記憶は作り変えることができる

記憶は作り変えることができるart03



  長野市民新聞の読者の方から、連載中の「地域医療最前線~七人の外科医~雪  線」の感想を頂きました。

  誠に、ありがとうございます。とても嬉しく読ませて頂きました。

  これからも、ご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。


    
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    心理学者が記憶をテストする場合、「再生法」や「再認識法」という手段を用いることがあるという。

    「再生法」とは、いくつかの回答を与え、その中から正解と思われるものを選び出させるというやり方だという。

    警察も、取り調べや目撃証言などを集める際に、こうした「再生法」を良く使う。

    そして、警察側が意図した証言を引き出すような場合、「誘導尋問」というやり方で相手が話しやすいように促したり、また何度も同じことを繰り返し質問することで、ありもしない偽の記憶を相手に刷り込ませてしまうという方法を使うこともあるそうだ。

    ある実験では、被験者の前に5人の人を一列に並ばせて、

    「この中に、計画的な破壊行為をした者がいる。その人物を指差しなさい」

    と、命じたところ、そんな人物は一人も並んでいないにもかかわらず、被験者の78パーセントが、それらしいと思う人物を指差したのだそうだ。

    また、別の被験者のグループには、「この中に犯人がいるかもしれない」と、言ったところ、前のグループほどではなかったが、33パーセントの人が、無実の人を犯人だと決めつけたというのである。

    人の記憶というものは、決して正確なものではない。

    久しぶりに青春時代の懐かしい歌を聴いて、

    「これは、高校の卒業式の日に聴いた歌だ」

    と、思っていたのに、実は、その歌がテレビやラジオから初めて流れたのは、卒業式より三ヶ月もあとだったなどということは良くある話なのである。

    人は、インパクトの強い出来事が近い時期に連続して起きると、時間が経つ間にそれをまとめて記憶してしまうということもある。

    また、自分や相手が望むような事実として都合よくねじ曲げて記憶してしまうということもあり得るのだ。

    「20世紀少年」という近未来SF映画があるが、この作品もまた、一人の少年が自分に都合の良い記憶をでっちあげてしまったことからすべての悪の連鎖が始まるというものであった。

    わたしも、最近、自分の記憶に自信がなくなることがある。

    事実を事実のままに記憶することは、実はとても難しいことなのである。

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Posted by ちよみ at 17:53Comments(0)ちょっと、一息 36