コロッケをナイフで食べる・・・・・103

~ 今 日 の 雑 感 ~


コロッケをナイフで食べる



    何年か前まで、わたしは、小原流の華道を習っていました。

    一応これでも、二級教授の資格を持っています。一級準教授の免状を下さると、本部から二度ほど通知が来ましたが、最近は、お稽古をしていないので、ご遠慮しました。

    コロッケをナイフで食べる・・・・・103それに、、一級準教授ともなりますと、会費や免許料もかなりの額になりますから、とても手元不如意の現在は、そんなお金は出せません。

    ある夏の日に、そんな、華道のお稽古先で、やはり生徒さんのホテルや旅館の女将たちとお茶をしていた時に、「人間の質」というような話題で、盛り上がったことがありました。

    あるホテルの女将は、「人間の質は、子供の時からの情操教育で、ほぼ決まると思う」と、言います。

    つまり、掻い摘んで言うと、「子供には、本物を体験させろ」と、いうことなのです。

    味にしても、音楽にしても、スポーツにしても、中途半端なものではなく、一流のものを経験させてこそ、人格はしっかりと育つのだというのです。すると、他の女将が、

    「でも、そんなお金、うちにはないわ。一流料亭や、世界的音楽家の演奏なんて、そう簡単に食べたり聞いたりできる訳じゃないでしょう?」

    と、言うと、ホテルの女将は、「別に、毎回ということじゃなく、たまに、家族で食事をしたり、コンサートへ出かけたりする時でいいのよ」と、言います。

    つまり、一流を一度も知らずに大人になると、いざという時、その物の真偽のほどが判らず、自分に自信が持てないため、ここぞという一歩が踏み出せなくなるというのです。

    「それにしても、そこまで、子供に手をかけるということも、難しいんじゃァないの?」

    別の女将が言いますと、ホテルの女将は、「それなら、こういうことなら可能なんじゃない?」-----と、いうことで、こんな提案をしました。

    「もしも、家でコロッケを買ったとするでしょう。普通は、お皿に取ったら、ソースをかけて、そのままお箸で食べるわよね。でも、その時、お母さんが、『今日は、洋食だから、レストランみたいに、ナイフとフォークで食べましょうね』と、言って、コロッケにキャベツやトマトを添えて、ソースの味も、少し洋食風に工夫して、フォークとナイフを揃えて食卓に出したら、それだけでも、子供たちは、洋食レストランの雰囲気が味わえるんじゃないかしら。要は、気持ちの問題なのよ。大事なことは、たとえ貧しい食事でも、貧しい気持ちで食べれば、その子供の性格は、貧しいままになってしまうけれど、優雅な気持ちで食べれば、子供は決して卑屈にはならないと思うのよ」

    聞いていて、なるほどなァと、思いました。

    情操教育といえば、何だかひどく大層な問題のように思えますが、そういう身近なことでも、充分に教育出来るのだと、感心しました。

    家の中に、いつも花を飾るとか、夏には夏らしい涼しげな食器で食事をするとか、アイスクリーム一つを食べるにしても、ひと手間かけて、サイダーの中に浮かべてクリームフロート風にして楽しむとか、そんな時は、テレビを消して夏向きの音楽をCDなどで聴いてみるとか-----。

    考えてみれば、そんな簡単なことが、子供たちの心の栄養になって行くのかもしれません。

    他の女将たちも、目から鱗のような顔つきで、ふんふん頷きながら、聞いていましたが、わたしは、見てしまいました。

    そう言っていた、ホテルの女将がカップアイスのフタを開けたあと、何気に、そのフタの裏をペロリと舐めた瞬間を!

    まあ、情操教育は、うまく行っても、やはり、何処かで地金は出てしまうものなんだなァ・・・・。

    エレガントな大人になるって、難しいものなのですね。face02

<今日のおまけ>

    かなり前のことですが、わたしが通っていた英会話スクールの同じクラスに、いつも、物凄く豪華なアクセサリーを付けて来る、五十代の女性がいました。icon12

    その彼女は、子供たちに一流大学を卒業させ、一流企業へ就職させたことが大の自慢で、英会話を習うことよりも、宝石を見せびらかすことの方が目的で、通って来ているようにすら思えました。

    そんなある日、彼女は、胸にニューヨークで買ったという、二十万円もするゴージャスなブローチを付けて来たのです。驚いたわたしたちが、口々に、素晴らしいを連発すると、その彼女、得意満面で、

    「素敵でしょ?わたしの主人、公務員なんだけど、これもある企業の方が招待してくれた接待旅行で行った先で買って頂いたのよ。だから、わたし、一度も自分のお金で、物を買ったことなんてないくらい。これも、主人に人望があるからなのよね~」

    わたしたち、同じ教室の生徒は、途端、息を飲んで固まりました。face08

    やがて、生徒の一人である三十代の女性が、

    「もしかして、それって、ワイ------」

    「#+*”$!!」(;一д一)
   
    わたしたちは、慌てて、その三十代女性の口を押さえました。

    公務員の妻、恐るべし。何の罪悪感もなく、むしろ、そのことを自慢げに話すなんて、慣れというものは、人間をこうも無感覚に堕落させてしまうものなのかと、唖然とした瞬間でした。icon10






    

同じカテゴリー(ちょっと、一服・・・・・ Ⅴ)の記事
 ブログは公器に非ず・・・・・102 (2009-07-21 23:33)
 入院病棟24時 6・・・・・100 (2009-07-19 23:47)
 中高年登山の危険・・・・・99 (2009-07-18 23:50)
 わらべ唄は、心の扉・・・・・98 (2009-07-17 23:34)
 お仕事求む・・・・・96 (2009-07-16 00:04)
 不思議な話し方・・・・・94 (2009-07-14 00:26)

この記事へのコメント
いつも本物を体験させたいけど、うちの現状では無理だなと思いましたが、読み進めて、なるほどと思いました。要は丁寧に暮らすということでしょうか。
そういえば実家はこんな感じでした。こちらに来て、すっかり旦那の実家の家風に馴染んでしまったかな(^^;)早速実践しようと思います。
Posted by うっちー at 2009年07月23日 07:08
うっちーさまへ>

 わたしも、このホテルの女将さんが言うことは、お金や暇がある人のことだと思って、最初はそんなの出来る訳ないと、内心反発していたのですが、コロッケをナイフとフォークで食べる---そんなことでも、充分気持ちは豊かになるのだと知り、得心しました。
 そうなんですよね。丁寧に暮らすということなんですね。即席ラーメンだって、お鍋ごと食べて食べられない訳じゃないけれど、やっぱり、それ用のどんぶりに入れて、ちょっと具をトッピングするだけで、おいしいさは倍になりますから・・・。
 うっちーさんの実家のお母さまは、きっと、そういう心配りのひと手間をかけることで、うっちーさんに本物を教えて来られたんじゃないでしょうか。
 うっちーさんの中に、しっかりとした人生の基礎があるから、信州の田舎でも、その生活を楽しむことが出来るのだと思います。♫
Posted by ちよみちよみ at 2009年07月23日 11:16
家はまず 親から教育しなおしです・・・

まいったぁ 入力禁止の単語がどこにあるのかわからないけど うまくコメントできないよー
Posted by り・まんぼーり・まんぼー at 2009年07月23日 17:59
り・まんぼーさまへ>

 入力禁止の単語に引っ掛かっているんですか?
 わたしのブログは、一切入力禁止を設定していないので、それはたぶん、サイト側が独自に設定しているものだと思います。
 もし、その単語が判らないようでしたら、たとえば、「パ」「チ」「ン」「コ」と、いうように、一つずつ区切って書き込むと、受け付けてくれる場合がありますよ。
 もし、よろしかったら、試してみて下さい。
Posted by ちよみ at 2009年07月23日 18:07
ちよみさん こんばんは~
私も入力禁止用語に引っかかった事あります♪
何が何やらわからず 困りましたよ そうか 一つずつ区切ればいいんだぁ~♪ありがとう^^
ところで、人間の質のお話しですが、なるほどなぁ~と感心しております。いろんなマナーも大切ですし、躾も身についていた方がいいですよね♫ 情操教育も大切ですよね。でも私が考える一番大切なことは 人を思いやる心だと思っております。これこそが 人間の質だと信じておりまする♪
ちょっと力が入りました(=^・^=)
Posted by 福寿荘 女将福寿荘 女将 at 2009年07月23日 22:10
福寿荘 女将さまへ>

 人を思いやる心は、大切ですね。
 そして、他人を思いやれる人は、自分に自信がある人なんですよね。そして、自分が大好きな人なんです。別にナルシストという訳ではありませんよ。(笑)
 自分が好きで、大切だからこそ他人にもやさしくなれる訳で、自分に嘘をついて生きている人は、他人にも嘘をつくんだと思うのです。
 そうしなければ、自分を持ちこたえていけないからで、言葉や、態度で、わざと強がって自らを誇示してみせる訳です。
 でも、自分に自信がある人は、そんな必要はありませんから、平気で他人に弱音も吐けるし、人にも自分にも正直でいられるんですよね。
 腐っても鯛と、いうように、自身の根幹がしっかりしていれば、見栄やお金で我が身を飾らずとも、堂々と世の中を渡っていけるのだと思います。そのためにも、子供の頃からのしつけや情操教育は必要なのでしょうね。
 正に、そうやって育った思いやりのある人は、人間的にも質の高い人ということになるのでしょう。
Posted by ちよみちよみ at 2009年07月23日 22:28
初恋のお坊ちゃんが上手にナイフとフォークを使いこなしていました。
ますます素敵に見えましたよ。
食事の作法を学ぶのは大事だとおもいます。TPOをわきまえて使いこなせれば最高だと思います。手で持ちまるかじりで食べるコロッケもまた美味しいです。
将来なんとかディナーパーティーに出席して手で食べるわけにはいきませんもんね。

家はまず箸の持ち方からです
さぐりばし・うつりばし・ねぶりばし・さしばし・よせばし・まよいばし
先日 芋が美味くつかめずに居た息子に
させ!といいましたら
怒られました「先生そんなことしちゃいけないっていってたもーん」
五歳の息子に言われた私です。
まず 我が家は 私が学ばなきゃだめですよねぇ
Posted by り・まんぼーり・まんぼー at 2009年07月23日 23:26
り・まんぼーさまへ>

 初恋のお坊ちゃん、なかなかの紳士だったんですね。女性をさりげなくエスコートしたり、スマートに食事の出来る男性って、ちょっとカッコイイですよね。
 丸かじりするコロッケもおいしいけれど、将来、正式な場所に出た時に、ビクビクしないように、マナーに慣れておくことも必要ですね。
 マナーといえば、前に、そういうフルコースのディナーパーティーに出席した時、わたしの隣の席のおばさんが、フォークとナイフの選び方が判らず、並んでいるものを好きなように使ってしまい、いざ肉料理になった時に、魚料理用のナイフしかなくて、困惑していたのを見ました。
 日本人は、こういう場所は、とかく不得手ですよね。

 芋を「させ!」は、よかったですね。でも、息子さん、五歳にして、箸の使い方の作法を心得ているとは、なかなかのものです。美しい箸使いの出来る男性も、すてきですよね。
Posted by ちよみちよみ at 2009年07月23日 23:44
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。