認知症の兆候・・・・・131

~ 今 日 の 雑 感 ~


認知症の兆候


    皆さん、右手と左手でそれぞれキツネを作って下さい。

    その右手のキツネの顔を自分の方へ向け、左手のキツネの顔を外側へ向けて下さい。

    そして、その両手を近づけ、右手の人指し指には左手の小指が、また右手の小指には、左手の人差し指が重なるようにつけ、それを、今度は、右手のキツネを外に向けて、左手のキツネを内に向ける------これを、交互に繰り返してみて下さい。 

    上手に出来ましたか?

    これは、8月1日の信濃毎日新聞に紹介されていた、認知症の兆候を見付ける簡単なテストの一つだということです。

    もちろん、上手に出来れば認知症の心配はなし。うまく出来なければ、少々問題ありということで、専門医の診察を受けてみた方が良いということでした。

    まあ、このような、簡単な認知症の兆候を発見するテストは、色々あるようですが、わたしが、今回ここで話させて頂きたいのは、わたしの周りで、このような症状になってしまった人たちが、その最初の兆候としてどのような行動を取り始めたかという、一つの例です。

    わたしの家の近くに住んでいる七十代前半の女性が、二人、ごく最近立て続けにアルツハイマー型の認知症になってしまいました。

    一人は、つい最近まで薬剤師として働いていた、高学歴の真面目な女性です。家族は高齢の姑と、元会社員のご主人。結婚と共に他県へ移り住んだ一人息子さんがいますが、現在は三人家族でした。

    女性は、現在でいうマザコンのご主人と、性格の強い姑とに、若い頃からほとんど苛めにも近い嫌がらせを受けながらも、自宅で開業している薬局の仕事を誠実にこなして来た、非の打ちどころのない聡明な人でした。

    しかし、姑が亡くなり、ご主人に胃癌が発見された頃から、次第に言動がきつくなり、共同浴場で一緒になっても、やたらと声を荒らげるようになって来たのです。そして、わたしに向かって、ご主人の癌のことを話し出すと、いきなり声をあげて泣き出してしまったこともありました。

    わたしが、今の時代、癌といっても、それほど心配することはないし、すぐに元気になりますよと、慰めると、ようやくほっとした顔になり、「わたし、最近、感情がコントロールできなくて・・・・」と、困惑していました。

    しかし、それから数日後の早朝、今度は、その女性が自宅の前の道を行ったり来たりしている姿を、わたしの母が見付け、「奥さん、どうしたの、こんな朝早く?」と、訊ねると、女性は、「主人の姿が見えなくなっちゃったの。朝、起きたら、家にいないのよ」と、いうので、母が、「ご主人、もうお帰りになったの?まだ入院しているんじゃないの?」と、言った途端、彼女は、はっと我に返った顔になり、「そうだった。まだ、病院にいるんだった。わたし、何やっていたんだろう・・・・」と、言って、自宅へ入って行きました。

    ご主人は、その後手術をして退院しましたが、とても、病み上がりの身に女性の介護は荷が重すぎるということで、彼女は、養護老人施設へと、入所することになってしまいました。


    
    もう一人の女性のケースは、これもまた、同じ共同浴場でのことでした。

    その女性は、自分が脱いだ服と、他人が脱いだ服の区別が判らなくなってしまい、脱衣所で身体を拭いたのち、誤って他人の下着を着てしまったのです。

    一緒に入浴していた娘さんは、母親の突然の異変に仰天し、慌ててその下着を脱がせると、まだ浴室内にいたその下着の持ち主の婦人に、ことの訳を説明して、何度も頭を下げて詫びていました。

    この女性のご主人は、一度家を空けると半年は海外暮らしという仕事をしていたために、結婚生活のほとんどを、二人の娘さんとの三人で過ごすという状態を続けていて、そのご主人が定年になって四六時中家にいるようになると、ご主人への気遣いに疲れ果て、常にカルチャーセンターに通い詰めるという、実に変則的な日常を送っていたのでした。

    そして、そのカルチャーセンターでも、一年ほど前から、やたらに同じ教室の仲間に食って掛かるような態度を取るようになっていたのだそうです。

    そんなことがあって、女性は、カルチャーセンターを休むようになり、そんな矢先の共同浴場での出来事だった訳です。

    そして、その女性も、現在は、身の回りのことをすべて面倒見てもらえる、認知症のお年寄りが暮らす宅老所のような施設へ入所しました。

    それでも、始めのうちは、その娘さんが一生懸命、母親の面倒を見ようとしていたのですが、妻が認知症になったストレスからか、このご主人もまた、胃癌になってしまい、そちらの面倒も見なければならず、夫と三人の子供の世話もあり、とても、母親の世話までは出来なくなってしまったのでした。



    実は、ちょうどこの頃、この女性の家の隣の、やはり七十代の主婦も、認知症になっていたのでした。

    一家の主婦が認知症になると、家庭全体が崩壊状態のようになってしまうという例を、目の当たりにして、どうして、このような病気が主婦に起きやすいのか、わたしには、何とも不思議でならないのです。

    彼女たちの生活習慣に、何か、他の人たちとは違う共通性があるのでしょうか?

    また、ご主人たちが、同じ胃癌になっているということも、単なる偶然なのでしょうか?

    何か、特殊な原因でもあるのではないかと、疑問にかられる今日この頃なのです。


    


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