花園の階段・・・・・66
2009年06月17日
~ 今 日 の 雑 感 ~
花園の階段
わたしの卒業した大学のキャンパスは、ちょうどこの季節、薔薇の花をはじめ色とりどりの花や緑で埋め尽くされ、文字通りの花園となります。

そんなキャンパスを、神父様やマスール(シスター)たちが僧服をひるがえしながら闊歩し、いつも学生たちの話し声や笑い声がさざめいていました。
そして、その大学の校舎内の一角には、不思議な階段があったのです。
教授室などが並ぶ棟の三階から二階へ降りる階段で、踊り場のところまで来ると、いきなり、天井から水が落ちて来るような音がするのです。
それも、ピチャッ!------などという可愛らしいものではなくて、思いっ切りバケツで水を浴びせるといった感じのバシャッ!-----と、いう豪快な音なのです。そのことを知らない新入生などは、頭から水をぶっかけられたと思って、慌てて髪の毛を触り、仰天します。
わたしも、始めは何のことか判らずに、本当に驚きました。が、そんなある日、一緒に階段を降りていた友人も、このバシャッ!にびっくりして、再び階段を上って逃げようと焦り、そこに立っていた壁に正面からぶつかったまま、一瞬身動き出来なくなってしまいました。つまり、それに張り付いた格好になってしまったのです。
「〇〇ちゃん!大丈夫?」
わたしも、他の学生の友人たちも、叫んでから今度は思わず込み上げる笑いを抑えるのに必死でした。何故なら、彼女が張り付いていたのは、校舎の壁ではなく、ちょうど教授室から出て来られた、神父様の大きなお腹だったからです。

張り付いた友人は、恥ずかしさで顔面真っ赤でした。
でも、その水音は、必ずいつも聞こえるという訳ではありません。実に気まぐれな音で、聞こえる時と聞こえない時があるものですから、その階段を常に利用しながらも、一度も聞いていないという人もいたのです。
そんな訳で、ある友人は、その音がすると、「ああ、気まぐれ天使が、また、水がめをひっくり返したよ」-----なんて、呆れていました。
あの階段の不思議な水音は、今も聞こえるのでしょうか?
もしかしたら、本当に、天使のいたずらだったのかもしれないと、微笑ましく思い出します。
