文章の簡略化は難しい
2012年08月28日
文章の簡略化は難しい

暑い!!

台風のせいなのか、今日もとんでもなく暑い。
この炎天下、散歩をしていたら、日傘をさした近所の主婦とすれ違ったが、あまりの暑さに冷たい物をとり過ぎてお腹をこわしたと、苦笑いしていた。
で、映画「プロメテウス」の評判がかなり悪いようだ。
「人類の起源を探る」なんていう壮大なテーマと思いきや、実際は単なるエイリアンドラマだとか。しかも、日本語吹き替え版が相当にエグいらしい。
主人公の声を担当する剛力彩芽が、恐ろしく棒読みなのだという。
でも、ちょっと、怖いもの見たさで聞いてみたい気もするな。(笑)
ところで、皆さんは、次の新聞記事の文章を読んで、誰のことを書いているのかお判りだろうか?
見出しは、「錦織、16強ならず 勝つ光見えなかった」である。
第1サーブが入る確率が低く、ストローク戦も「ぐいぐい押された。そこで勝てないと自分のいいところが出ない」と、嘆いた。
まだ22歳だが、デルポトロは20歳で全米オープンを制した。世界ランクで20位以内に入り「もう若手ではない。上の選手に勝たないといけない使命感」が強くなったという。高みに行くには「安定感が必要。その中で攻めも混ぜないといけない」と課題を挙げた。
これは、新聞のスポーツ欄の記事の一部なのだが、この「世界ランクで20位以内に入り」とは誰のことを指しているのか、この文章を読んだだけで即座に判るだろうか?
わたしには、記事の見出しから、この文章が、テニスの錦織選手のことを書いているのだと判りながらも、世界ランク20位以内とは、この時の彼の対戦相手であるデルポトロ選手のこととしか思えなかった。
つまり、文章のつなぎに主語が入っていないために、どちらの選手のことなのかすぐには判然としないのである。
文字数制限のためなのか、近頃のスポーツ記事は特に文章が簡略化されていて、途中誰のことを書いているのか判らなくなることが多々ある。
プロ野球の記事に関しても、文章の中に球団名が一切出てこないため、Aという選手は何処の球団に所属しているのか予め知識がなければ、最後までチンプンカンプンということもあるのだ。
高齢者が読みやすいよう一文字を大きくしているので、その分文章が短くならざるを得ないために、選手の背景など読者が知っているものという前提で、記事は書きすすめられて行くのだろう。
しかし、上記のように見出しと写真で、錦織選手のことが書かれているというのは理解できても、途中の文章が誰のことを指しているのか判らなければ、読者は内容を勝手に解釈してしまい思い違いをしかねない。
この「世界ランク20位以内に入り」の前に、「錦織は」と、一言あったなら、たぶん勘違いをする確率はかなり減ったはずである。
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湖畔の人影
2012年08月28日
湖畔の人影

これは、先日、知人から聞いた不思議な話です。

会社の夏休みを利用して、信州のとある高原を訪れた二人の同僚女性社員は、その夜、宿泊したホテル主催のバーベキューパーティーに参加した。
ホテルの前庭には、手漕ぎのボートに乗ることも出来る美しい湖が広がっている。
宿泊客たちは、赤々と燃えあがる焚火の炎を囲んで、飲んだり食べたり、ビンゴゲームやギター伴奏で歌を歌うなど、互いに初対面同士にもかかわらず、大いに盛り上がり楽しんでいた。
そのうちに、女性社員の一人が、パーティーの喧騒から少し離れた場所で、羨ましそうにこちらを見ている二人の男性の姿に気が付いた。
彼女は、何処となく寂しげな二人が気になって、そちらへ歩み寄ると、明るく声をかけた。
「あなたたちも、一緒にやりませんか?ビールもお肉もまだたくさんありますよ~」

男性たちは、最初、遠慮がちに軽く手を横に振っていたが、女性が微笑みながら手招きすると、ようやくおずおずとそばへ近寄って来た。
「あなたたちも、このホテルへ泊られているんですか?」
女性が訊ねると、男性たちは小さく頷く。
夏山だというのに二人の男性の身形が、まるで冬山登山でもするかのような厚着だったことを、やや不自然には感じたものの、彼女は男性たちを、同僚女性のいるテーブルまで誘おうとした。
すると、にわかに男性たちの一人が、こんなことを言い出した。
「パーティーも楽しいけれど、これからぼくたちとボートへ乗りませんか?夜の湖も気持ちがいいですよ」
女性は、一瞬奇妙な胸騒ぎを覚えて躊躇うと、
「お誘いは嬉しいけれど、今夜はやめとくわ。あっちに友だちも待っているし・・・」
そう断った途端その男性の手が、女性の手首を、いきなりわし掴みにして湖の方へと引き寄せ始めた始めた。
「いいじゃないですか、ほんの小一時間だけですよ。付き合って下さい」
そういう男性の顔が、まるで憎悪に満ちたかの如くあまりに険しく歪んでいるのを見て、彼女の顔から血の気が引き、全身を恐怖が走った。
「やめて下さい!行かないって言っているでしょう!」
全身の力を込めて抵抗したが、男性の腕力が勝り、身体はずるずると湖の方へ引きずられて行く。
少し離れた場所にあるデザートテーブルのそばで、その叫び声を聞いた彼女の同僚女性は、徐々に湖の方へ近付こうとしている友人の様子を不審に思い、飲みかけのビールを放り出して慌てて駆け寄って来た。
「どうしたの!?」
「助けて!この人たち、しつこいのよ!ボートに乗るのなんて嫌だって言っているのに・・・」
女性が悲鳴に似た声で訴えると、同僚女性は怪訝な目つきで苦笑する。
「誰がしつこいって?誰もいないじゃない」
「え?」
振り返ると、そこには男性たちの姿など影も形もなく、ただ湖の真っ黒な水面が広がっていただけであった。
二人の男性は、一体何処へ消えたのであろうか?
女性は、思わず男性に掴まれていた手首を見た。
そこには何者かに握られたようなアザがくっきりと浮かび上がり、しかもびっしょりと濡れていたのだった。
この二人の男性は、一体何者だったのでしょうね?
女性をボートへ乗せて、どうしようと思ったのでしょうか?
満点の星が輝く夜の高原のバーベキューパーティーやキャンプファイアーは確かに楽しいですが、隣にいる人が本当にこの世の者なのかまでは確証が持てないという、不思議な話でした。
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