絶妙な距離---2.195キロ
2012年08月22日
絶妙な距離---2.195キロ

何故、マラソンの距離は、42.195キロなどという中途半端なことになってしまったのかといえば、104年前のロンドン五輪でのコースは、当初、イギリス王室が所有するロンドン郊外のウィンザー城を出発し、名門のイートン校やハロー校などを経由する競技場入り口までの約40キロの予定だったそうなのだが、当時の英皇太子が、「子供たちにスタートを見せたい」と望んだために、この端数が生まれてしまったというのが、有名な説ではある。
しかし、これには他の説として、「最後の385ヤード(352メートルは)王室関係者だけではなく、約10万人の観客にもレースを楽しんでもらうために生まれた」という理由もあるのだという。
この不思議な端数だが、元マラソン選手の瀬古利彦さんは、この端数があったからこそ、マラソンは劇的なドラマを形成するスポーツとなり得たのだと話す。
「(この端数は)実に不思議な距離で、マラソンは40キロを過ぎてからドラマがいっぱいある。35キロからが本当の勝負と言われるが、最後の2.195キロで練習した人としてない人の差がはっきりと出るのだ」
と、いうのである。
この約2キロ延びた距離は、「ドランドの悲劇」のような五輪史で語り継がれる物語を生んでもいる。
イタリア選手のドランド・ピエトリは、ゴール手前で意識がもうろうとして、何度も倒れては起き上がるを繰り返しながら、息も絶え絶えに競技役員の手を借りてテープを切った。
しかしこの後、「助力を受けた」というアメリカの抗議によってピエトリは失格となり、二着のジョニー・ヘイズが金メダルを獲得したのだった。
今回のロンドンオリンピックでも、男子マラソンは、正にこの端数の戦いでもあった。
1908年のロンドンオリンピックで偶然に生まれた2.195キロではあるが、これがあったからこそのマラソンともいえるのであろう。
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