縁は異なものとは言うけれど・・・

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    「おれ、今までずっと考えて来たんだけれど、本当はもっと違う人生があったんじゃないかって・・・さ」

    以前、ある男性がこんなことを言っていた。

    「実はさ、今の女房のこと、結婚した時も何とも思っていなかったんだよね。そもそも、どうしてあいつと一緒になったのかだって、未だに良く判んないんだよ。

    まだ、独身の頃、おれ、ある出版社へ仕事で何回か出入りしたことがあったんだ。

    その時、そこにすごく可愛い事務の子がいてさ、その子会いたさにその出版社の仕事は自分に任せて欲しいって上司に頼んだくらいだったから、いつか一緒に飯でも食いに行きたいな・・・なんて考えて、ある日、一大決心でその子をデートに誘うことにしたんだ。

    でも、それを話そうとした日は、ちょうど彼女、出版社を休んでいて、彼女と一緒に事務をとっていたもう一人のちょっと小太りの若い女性事務員に、彼女を食事に誘いたいということを伝え、彼女の返事を待っているって、おれの電話番号(携帯電話はない時代)を教えておいたんだ。

    そしたら、翌日だったと思うんだけれど、伝言頼んだ女子事務員から電話がかかってきて、彼女に伝えたらデートOKだって言うんで、おれも喜んで当日待ち合わせ場所へ行ったんだよ。

    でも、そこで待っていたのは彼女じゃなくて、おれが伝言頼んだ女子事務員で、『あの子、急な用事で来れなくなっちゃったから、代わりにあたしが来た』って言うんだよね。

    まあ、用事なら仕方がないかな・・・ってことで、おれも帰ろうとしたら、その事務員が、『どうせここまで来たんだから、一緒にご飯でもどう?あたしがおごるよ』なんて言い出して・・・。

    おれも腹へっていたから、つい何気にご馳走になっちゃって・・・。そしたら、次の日にその事務員から電話が来て、『今度は、一緒に映画でも観る?』なんて言うもんだから、そればかりは断わったんだけれど、『彼女も一緒だよ』って言うんで、それならとOKして、また待ち合わせ場所で待っていたら、来ていたのは、やっぱりその事務員だけだったんだよ。

    それから、何となくその女性事務員とばかり付き合うようになってさ。

    それが、今の女房ってわけ----。

    何か、おれ、うまくだまくらかされたような気持ちのまま、こんな年齢(とし)になっちゃったんだよね」


    縁は異なものとはいうけれど、この男性は、やっぱり奥さんの術中にまんまとはめられて、はずみで結婚してしまったんだろうな。

    奥さんは、男性のことが大好きで、たぶん、彼が見染めた女子事務員に、彼女への伝言は一切伝えていなかったんだと思う。

    意中の女性を確実に射止めたいと思ったら、仲介者を立てるのは考えものだ。

    男性の話は、たとえどんなに遠周りでも、ズクを惜しんだら本命を逃すことにもなり兼ねないという、ある種の教訓だな。

    とはいえ、その好きでもなかった女性と既に何十年も夫婦でいるのだから、結局、人の心なんてものは他人には計り知れないんだけれどね。



    

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Posted by ちよみ at 21:47Comments(0)ちょっと、一息 24

突然ギレする日本人

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    今日、あるクリニックの待合室でテレビを観ていたところ、NHKの「特報首都圏」という番組で、現代人のストレスが各所で暴力事件を引き起こしている----との話題を取り上げていた。

    暴力事件が多発している場所の一つが、駅だという。

    すれ違いざまに肩がぶつかったというだけで、相手を刺してしまった30代男性は、

    「いつも道を歩いていると、他人にぶつかられてイライラしていた。今日は、そのイライラが爆発してしまった」

    と、警察の取り調べに答えたという。また、プラットホームから電車待ちの人を線路上へ突き落した男性も、

    「とにかく、イライラしていた」

    と、話したらしい。駅構内で切符の買い方に戸惑っている人に助言しようとして、いきなりその男性から顔面パンチを浴びせられたという駅員もいるという。

    他の暴力多発場所には、病院もあるという。

    診察の待ち時間が長いことから、「いつまで待たせるんだ!」と、暴言を浴びせられた看護師や職員は全体の30パーセントから50パーセントにも上り、時には、

    「診察室へ出入りする事務職員の顔が暗すぎるから、あんな奴はやめさせろ!」

    などの、どう考えても患者本人には直接何の関係もないことで、キレまくられた職員男性もいたそうである。

    このような公共の場でのイライラ爆発が近年多くなっている背景には、社会の過剰サービスが影響しているのではないかと、番組ゲストの専門家は話していた。

    あまりに社会のサービスが良くなり過ぎたことに慣れ切ってしまい、それ相応のサービスが受けられなかった時の自制が効かなくなっているのも、キレる人間が多くなった原因の一つであるということだった。

    「昔の日本人は、もっと心にゆとりを持っていたし、他人に対しても寛大だった」

    と、専門家は話すが、では、どうして現代人は他人への寛容さを失ってしまったのか----といえば、

    「それは、現代人に寂しい人が多くなったからである」

    とのことであった。人の孤独感や寂しさは、そうでない人を見た時、瞬時にして怒りの感情に変わるのだという。

    世の中にイライラが蔓延している理由は、それだけ寂しい人が増えた証拠でもあるのだ。

    自分の周囲の幸福感が煩わしくてならない人たちは、自身の中の苛立ちをどんどん膨張させて行くわけで、あるところまで膨張しきった時、たまたまそばにいた人に対して、その感情が暴力的に爆発するのである。

    某会社は、そんな孤独を抱えがちの社員のストレス緩和のために、古民家を利用して社員同士の親睦を深めているそうである。

    一人が好きだという人たちも、結局はたった一人では感情のはけ口を見付けられないのである。

    「突然ギレ」という一種の現代病を克服するための特効薬は、とにかく孤独にならないこと----なのかもしれない。
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Posted by ちよみ at 18:14Comments(0)ちょっと、一息 24