ちょっと、一服・・・・・39

~ 今 日 の 雑 感 ~

近頃の女湯事情


    わたしの家の近くには、近所の人たちだけが入浴する事の出来る外湯があります。

    天然温泉かけ流しのこの外湯は、地域の人たちが管理する風呂で、マグネット式の鍵を持っていなければ入ることが出来ません。浴室は、もちろん、男湯と女湯に分かれていて、男湯よりも女湯の方が少し大きめに造られています。

    何故かと言いますと、女湯には、お母さんと一緒に子供たちが入る割合が多いからで、身体を洗う場所も、浴槽も、こちらの方が、男湯に比べて、やや広く出来ているのです。

    そのような訳で、男湯の方は、各時間帯をとっても特別込み合うということはないのですが、女湯の方は、夕方から夜にかけてかなりの人数が入浴に訪れることになります。殊に、夕飯過ぎの時間帯は、それこそ、正に芋を洗うような状態となり、中には、この風呂に入ることを諦めて、別の温泉施設へと行ってしまう人や、何度も風呂の中をのぞいては、諦め顔で帰る人、また、ずっと脱衣所で浴室内の人が出て来るのを待ち続ける人など、毎日が、まるで戦場のような騒ぎなのです。

    しかし、最近は、その状況に輪を掛けて、この様子が更にひどくなって来ているのです。理由は、近所に住む人の人数が以前よりも確実に増えて来ていることにあります。それも、女性と子供の人数が-------。

    ここまで書けば、勘の良い人ならもうお判りですよね?何故、女性と子供の人数に限って増えて来ているのか?------それは、とどのつまりが、いわゆる「出戻りさん」が、多くなったからなのです。結婚はしたものの、五年も経てば、子供を二人ぐらいは連れて出戻って来る。そんな「出戻りさん」女性の中には、二度も結婚し、それでもだめで帰って来るつわものもいます。やはり、二度目の夫との間に生まれた子供も連れて------。

    こうなると、もはや、夕方以降の女風呂は、出戻りさんたちの天下です。昔のように、バツイチ、バツニを恥ずかしいとか、後ろめたいとか思う女性はほとんど皆無ですから、皆さん堂々たるもので、「もともと、わたしは、ここの出身なんだから、子供連れで入って何が悪いの?こっちは、少子化を改善してやっているのだから、優先的に入浴させてもらって当たり前でしょ」ぐらいの鼻息で、今までその時間に入っていた人たちのことなどお構いなしで、やって来るのです。

    もちろん、「いつも、子供がうるさくて申し訳ありません。なるべく静かに入りますから、一緒に入れてやって下さい」という、礼儀正しい女性も中にはいます。そういう女性には、近所のおばさんたちも、「いいから、先に入りなさいよ」と、親切に場所を空けて、洗い場を譲ってやっている光景も目にしますが、そんな殊勝なバツイチさんは、そうそうおられません。

    とうとう、業を煮やした住民の中には、ある出戻りさんの名前を書いた匿名の怪文書を地区中に配り、「出戻りは、風呂に入れるな!」と、訴えた者まで出る始末です。特に、そういう住民のやり玉に挙げられるのは、女の子ばかりを産み、連れて帰って来た女性です。何故なら、女の子は、これからこの場所に住む以上、一生ここの女湯を利用する訳ですから、その家族に対する批判も強まる訳です。

    それにしても、確かに、最近は、お父さんのいない子供たちが街に多く住むようになりました。わたし家の近くの中学生も、「学校へ行っても、友達と話しづらくて困るんだ。離婚した家庭が多いから、いちいち言葉を選ばなけりゃならないだろ?正直、疲れる」と、ぼやきます。

    恋愛をして、結婚し、子供が生まれたにもかかわらず、様々な事情で離婚しなければならないことになり、再び実家へ身を寄せる。------昔のように、「結婚し、子供が生まれたら、その親は、自分を人間だと思ってはいけない。どんなに、辛いことや苦しいことがあっても、子供のために死に物狂いで働き、子供のために別れるべきではない」などという理屈が当てはまる世の中ではないことは判りますが、地元の住人たちの考え方としては、いったん嫁に出た女性が戻って来た場合、それは、結婚前の〇〇さんの家の☓☓ちゃんではないのです。かつてとまったく同じ感情で、付き合うことは無理だという人もいます。

    これが、都会であれば、また事情も違うのでしょうが、こちらのような田舎には、やはり、未だに「出戻りさん」に対する割り切れない思いも、多分にある訳ですから、これからも、この女湯を利用するであろう彼女たちには、やはり、近所の人たちに対するそれなりの気遣いを持ったうえで、入浴をして頂きたいと、思う次第です。  続きを読む