母子加算廃止の是非・・・・・90
2009年07月10日
~ 今 日 の 雑 感 ~
母子加算廃止の是非
難しいことは判りません。
何せ、わたし自身は、独身でもちろん子供もいませんし、こういう話題も、何処か人ごとのような感じがしています。
しかし、これが案外、人ごとでは片付かない問題なんですよね。最近、ようやくそれが判りました。
それでも、やはり子育てを経験した方たちの感覚には、程遠いものがありますので、ここでは、わたしの知り合いの、ある邦楽の先生がおっしゃっていたことを、主に書きたいと思います。

そもそも、この「母子加算」というのは、生活保護を受けている一人親の家庭へ支給されていたもので、十五歳以下の子供一人につき月額23,260円、二人で25,100円が加算される仕組みで、これが、この四月に廃止された訳です。
廃止の主な理由は、生活保護を受けている一人親が、子供を一人養育する場合の生活扶助が国から138,000円支給されている形になるのに、生活保護を受けずに、一人親が子供一人を育てている家庭の支出が118,000円というのは、何ともおかしい。働く親の家庭よりも、働いていない親の家庭の方が、国から多くのお金をもらって生活しているというのは、如何にも本末転倒であるということで、厚生労働省は、これを一律にそろえることにしたのです。
そうでないと、不公平ですから。
しかし、働いていない母子家庭の母親の言い分としては、「子供が小さいと、働きに出たくても出られない。また、小さい子供がいるということだけで、就職させてもらえない」「保育所に子供を預けたくても、待機児の数が多くて、順番が回ってこない」などなど、様々困難な理由があるとのこと。
確かに、ただでさえ就職難の今日にあって、子供のいる母親の働き口確保は、容易なことではないでしょう。
しかし、その邦楽士の先生は、おっしゃいます。「では、そういうことが判っていながら、何故、離婚したのか?」と。「自分たち母子家庭がもらっている支給金は、『母子手当』も『母子加算』も、そもそも国民の税金から出ているのだということを、考えたことがあるのか」と------。
かつての戦時中のように、夫が戦死してしまった未亡人や、また、夫が事故死や病死などの悲劇に見舞われた妻子であるならばやむを得ないともいえるが、お互いに恋愛結婚で、子供が出来て、単なる性格の不一致や相手の浮気、家事、育児疲れ、嫁しゅうと問題などを理由に、離婚したような母親に、国が同情する必要があるのだろうかと、その先生は、言われるのです。
かつて、前長野県知事の田中康夫氏も、同様の意見で、母子加算金の見直しを提唱していました。要するに、今の母親たちは、考えが甘すぎるというのです。昔は、見合いで結婚させられたとしても、出戻れば、その母親は自己責任で身の始末をつけねばなりませんでした。女手一つで子供を育てるために、日雇い人足として重労働をしていた女性もいましたし、子供は子供で、そんな母親の苦労を何とか少しでも軽減してやりたいと、義務教育もそこそこに、働きに出たものです。
しかし、今の時代は、親が離婚したための苦労を、子供たちにも背負えというのは、あまりに可哀相だとの考え方から、たとえ貧困家庭でも、子供の就学の機会を奪ってはいけないということで、国も助成金を支払うという訳です。
とはいえ、確かに、そのお金は、わたしたちの税金から工面されているものです。要するに、身勝手な結婚の破たんの尻拭いを、赤の他人のわたしたちが肩代わりしているという格好になる訳です。その邦楽の先生のように、一度結婚をして子供が生まれたら、母親は、自分の幸せなど考えてはいけない。たとえ、夫婦の間に何があっても、絶対に離婚などするべきではないと、いう気持ちも、判ります。
「その母子加算にかかる200億円というお金があるのなら、それをもっと別の、たとえば老人医療や介護福祉の方へ回して欲しいものだ」と、いう考えも、なるほどなァと、思います。そして、離婚しても、得なことは何もない。子供を抱えて、仕事もなく、貧しさの極致を体験しなければならないと判れば、離婚する母親も減るのではないかと、先生はおっしゃいます。
「ドメスティックバイオレンスなどで、命の危険があるような場合は別にしても、原則、恋愛結婚した夫婦には、離婚を認めてはいけないのよ」と-----。
この母子加算廃止は、実質的に少子化を加速させることになるという、民主党の意見なども判りますが、それならば、ただ、離婚しました、子供がいるので助けて下さい-----などという安易な支給方法ではなく、その母親に、それ相応のペナルティーを科したうえで、支給するシステムにでも変える必要があると、いう意見にも一理あるような気もします。
たとえば、母子加算をもらって生活をしている一人親は、子供が成人したのちは、受給した分を介護労働で返却するというやり方もあるでしょう。また、「あなたが頂いている今月のお金は、〇〇さんと、〇〇さんの税金から出ているものです」というような、具体的な名前を受給金に付記するという方法もあると思います。その方が、より、他人のお金で自分たちは生活させてもらっているのだという、実感がわくはずだと、思うからです。
母子加算廃止に賛成する人たちと、反対する人たち双方の気持ちを納得させる方法を模索するべく、国や自治体は知恵を絞る必要があるのではないかと、考えるのです。

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