激   痛・・・・・64

~ 今 日 の 雑 感 ~


激    痛


    頸の副甲状腺を取り除く手術が終わると同時に、今度は、身体中の骨が血液中のカルシウムを急速に取り込もうとし始めます。

    その吸収の仕方は、すさまじく、とても口から摂取したくらいでは追い付きません。そのため、胸の静脈から直接カルシウム輸液を送り込むための中心静脈カテーテルを挿入し、一日に1.5リットルもの液体をどんどん注入して行くのです。

    そうなると、骨はますますカルシウムを吸収し出し、その時、身体中は、ものすごい痺(しび)れに襲われます。そして、その痺れは、さながら無数の剣山で身体中を刺されているような痛みなのです。

    頭をさわっても、顔をさわっても、皮膚に触れているという実感はありません。無数の針が出ている鉄板で身体を巻かれて、その上から撫でているという感覚しかないのです。

    そして、問題はそれだけではありません。身体の栄養失調が原因なのか、腎臓の機能がかなり低下しているために、カルシウムと共に入れる輸液の水分が体外に排出出来ず、その水が身体中の細胞に溜まり始めます。

    わたしの場合は、まず、左足の甲からむくみ始め、次は右足、更にそのむくみは次第に足の上部へと上って行き、両脚は、さながら丸太ほどの太さにまで膨れ上がり、それが下半身の方まで溜まり始め、ついには、肺にも水が溜まり始めてしまいました。それでも、骨のカルシウム吸収はおさまりません。もちろん、口からも一日16グラムものカルシウム剤を服用します。

    ここまで来ると、さすがの担当医の先生も、焦り始めました。これ以上身体に水分がたまると、肺水腫を起こし、呼吸困難で最悪の事態になりかねないとのこと。骨にカルシウムを入れないと、命にかかわる。かといって、これ以上輸液を入れ続けると、窒息死するかもしれない。-------正にジレンマです。

    この頃になると、わたしの両脚は、片足だけで約5キロの水分を蓄えてしまっていましたので、とても自力で歩くことなど出来ません。若い外科医の先生は、この足を見た瞬間、「わァ!」と、言って仰天し、病室を出て行ってしまいました。face08

    痛みも相変わらずで、そんなこともあり、手術前の予定の入院日数をはるかに超える病院生活となってしまったのです。

    その恐ろしいむくみは、今も完全には治っていません。(以前よりはかなり細くはなりましたが)ですから、わたしは、正座が出来ません。まあ、痛みの方は、かなり解消されてきましたが、それでも、曲がった背骨はまだ完全に伸びてはいませんし、体力もなく、毎日が懸命の状態で生きているといった有様なのです。icon10