病気をランク付け・・・・・908

~ 今 日 の 雑 感 ~


病気をランク付け



    先日のNHK総合「クローズアップ現代」を観ていたら、実に深刻な問題を取り上げていた。

    国内の中流階級がん患者のおよそ2万人が、高額な薬代が払えず、飲み続ければ完治に近付けると判っている薬を使用できずに亡くなっているというのである。

    また、確実にがんを消滅することが出来ると期待される高度医療も、金額がかさむことで、ほとんどの患者が断念せざるを得ず、目の前に治る治療がありながら、費用の問題がネックとなり救える命も救えないという現実があるのだ。

    日本の現在の医療は、金持ち優遇。金のある者は長生き出来るが、貧乏人は死ぬしかないというのが実態だと、番組は説明していた。

    ある患者は、あまりに高額な薬代が家計を圧迫し、一定期間飲み続けなければならないところを、短期で打ち切ったために、がんが再発。

    何とかお金を工面して再び飲み始めた時は、もはや手遅れだったそうである。

    こうした個人の経済状態で受けられる医療の質が限定されるというような医療体制を見直そうという考え方が、国内でも広まりつつあり、それには、イギリスの例が参考になるだろうということであった。

    イギリスでは、がんなどの難病に関する医療費の自己負担がかなり安価で済むそうで、白血病の薬代はナント無料である。

    つまり、人間が個人的にどれほど気を付けても避けられない病気に関しての医療費や、投薬治療で大きな改善が認められる段階の病気の治療にかける医療費の自己負担は軽減されるが、インフルエンザ治療薬のタミフルなどを処方する際の薬代は、原則全額自己負担となるのだという。

    これを観ていて感じたのだが、この方法を日本でも取り入れれば、命にかかわることのない比較的軽い病気の医療費は、全額自己負担となり、遺伝系や免疫系などの難病に関しての医療費は、ほぼ全額国の負担となるのかもしれない。

    要するに、自分で予防可能な病気、たとえば喫煙による肺がん、肺気腫などの患者の医療費は、ほぼ全額自己負担だが、乳がんや前立腺がんなどのホルモン系の病気は、予防のしようがないので、医療費は国の負担となる----と、言うようなことになるのだろう。

    また、自力で歩けるはずにもかかわらず、怠慢な生活習慣によって足腰が弱くなった場合や、糖尿病に至った場合の医療費も全額自己負担となることも考えられる。

    とにかく、このままでは国の医療費の伸びに歯止めがかからないどころか、治る病気で死ぬ患者が急増する可能性があるのだ。

    解説者として出演していた大学教授は、今後は国の医療体制の抜本的な改革が急務だろうと、語っていた。
      続きを読む


怖すぎる説得では、人は動かない・・・・・907

~ 今 日 の 雑 感 ~


怖すぎる説得では、人は動かない




    「お酒を飲みすぎると、肝硬変になる確率はこんなに高くなります。そうなってしまった肝臓の写真がこれです」

    「タバコを何十年も吸い続けると、肺がんになる確率が非常に高くなります。肺がんだけではなく、肺気腫や間質性肺炎などのリスクも増え、それは苦しい思いをすることになります」

    などという恐怖感をあおるような説明を聞いた人が、お酒をやめたり、禁煙したという例は、あまりないそうです。

    何故なのでしょうか?

    アメリカの二人の心理学者の実験があります。

    高校の新入生全員をA 、B 、C の三つのグループに分けて、それぞれに虫歯の予防法についての講義をしたのですが、Aグループには、歯を不衛生にしておくとどのような恐ろしいリスクがあるかということを、虫歯や歯槽膿漏という具体的な例をあげて詳しく説明し、だから歯科検診は大切。歯医者さんへ行こうと、不安感をあおったのだそうです。

    Bグループには、穏やかな調子で色々な事実をあげながら、病気の危険性を訴え、Cグループには、衛生上の具体的な忠告を与えるにとどめて、不衛生から生じる病気については積極的に説明しなかったのだといいます。

    そして、この講義を受けたのち、それぞれのグループに不安感を聞いたところ、Aグループが42%、Bグループが26%、Cグループは24%の新入生が自分の歯について不安だと答えたのだそうです。

    では、その後、実際に歯科検診に歯医者さんへ行った新入生は何人いたのかと言うと、本当ならば、もっとも不安感を覚えていたAグループの生徒たちが率先して行ったはずなのですが、これがそうではなかったのです。

    率先して歯科医院へ行ったのは、むしろ、ほとんど大げさな症状説明をしなかったCグループの生徒たちで36%、次にBグループの生徒が22%、そして、一番病気に対する恐怖を感じていたAグループの生徒は、8%しか歯科検診に行きませんでした。

    つまり、人間は、あまりに恐怖感や不安感が大きいと、「もしも、実際に虫歯になっていると言われたら怖い」という気持ちの方が先に立ち、どうせなら知りたくないという思いを優先してしまうのです。

    ところが、その病気の恐怖を知らなければ、大した抵抗感もなく検診へ行こうという気持ちになるのです。

    しかし、たぶん、かなりの恐怖を感じたAグループの生徒たちは、歯科検診には行かないものの、歯磨きは他のグループの生徒たち以上に一生懸命やるようになったのではないでしょうか。



      続きを読む