当たりさわりのない人間関係って・・・・・926

~ 今 日 の 雑 感 ~


当たりさわりのない人間関係って・・・



    
    テレビドラマの時代劇を観ていると、旅先でほんの数時間相部屋になっただけで、相手の仇討のための助太刀を買う破目になるというようなシーンが出て来ることがあるが、これは、何も全くの作り話ではないようだ。

    かつての日本人同士には、確かに「袖振りあうも他生の縁(この世のわずかな関係も、前世からの因縁によるもの)」という考え方があった。

    だから、一度知り合った者には、とことん付き合うというようなこともさほど珍しいことではなかったのである。

    そのために、かつての偉人伝などを読むと、どうして、これほど貧しい人が大富豪になれたのか?などということが普通に起きている。

    つまり、主人公とかかわった人たちが簡単に彼を見捨てないからなのである。

    しかし、今の世の中の人々は、そうした必要以上の人と人との関わりを嫌う。一見、親切そうに手を差し伸べたように思えても、とことんその相手のために尽くそうとは思わない。

    すべて中途半端なのだ。

    いや、中途半端ならまだいい方で、見て見ぬふりをして通り過ぎる人たちの方が断然多いのが現実である。

    自分自身に余裕がない人間が世の中に多すぎるのかもしれないし、もともと他人のために手を貸すなど馬鹿げていると思い込んでいる人もいるだろう。

    ホテルなどへ行った時に、ボーイさんが現われて「お荷物をお運びします」などと言って、旅行カバンを持ってくれる場合があるが、わたしは、これを拒否することが多かった。(かなり昔の体験だが)

    だって、このボーイさんが荷物を運んでくれるのはホテルの中だけで、一歩ホテルを出れば結局その重い荷物を自分で運ばなくてはならないわけで、そんなわずかな距離を運んでもらう程度の親切など何の意味もない、むしろおためごかしで迷惑だ----と、思ってしまうからだ。

    どうせ、「お荷物をお運びします」というのなら、駅までも運んでくれるのが本当のサービスではないかと言いたいのだ。

    そういう中途半端な親切に飽き飽きしているのは、わたしだけではないだろう。

    上辺だけの当たりさわりのない関係を好むという風潮が、いつ頃から日本に根付いたのかは定かでないが、人々が必要最小限の関わり合いしか求めなくなって来た要因の一つに、スーパーマーケットの販売方式があるようにも思える。

    そして、それは、家電量販店などの「電気製品はお買い上げいただいたお客様が取りつけて下さい。こちらは、販売するだけです。そして、故障したら、ご自分でメーカーと交渉して下さい」という、最悪の商売の仕方へとつながっているのである。

    こんな世の中であるから、必然的に他人のことなど無関心になる。

    相手の気持ちに一歩踏み込もうとしても、そこから先はガッチリとガードして決して入り込ませない。

    そんな無味乾燥人間ばかりが増殖した日本に、かつての高度成長時代のような活気が取り戻せるはずがないのである。

    日本が世界第二位の経済大国の座を中国に奪われたのも、当然の結果なのだ。

    人の心の結束が崩れ、ぶつ切り状態になっている社会に成長など望むべくもないことは、自明の理と言わざるを得ない。
    

    

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