人は足から衰える・・・・・80

~ 今 日 の 雑 感 ~


人は足から衰える


    
    これは、わたしの伯母の話です。

    伯母は、今から七年ほど前、少し大きな手術をしました。しかし、特段、命にかかわるというものではなく、別に手術などしたくないならしなくてもよいくらいの病気だったのですが、本人が、このままでは日常生活に支障があるということで、手術を決めたのです。

    しかし、もともと小心者の伯母は、手術の日が迫ると、次第に入院することを渋り出し、入院当日になって、あまりの恐さに神経がまいっていたのか、物干し場に干してある洗濯物を取り込みに行って、足を滑らせ、そのままお尻から、五十センチほど下にある部屋の畳の上へドスンと尻もちをついてしまったのです。face08

    それを理由に、「腰が痛くて、病院へ行けない」と、駄々をこねはじめ、伯父と従姉が必死で説得して、やっとの思いで入院させたのですが、今度は、翌日の手術を拒んで、腰が痛くて手術室まで行く移動式のベッドへのれないと言い出す始末。しかたなく、病院側は、一週間手術を延ばしてくれました。その後、何とか手術は無事に成功したのですが、それからも、腰が痛いといって、看護師さんに痛み止めを請求するので、とうとう腰のレントゲンを撮ることになったのですが、結果は、何処も異常なしでした。

    それから、間もなく退院した伯母は、お医者さんには出来るだけ歩いて足を鍛えて下さいと言われていたにもかかわらず、腰が痛いの、膝が痛いのと言い続け、ほとんど家の中の仕事をしなくなってしまいました。それなのに、自分は、外出好きで、伯父や従姉に頼んでは、ほぼ毎日、自家用車に乗せてもらい、買い物に行ったり親戚の家へ遊びに行ったりするのですから、これまでも太り気味だった身体が、ますます大きくなって、膝にかかる負担も倍になり、ほとんど座ったきりの生活になってしまったのです。icon10

    病院からは、骨はいじめないと強くならないのだから、どんなに最初は辛くても頑張って歩いて下さいと、きつく忠告されていたのですが、伯母はそんなことは全くの無視で、ついに、両手で何処かを摑んでいなければ、立っていることも出来なくなり、そうなると、手で物を持って運ぶことも出来ないため、必然的に茶の間に座ってばかりとなり、目の前に出ているお菓子などを日がな一日バクバクと食べてばかりいるようになってしまったのです。

    そんな身体になりながらも、お風呂はいつも外湯を使うため、従姉の負担は並大抵のものではなくなりました。そうこうしているうちに、今度は、伯父までが若い時に痛めた背骨がもとで、片足が不自由になり、こちらも病院通いが始まってしまいました。しかし、それでも、伯母は、リハビリをして歩けるようになろうという努力はしません。icon09

   そんなこんなの間に、伯母の足は本当に立ち上がることも出来なくなり、今では、病院の先生も、さじを投げた格好です。

    運動不足がたたって、血圧もあがり、血糖値も高くなり、本人は、いつも腰が痛い、膝が痛いと嘆いています。要するに、まったく自業自得の辛さをあえて自ら背負い込んでしまったという訳です。

    もう、いまさらリハビリをしろと言っても、本人聞く耳はないでしょう。七年前の退院時に、どんなに辛くても頑張って歩く訓練をしていれば、こんなことにはならなかったのです。従姉も、今になって、「わたしが、甘やかし過ぎたんだ」と、言っています。
 
    確かに、高齢者がリハビリをやる姿は可哀そうで痛々しいものですが、必要以上の仏心で優しくするのも考えものだということを、わたしも痛感しました。

    年寄りを労わるということと、甘やかすということは、本質が全く異なるのだと、いう認識を持つことも大切なのだと、伯母のケースを見て実感した次第です。face09  続きを読む