犬は怖いが、タバコは欲しい・・・・・932

~ 今 日 の 雑 感 ~



犬は怖いが、タバコは欲しい




    「ふぐは食いたし、命は惜しし」

    こんな戯れ歌を聞いたことがあるが、昨日、これに似たようなことがあった。

    一人の青年が我が家を訪れ、

    「タバコが買いたいんですけれど・・・」

    と、言う。こちらが、

    「うちは、タバコ屋じゃないですよ」

    と、言うと、

    「それは、判っているんですが・・・」

    と、何とも歯切れが悪い。

    「実は、タバコの自動販売機のあるお店で買いたいと思っているのですが、そこに犬がいるんです」

    青年は、犬が大嫌いなのだそうで、自分の代わりにタバコを買って来て欲しいというのだ。

    「お金は、出しますから、お願いできないでしょうか?」

    確かに、そのお店には犬がいる。でも、大人しい犬で、人に吠えかかるということは今まで一度もないし、むしろ、客が来れば家の中へ入って、家人を呼んで来るほどの賢い犬である。

    「あの犬なら、大丈夫ですよ。体は大きめですが、何も悪さはしません」

    こちらが説明しても、青年は、やはり怖いと言う。

    確かに、犬嫌いの人にとってみれば、犬が大きかろうが小さかろうが、嫌な物は嫌だろう。

    すると、ちょうどタイミング良く、そのお店の人が我が家の外を通ったので、

    「あの人が、その店の人だから、犬を家の中へ入れて欲しいと頼んでみたら如何ですか?」

    と、アドバイスした。青年は、ホッとした顔で、その人の方へと歩いて行った。

    「そこまでしても、タバコが吸いたいのかなァ・・・」

    父がため息をつく。

    しかし、そういう父だって、禁煙する前までは、タバコがポケットに入っていないと落ち着かないとさえ言っていたはずなのだが・・・。

    人間とは、実に勝手な生き物である。     続きを読む