上げ馬は動物虐待?・・・・・398
2010年02月17日
~ 今 日 の 雑 感 ~
上げ馬は動物虐待?
文化の伝承と現代の常識の兼ね合いを見つけることほど、難しい問題はない。
大抵において、伝統とか文化とかいうものは、現代の環境や社会感覚からすれば、かなりずれているものばかりだからである。
神の前では女性は不浄だとか、生け贄とか、トンネル工事中に女性はトンネル内に入れてはいけないとか、裸でなくては禊(みそぎ)にならないとか、とにかく、理屈に合わないことばかりが多いものである。
しかし、それが、昔からの習わしなのだから、日本文化を後世に伝えるためには、現代の常識とはかけ離れたこともいたし方ないと、これまでは、黙認されて来たものである。
ところが、ここに、そういう伝統文化は、もう継承する必要はないというお上からのお達しが下ることにもなりかねない事態が起きている。
三重県無形民俗文化財に指定されている多度大社(たどたいしゃ・桑名市)などの「上げ馬神事」が、動物虐待にあたるとの声を受け、馬を興奮させるために叩いたりする行為はしてはならないと、いうのである。

同県教委が、「伝統だとは思うが、現代風に改める必要があるのでは」と指摘。
県文化財保護審議会にこれまでの経緯などを報告した上で、9月に指定の当否を判断することになったものである。
この「上げ馬神事」は、地元7地区の青年会などでつくる「御厨(みくりや)」と呼ばれる組織により大社に奉納され、高さ約2メートルの土壁を駆け上がった馬の数で豊作凶作を占うという神事で、馬を興奮させるため竹やはんてんでたたいたり、ササの葉で急所を刺激することもあるという。
1996年以降、複数の動物愛護団体が「動物虐待に当たる」と主張し、指定取り消しを要望していたため、県は、「御厨」との協議や馬の習性を学ぶシンポジウムを通じ、「不適切な扱い」の改善を求めてきた。
しかし県によると、昨年もたたくなどの例があったということで、県内の動物愛護団体代表の女性(62)は「見物人から『かわいそう』『もう来年は見たくない』との声も聞こえる。誰が見てもいい祭になるよう考えてほしい」と、訴えているという。
ある御厨関係者は、取材に対して、「虐待などない」と強く否定してはいるものの、別の御厨関係者は「馬が痛がっているのを調子が上がっていると勘違いするOBが出しゃばり、急所を刺激するなどしてしまう」と明かし、「しかし、今の青年会のメンバーはそんなことはしない」とも話しているらしい。
一方、奉納される側の多度大社は、難しい立場に「コメントは差し控えたい」と口をつぐむ。
指定継続には、虐待を疑われる行為の改善がポイントであり、県教委は御厨への獣医や専門家の紹介を通じて、疑われる行為のないよう促しているという。
とはいえ、代々に渡り継承されてきた方法が最善であり、それを守り続けることが最も重要なのだと考える祭事のOBたちにしてみれば、馬を刺激したり挑発したりすることなしに、祭りの意義はあり得ないと考える者もいるだろう。
こうしたことを考えると、信州諏訪の御柱もまた、危険極まりない祭りの一つであるため、木落としは危ないので、木の上に人は乗らないように-----と、いうような要望がなされることも、今後、ないとは言えないのである。
それでも、形や方法を変えてでも祭りを続けるべきか、それとも、伝統が守れないのなら、いっそのこと祭りそのものをやめてしまうか、今の常識の中で、伝統文化は、極めて微妙な位置にあるのではないかと思われる。
この「上げ馬神事」も、馬を刺激しなければ、高さ約2メートルもの土壁を駆け上がることなど不可能だと、いう声もあると聞く。わたしも、テレビ番組でこの神事の様子を観たことがあるが、確かに、ただ馬を走らせただけで駆け上がれるような壁ではないと思った。
もちろん、騎乗の少年たちも命がけであり、実際、駆け上がりに失敗し、落馬して怪我をした者もいたという。
動物愛護が大事か、伝統文化の継承が大事か-----?あなたは、どう思いますか?

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退く勇気・藤森由香選手・・・・・397
2010年02月17日
~ 今 日 の 雑 感 ~
退く勇気・藤森由香選手
冬季オリンピックには、最も単純だが、最大級に興奮できる競技がある。
スキー・クロスとスノーボード・クロスである。

この両種目は、大波の如く高低差を付けた難コースを、数人の選手が一気に滑り降りる、正に手に汗握る雪上のFー1 である。
このスノーボード・クロス日本代表として今回のバンクーバー五輪に出場を予定していた藤森由香選手(23・アルビレックス新潟・長野県長和町出身)が、17日、医師から、「これ以上転倒すれば、脳に障害が残る危険性が高くなる」と、告げられ、無念の欠場を決めたというニュースがあった。
藤森選手は、12日の練習中に転倒して、頭部を強打。退院後は、歩くことも辛かったと打ち明け、その後、練習を再開はしたものの、恐怖心が先立ち、足の動きが戻らなかったと告白しているそうである。
しかも、練習中に再び転倒し、医師のチェックを受けたが「目の焦点があっていなく、瞳がしっかりとまらない。これ以上転んだら脳に障害が残る危険性が高くなる」と診断され、ついに、ドクターストップがかかったのだという。
藤森選手は、これが二度目のオリンピック出場となる。
「何がなんでも出たかった」と複雑な心境を明かしたが、出場しても「80%の力も出せないと感じた」と、述べ、棄権については、彼女自身、納得している様子ではあるらしい。
そして、彼女の書いているブログの最後には、「みなさんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました」と、感謝の気持ちを綴っているという。
しかし、わたしは、彼女が棄権を決めたことは、実に、賢明であり、その歯がゆさは想像に余りあるが、そうした彼女の決断こそが、真のアスリートの証だと思うのである。
競技に必要なすべてのことを細部までチェックし尽くし、そこに、ほんのわずかな不具合でもあるなら、その不具合を加味して冷静な結論を導き出す。-----それが出来てこそ、本物なのではないだろうか?
棄権は、臆病者の結論だとばかりに、ただがむしゃらに突き進み、運を天に任せるというのは、真のアスリートのあるべき姿とは到底言いがたい。
他人のためではなく、あくまでも自分自身にために、これからの長い人生を考えることの方を優先した藤森選手の気持ちは、本当に、勇気ある者の証明であったと思うのである。
彼女が、今後も競技生活を続けるのか、それとも、これを機にスキー競技からは身を退くのかは、判らないが、それでも、彼女が自分の身体を優先に考えたということは、彼女のこれまで培った経験という財産を、若い世代に伝えられるということでもある。
だから、決して、国民に謝ることなどないのである。
彼女という得難い人材がいるということが、既に、日本の財産なのであるから-----。

*** 写真、いつも不鮮明ですみません。<(_ _)>
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