは、かなり厳しいものがある。この間など、ちょっと油断していたら、水道管を凍らせてしまった。

    結局、毎日の気温を平均すれば、例年とさほど変わらないのではないかと思う。

    とはいえ、昨日辺りから、かなり暖かくなってきたようだ。

    時に、ここのところまた、少し膝が痛む。まだカルシウムが不足しているのかな?これまでの担当医が、あまりマメに血液検査をしてくれなかったから、ちょっと不安。

    なんだか、お医者さまというのは、先の担当医に遠慮するところがあるのだろうか?そう言えば、よく、二人目の先生は、手術を担当した先生のことを話されていたけれど・・・・。

    三人目の先生は、あっという間にいなくなられてしまったので、よく判らない。face06

    

同じカテゴリー(不思議な話 Ⅲ)の記事
 真夜中の名医 (2011-12-18 21:09)
 赤いドレス (2011-12-17 21:29)
 隣のベッド (2011-08-15 16:52)
 夏の日の幻影 (2011-08-11 19:36)
 またまた、不思議な外科医の話・・・・・451 (2010-03-26 11:57)
 踏切の小さな手・・・・・364 (2010-01-31 11:33)

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。