飛び込み診察日・・・・・424
2010年03月05日
~ 今 日 の 雑 感 ~
飛び込み診察日
今日は、診察予約日ではないのに、少々体調に不安があったので、飛び込み診察をお願いしてしまった。

立錐の余地もないとは、正にこの状態ではないだろうか。待合所は、かける椅子もないほどに人、人、人・・・・。
予め電話をした時、看護師さんが、「その日は、とにかく患者さんが多いので、かなり待つことになると思いますが、それでもいいでしょうか?」と、言っていた通りの、いや、それ以上の込み具合だった。
そんな中、わたしの目の前を、車椅子の男性が、娘さんや奥さんとともに通り過ぎ、しばらく行った場所で、おもむろに車椅子を止めた。その直後、二十代後半と思しき娘さんが怒鳴るように言ったのである。
「本当に、お父さんは、自分に甘く、他人に厳しいんだから!あんなに、お酒はやめなさい、お肉料理ばかり食べてはいけません、カロリーは控えめにしなさいって、先生に言われたのに、忠告を無視して、そんな食事じゃ人生終わりだなんて言って、食べ続けたから糖尿が悪化したんだよ。足が動かなくなったのだって、自己管理が悪かったのに、あたしやお母さんに面倒かけて、それでいいと思っているの!?」
「・・・・・・・」
車椅子の男性は、何も言えず状態のまま、娘の憤懣を黙って聞くだけである。しかし、娘さんの憤りはおさまらない。
「お母さんだって、お父さんを甘やかすからいけないんじゃないの!ダメでも自分の足で歩かせなさいよ!」


「そんな大きな声出さなくたって・・・・・」
母親も娘さんの怒りを鎮めるすべがない様子だった。
そうかと思えば、わたしが何とか空席を見つけて腰を下ろした時、隣に座っていた中学生らしいちょっと太めの少女は、一緒に腰をかけている母親に、突然、駄々をこね始めた。
「お母さん、もう、やだ!!あたし、こんな所に居たくない!家へ帰る!」


「もう少し辛抱しようよ。今まで待ったんだから、もうすぐ名前を呼ばれるから-----。なんなら、お母さん、診察がいつになるか訊いてこようか?」
「いいよ、そんなこと訊きに行かなくたって-----。やっぱり、うちへ帰りたい」
「そんなこと言ったって、変な病気じゃ困るから、診てもらおうよ」
「だって、男の先生だよ。お尻、見せるんだよ」
「男だって、相手はお医者さんなんだから、そんなの恥ずかしくなんかないよ」
母親は、一生懸命、少女を説得して、診察を受けさせようとしている。やがて、少女の名前が呼ばれ、母娘は、診察室へと入って行った。
そして、しばらくして出て来た少女は、何故か、ルンルン気分でニコニコしている。

「やっぱり、ただの切れ痔だったんだ。よかった!」

「診てもらって良かったじゃないの。これで安心できるよ。お薬、ちゃんともらって帰らなきゃね」
母親も、本当にほっとした表情であった。すると、そこで少女が一言。
「お母さん、さすがは、医者だね。あの若いのやるじゃん!」
これには、周囲の患者たちも思わず笑いをかみ殺した。母親は、赤面しながら、少女の腕を掴んで帰って行った。
そして、わたしの番-----。
診察室へ入ると、一週間前に、心電図モニターをチェックしながらも電話に出てくださった担当医の先生が、優しい笑みを浮かべて、椅子にかけていた。
