被爆地でオリンピック・・・・・369
2010年02月02日
~ 今 日 の 雑 感 ~
被爆地でオリンピック
被爆地である広島市と長崎市が、共同での2020年夏季オリンピックの開催地へ立候補を予定していた問題で、長崎市が1月15日にオリンピック招致の断念を表明した。
当初から、「共同招致など非現実的だ」との指摘はあったが、「共催は、1都市開催を原則とする」という五輪憲章に抵触するという日本オリンピック委員会(JOC )の通告で、やはり、断念せざるを得なかったという。
わたし個人としては、もしも、広島と長崎の共同開催が出来るなら、それは素晴らしいことではないかと思ったのだが、現実問題として、長崎の被爆者からは、反対意見があがっていたということに、むしろ驚いた。
広島市では、逆に、五輪招致運動を通して、世界に原爆被害者へ理解が拡大することは望ましいとの声が多いそうであるが、長崎市の被爆者の感情は、これとはまた違うものであるらしい。
2月に長崎市で開かれる核廃絶のための集会で実行委員長を務める土山秀夫元長崎大学長(84)は、
「オリンピックはあくまでお祭り。地道な核廃絶の取り組みにはそぐわなかった。断念を決めたのはよかった」と、話したという。
また、高校生の平和運動などを支援する被爆2世の平野伸人さん(63)は、
「田上長崎市長の平和運動に対する考えに疑問が残った。実現を本気で考えず、パフォーマンスと考えていたなら責任は重い」と、批判するなど、正直、わたしには、どうしてパフォーマンスが悪いのかが、いま一つ理解できないのである。
しかし、広島で被爆した、漫画「はだしのゲン」の作者である中沢啓治さん(70)は、
「2市でやるのは移動も大変で無理じゃないかと思っていたが、世界中の人が広島に来て、被爆の実相、核兵器や戦争の恐ろしさを知って欲しい」と、被爆地での五輪開催を強く望んでいるという。
テレビなどで報じられているニュースなどを観ても、原爆被害の実態が原爆投下国であるアメリカでは軽く報道されたり、原爆展が中止になったりと、真実が語られていない実情を知れば、どれほどパフォーマンス性が大きくても、まず、真実を世界に発信するためには、オリンピックは格好の宣伝媒体ではないかと思うのである。
たとえ、広島市にオリンピック招致がならなくても、それまでの長い誘致運動期間を、めいっぱい被爆地の実状広報活動に活用できる訳である。
世界中で、原爆被害の悲惨さや、核廃絶の重要性を啓蒙するチャンスが得られるのである。
これほどの好機を逃す手はないと、思うのである。
わたしの弟も、長野冬季オリンピックを招致するための活動を取材しに、イギリスのバーミンガムまで足を運んだことがある。そこでは、各国のメディアが集う中で、それまではほとんど知名度のなかった長野市の名前を、一夜にして世界の主要都市の一つとして配信することが出来たという。
オリンピック招致活動とは、それほどの大きな発信力を持っているのである。
ましてや、実際に開催都市として決定すれば、その絶大な効果は、ご存じの通りである。
たとえ、長崎市としては共同開催を断念したとはいえ、同じ被爆地として、また、競技会場の一都市として協力する心構えで、ぜひとも、今後も広島市のオリンピック招致活動に加勢して頂きたいものである。
タグ :七人の親方
わたし、追いかけます!・・・・・368
2010年02月02日
~ 今 日 の 雑 感 ~
わたし、追いかけます!



病院の外科外来の待合所の椅子に腰かけていたら、60代ぐらいの一人の女性が、女性看護師さんを呼び止めて、何処か深刻そうな口ぶりで話しかけていた。
「それ、わたしには、ちょっと・・・・」
「どうしても、ダメ?」
「ダメか、ダメじゃないか、わたしには、決められないので、担当の先生に直に訊いてみてくれませんか?」
看護師さんは、困惑した様子で女性を説得している。すると、女性は、
「だって、あたしからじゃ言いにくいじゃないの。先生を信用していないみたいで・・・・・」
「でも、〇〇さんから訳を話してもらわないと-----。今日、先生いらっしゃるから、会って行って下さい」
「え~~~!」
女性は、如何にも不満顔でその場から立ち去って行った。
そこへ、別の女性看護師さんが近付いて来て、その困惑顔の看護師さんに声をかける。
「何か、あった?」
「それが、〇〇さん、自分を手術して下さった担当の先生が、もうすぐこの病院をやめられるというので、そのあとを追いかけて、自分も別の病院へ移りたいって言うんですよ。新しい先生に診てもらうよりも、これまでの先生の方がいいっていうことで---。だから、そういうことなら、一応、今診て頂いている先生に、そのことを話してから、病院を替わってくださいって、お願いしたんですけれど、自分で言うのは気が引けるからっていうことで------」
「ああ、そういうこと-----。最近、そういう患者さん、よくいるよね。でも、黙って移られても困るしねェ・・・・」
もう一人の看護師さんも、溜息をつく。そして、
「でも、その先生を追いかけて、あっちの病院へ移っても、先生の方がそこもまた異動ということになれば、やっぱり、こちらで診て欲しいって、戻って来ることになるんじゃァないの?それなら、あとのことも考えて、一応、今の先生に話しておいた方がいいと思う」
「-----ですよね」
二人の看護師さんは、そう言いながら、仕事へと戻って行った。
この会話を、わたしの隣に腰かけていた年配の女性も聞いていたらしく、
「だいたい、最近の医者は、コロコロ替わりすぎるんだよ。少しは、ひとっところに腰を落ち着けようって気にならないのかねェ。まったく、来るたびに担当医の顔が替わっていたんじゃ、患者を診ているんじゃなくて、カルテを診察しているだけじゃないのかって思うよ。あたしだって、もう今の先生で、五人目だよ」
と、独りごとを言うように話してから、わたしに向かって、
「お姉さんは、何人目?」
いきなり振ってきたので、わたしは、慌てて、
「え~~と、外科だけだと、四人目です。でも、四人目の先生は、一番最初の先生ですから・・・・」
「へ~~、それは、ラッキーだったね。そんな人、珍しいよ」
そう感心すると、その年配の女性は、ちょっと怒ったような口ぶりで言った。
「あたしだって、出来れば、一番最初に診てもらった先生を追いかけて行きたかった」
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