性同一性障害の認知度・・・・・135

~ 今 日 の 雑 感 ~


   
 性同一性障害の認知度



    世界陸上の女子八百メートルで、二位の選手と二秒以上もの大差をつけ優勝した、南アフリカのキャスター・セメンヤ選手(18歳)が、実は、女性ではなく男性ではないかとの疑惑が出ていて、国際陸連は調査を始めたという記事を読みました。

    しかし、セメンヤ選手本人は、生まれてからずっと女性として育って来たと語っているとのことで、結果は数週間後に出るといいます。





    また、先日、身体の性と、心の性とが一致しない「性同一性障害」についての理解促進活動を行っている「GID(性同一性障害)シンポジウム2009実行委員会」が、意識調査のアンケートを行ない、その結果を公表しました。

    アンケート調査は、一定条件を満たせば、戸籍の性別を変更できる性同一性障害特例法が施行され、この七月で五年となったことから実施されたものですが、全国の男女1038人を対象に、インターネットを通じて行なった結果、「現在の社会が当事者を受け入れる社会になっていると思うか」との問いには、「なっている」と、答えたのは、わずか0.7パーセント。「ある程度は受け入れられる体制になっている」と、答えたのを合わせても、36.3パーセントにとどまったということでした。

    「性同一性障害」と、いう言葉を知っていると回答したのは、85.2パーセント。「何となく聞いたことがある」を、合わせると、99.5パーセントにまで上ったそうで、さらに、どのような病気かについても「知っている」「およそ知っている」の合計は、96.6パーセントにも達したそうです。

    因みに、最高裁によると、2007年度末までに、性別変更が認められた性同一性障害の患者は、841件だったそうです。

    そして、「もしも、友人、知人、家族が、性同一性障害だった場合、事実をオープンに出来るか?」という問いには、「できない」「おそらく出来ない」としたのは、友人、知人の場合は39.6パーセント。家族では、66.5パーセントとなったのでした。

    

    確かに、この問題は、頭では理解できても、気持ち的にはすべてを受け止めるのは難しいと思う人は多いでしょうね。

    未だに、年配の人の中には、病気ではなく、単に根性がおかしいからだと、考える人もいるくらいですから、社会に意識改革を根付かせることは至難の業かもしれません。

    でも、こういう病気を抱えて生まれて来てしまった人たちは、心身ともに本当に大変な苦痛を感じながら、人生を歩まなくてはならないのだと思うと、考えさせられることが多々あります。

    実は、わたしの知り合いの男性にも、この病気で苦しんでいた人がいました。知り合いとはいっても、特別話をしたことはありませんでしたが、まだ、世の中が今ほどこの病気に対して認識を持っていなかった頃のことですから、一家の恥、変わり者と言われて、家族からも実質抹消された状態の男性でした。

    それでも、彼は、生きて行かなくてはなりませんから、俗にいう「おかまバー」で、女装をして働いていました。本人は、自分を女性だと思っていましたが、世間はそれを許しません。

    わたしは、まだ子供でしたが、何処か気持ちの中で、「本人が女だというのなら、それでもいいじゃない」と、思っていたことを覚えています。つまり、それほど、その人は、女性的だった訳です。

    そんな、世間からつまはじきにされている彼でしたが、不思議とわたしの祖母とは気が合い、彼は祖母の良き茶飲み友達でもありました。祖母は、とかく自暴自棄にもなりかかる彼に、「あんまり酒を飲むな」とか、「風邪をひくから、夜はちゃんと布団に入って寝ろ」など、事あるごとに忠告していました。

    しかし、彼の不眠症は年々ひどくなり、睡眠剤を常用するようになると、身体も次第に弱って来てしまい、仕事に出ることもままならなくなってしまいました。

    そして、ついにある冬の日、近所の人が回覧板を持って訪ねたところ、炬燵に入ったまま、眠るように亡くなっている彼を発見したのです。アルコールと大量の睡眠剤を一緒に飲んだことによる事故死でした。
 
    まだ、四十歳になったばかりでした。

    自治会から、その知らせを受けた彼の実家では、何と、遺体の引き取りを断って来たのです。

    しかし、彼が、お骨になった時、一人の小柄な老女性が、まるで人目をはばかるように、自治会の責任者の家へ現われ、何度も頭を下げると、泣きながら、その遺骨をもらって行きました。

    その老女性は、彼の、母親でした。

    いくら女のような格好をする息子だったとはいえ、自分の子供に変わりはないと、長男夫婦の反対を押し切り、遺骨を引き取りに来たのでした。

    性同一性障害者は、亡くなってまでも、阻害される------。かつては、そんな時代もあったのです。

    このアンケート実施のニュースを知り、ふと、そんな昔の出来事を思い出した一日でした。

    

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