時代劇のありよう
2015年12月17日
時代劇のありよう
今日の『ジョンイ』----ほぼ主役扱いのテド兄さん(キム・ボム)が絶命!!

時代劇は、究極のファンタジーとはいうものの・・・「何でやねん?」の展開に少々面食らった。

ああ、彼独特なあの悲鳴にも似た甲高い絶叫(韓国語バージョン)がもう聴こえないかと思うと、ちょっと寂しい・・・。

聞くところによれば、韓国ドラマは視聴率至上主義。
ゆえに、本国では本作品はあまり伸びがなかったとのことで、終章が早まったのは致し方なかったのか・・・。
『善徳女王』が高視聴率を維持し、急きょ12話が追加されたのとは格段の違いだ。
だが、わたし的には、この『火の女神 ジョンイ』----決して面白くなかったわけではない。
いや、むしろ他の韓国ドラマに比べても女性陶工の半生というだけに劇中にはさまざまユニークな発見があり、かつ時代考証や歴史背景等はかなり雑だったが、一応豊臣秀吉なども登場したことで、より身近な感じがしてかなり楽しめた。
確かに、このドラマに現実感や史実を求めることはまったく無意味だと覚悟すれば、少なくとも『太陽を抱く月(本国ではオバケドラマと呼ばれたほどに高視聴率を叩きだしたらしい)』よりは、納得出来たような気がする。
わたしも時々時代物を書くが、時代劇の面白さとは、たった一滴の歴史の真実を核に、どれほどの『嘘』で周囲を塗り固めつつも如何に本物らしく大胆にストーリー展開できるか----というところにあるのではないかと思われる。
『ジョンイ』という作品の紹介文には、『チャングムの誓い』『トンイ』などと並ぶ朝鮮初の女性沙器匠(陶工)の半生を描く歴史大作----と、あるものだから、日本人はNHK大河ドラマに匹敵するような格調高さを期待してしまうのだが、それがそもそもの勘違い。
もっと気楽に観ることが出来る王道の娯楽時代劇----と、割り切った方がよいだろう。
韓国ドラマ通の方による『韓国ドラマのベタ(お定まり)』といえば、記憶喪失、白血病、目が見えなくなるなどの事故や病気が悲壮感をもって劇中に組み込まれることと、加えて男装の麗人や常に主人公を見守る血のつながらない兄弟(もしくは姉妹)、主人公が恋心を懐く王族などの登場だという。
ドラマ『イ・サン』に登場するヒロイン・ソンヨンには、彼女の幼なじみのパク・テスと主人公・サン。『トンイ』では、やはり幼なじみのチョンス兄さんと王様----と、いった具合である。
そして『ジョンイ』もこれまた例外にあらず、幼なじみでヒロイン・ジョン(ムン・グニョン)を優しく守り続けるテド兄さんと、初恋相手のジョンに対して誠実に想いを寄せる光海君(イ・サンユン)が存在する。
正にこうしたお定まりごとを忠実すぎるほどに盛り込みつつ、女性陶工としてのサクセス・ストーリーも巧みに編み込みながら作り上げられているドラマといえるのだが、特に本国の若者たちにはこうした物語展開はもはや食傷気味に思えたのかもしれない。
しかしながら、この食傷気味なドラマ展開が、白馬に乗った王子様願望にどっぷり浸れる少女マンガで育った日本の女子には意外に受けるという事実。
劇中では、テド兄さんとして登場するキム・ボムの何処か女性的で冷涼な美しさの中にも剣を握った際に見せる炎の如き激しさを併せ持つギャップと、文字通り白馬の王子様さながらに騎乗姿も凛々しくたくましい光海君役のイ・サンユンの対比が、日本の若い女性たちの目を釘づけにしたに違いない。
しかも、片時もそばから離れたくないと言わんばかりにヒロインに寄り添い、ジョンが辛い胸の内を語る台詞の間もそっと誰知られぬように彼女の背中をさすり続けているテドの様子はとても微笑ましく、その気遣いには「恐れ入りました」の一言だったが、実際に二人が恋人同士(実は、ムン・グニョンの方が二歳ほど年上)だったという事実を聞いて素直に納得した。

ただ、そんな王道のストーリー中、日本人的な視点からみた場合、どうしても疑問に感じざるを得ない部分があった。
それは、ジョンが育ての父親・ウルタムの無実を証明するため、何の罪もないアレルギー体質の信城君(光海君の弟)を未必の故意でアナフィラキシーショックに陥らせた下りである。
いくらなんでも、それはあんまりでしょ・・・と、未だに引っかかっている。
ジョンが真相を究明せんがために躍起になる気持ちは分からなくもないが、「そこまでしたら、お前も犯罪者と同じだ」と、きつくたしなめる人物が一人も描かれなかったことが何とももったいない。
前のブログに、ドラマの登場人物たちそれぞれの立場に立ってみて考えるのも楽しいものだと書いたが、ここでもまた、ジョンの立場、テドの立場、光海君の立場、イ辺首(ジョンの腹違いの実兄で沙器匠長)の立場、ムン郎庁(ジョンの師匠)の立場などなど、色々な観点からドラマの別展開を予想してみるのも面白いかもしれない。
放送分は二話を残すのみとなった。
はてさて、物語の結末や如何に・・・。


久しぶりに書こうか・・・
2015年12月17日
久しぶりに書こうか・・・
<韓国時代劇について>
あまりに久しぶりのブログなので、書き方がおぼつかない・・・。

今年も、もう師走・・・。
一年経つのが速いのなんの・・・。
近頃は、日々が束になって飛んで行く感がある。
そうそう、我が街では現在、灯りで街を彩ろうというイベントが行なわれており、夜の街中もなかなかオツな雰囲気である。
ところで、以前も少し本編で触れたかと思うのだが、目下の我が家の午後の楽しみといえば、SBCテレビで放送している韓国時代劇を観ること・・・。
高齢になると、視力が衰えて来るのはしごく当然のことで、我が家の高齢者たちは、より自然光を意識した絵づらが暗めの日本のドラマよりも、舞台劇のごとく画面の色がはっきりとしていて美しい韓国ドラマの方が観やすいというのである。
しかもドラマの内容が、ほぼ一定の法則にのっとって流れるさまは、俗に言う『水戸黄門方式(お定まり方式)』のようでもあり、次の場面展開がある程度想像しやすく、しかも視聴者にそうなって欲しいという期待感を懐かせるという、正に時代劇の王道となっているために、韓国ドラマが高齢者の間で人気だという理由でもあるのだろう。
俳優たちの演技力の確かさもさることながら、殊にドラマに使用されている衣装や調度品、風景の素晴らしさはそれらを映像化する制作スタッフの技量の高さをも物語る。
ヒロインを囲むイケメン軍団(韓国版F4ともF5ともいわれるらしい)が日本でも話題となった『善徳女王』などは、俳優陣が着ている豪華衣装を見ているだけでも楽しかった。
それも男性陣の衣装が・・・。

ヒロイン・トンマン女王を慕い過ぎたが故に、実母・ミシルに捨てられ、育ての恩師・ムンノにも捨てられた過去がトラウマとなり、いつかトンマンにさえも捨てられるのではないかという疑心暗鬼が高じて、自ら死地を招き身を滅ぼす悲運の剣客・ピダム(キム・ナムギル)が着ていた黒羽二重の如き漆黒の衣装は、常に人を信じたくても信じきれない彼の心の闇をも表現しているようで、184センチと長身のキム・ナムギル迫真の演技とも相まって、特に印象深かった。
そして、そのピダムが盟友&恋敵・ユシン(オム・テウン)や親衛隊長・アルチョン(イ・スンヒョ)の剣により愛する人の目の前で壮絶な最期を向かえるさまは、かなりの迫力。
ちょっと、心の弱い人には刺激が強すぎるのでは・・・?(千年の名や玉座よりも恋を選んだピダムの犠牲的胸中を想い、しばらく仕事が手に付かなかったと、のたもうた者あり)----と、さえ思われる名シーンとなった。
脚本(ストーリーの運び方)や時代考証に少々の『?』があっても、終わりよければすべてよし----と、ばかりの強引さで大団円に持ち込む手法は、まるで精密機械のような、視聴者の気持ちよりもストーリー展開重視、制作者本位(近頃は更にこうした傾向が加速している)を優先する日本ドラマにはまず見られない納得のさせかたでもあり、さすがとしか言いようがない。
また、これは最近気付いたことなのだが、韓国ドラマでは『手』の描き方一つにしても独特な意味合いがあるようだ。
日本ドラマにはほとんどお目にかかれない繊細かつ微妙な感情表現を、俳優たちの手の動きで見せるというのも、韓国ドラマの見せ場の一つらしい。
そういえば、『善徳女王』でも、ピダムが相手に信頼を寄せたり、逆に失望や不信感を募らせる場面で、『手を握る』『手を離される』----と、いったシーンがことさらの画面割りでよく使われていた。
でも、思い返してみれば、こういう人間の内面重視ドラマって、日本も昔はたくさん作っていたんだよね・・・。

さまざまな登場人物の立場になって、その人物の内面を深く探り、もしも自分ならばどう行動したであろうか・・・などを考えさせる教育に使用するのもありかも・・・なんて、韓国ドラマを教材としての視点からも見ている今日この頃。
たとえば、『善徳女王』の最終回----亡くなる直前のトンマンと彼女に付き添うユシンの間に、このような会話台詞がある。
「ユシン殿、昔、一緒に逃げようとしましたね・・・。覚えていますか?また、逃げましょうか・・・」
「----答えに困ります。何故(なにゆえ)、そのような話を・・・」
今にもこと切れようとしている想い人・トンマン女王に対して、ユシンがあくまでも忠臣として自らを律しつつ、それでも精一杯の愛情をこめて語りかける台詞なのだが、視聴者の中には首を傾げた人もいたそうだ。
「自分なら、ああは言わない。あれでは、トンマンが救われなさすぎ」
「あそこは、嘘でも『それもいいですね・・・』ぐらいのことは、言うべきでは・・・?」
などなど----。
自分がユシンの立場なら、果たしてどのような答え方をしたであろう・・・と、考え、想像を巡らすのも、また楽しい。
次は、今放送中の『ジョンイ』についても考察してみようかなァ・・・。
