美容院へ行くと言ったら怒られた

美容院へ行くと言ったら怒られたface08




    「今日、美容院へ行って髪を染めるといったら、旦那に『何処にそんな金があるんだ!?』と、怒られた」

    共同浴場で、一人の主婦が嘆いていた。

    「生まれてからこれまで、美容院へ行っちゃいけないなんて言われたことなかったから、もうショックで、心臓がどうかなりそうだった」

    と、悔しがる。

    でも、その主婦も、確かにこんな不景気になれば少しでも贅沢を控えなくてはいけないことは判っているようだが、70歳を過ぎてここまで落ちぶれた生活が待っているとは思いもよらなかったと、落胆する。

    すると、もう一人の主婦が、

    「うちだって同じだよ。今まで行っていた美容院は、染めるだけで5800円もとったから、そんなお金はもったいないと思って、家で染められる染め粉を買うことにした」

    と、苦笑した。

    「おばあちゃんもまだ生きているし、これから自分らだっていつまで元気でいられるか先は判らないから、出来るだけ切り詰めようと思えば、一番手っ取り早いのが髪いさんや化粧品のお金だからね」

    これを聞いた先の主婦は、

    「もう、情けないったらない。惨めだ・・・。何で、こんな世の中になっちゃったんだろう」

    と、怒りを漏らす。

    「あんたも、市販の毛染めにしなよ。安上がりだし、それなりに染まるから」

    そう言われても、主婦はどうしても納得が出来ない様子で、

    「どこか、安く染めてくれる美容院ないかな?」

    「自分で染めるのが嫌なら、あたしがやってやろうか?」

    「・・・・・」

    そうは言われても、彼女はもう一つ我慢がならない様子で、即答を避けた。

    高度成長期の好景気をバリバリ稼いできた世代の主婦たちは、よもや自分たちの老後がこれほど不景気に見舞われるとは思いもよらなかったために、節約のため美容院へさえ思い通りに通えなくなるなどとは、想像すらしてはいなかったはずである。

    これまできっちりと身仕舞を正して生きて来た女性にとって、たかだか髪を整えられないなどということは驚天動地の出来事に他ならない。

    「白髪のままで生きなきゃならないくらいなら、死んだ方がマシだ」

    主婦は、吐き捨てるように呟いた。




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Posted by ちよみ at 18:02Comments(0)ちょっと、一息 28

温泉場の今昔

温泉場の今昔yama




    「渋温泉さえよければ周りの安代温泉や角間温泉、上林温泉がどうなろうと関係ないのかねェ。町長さんが渋温泉の人だからかね・・・」

    近所のおばあさんが近頃の渋温泉一辺倒のテレビ番組に苦言を呈していた。

    そういえば、これと同じことを言う人が他にもいた。

    「もう、渋温泉の番組、見飽きたよね。いつもいつも同じ顔ぶればかりが出演していて、山ノ内町内には、まだまだいい所がたくさんあるのに、あ~またか・・・って感じ」

    地元の人たちに呆れられては宣伝番組も逆効果だ。

    これからの季節、テレビ局には、今度はぜひ渋温泉以外の山ノ内町の素晴らしさをどんどん紹介してもらいたい。 

    このブログでも何度か書いて来た通り、渋温泉は格式も高く、確かに素晴らしい歴史のある温泉場だが、安代温泉や角間温泉の庶民的な情緒も魅力的には決して引けを取らない。

    渋温泉と安代温泉は一本の道でつながっている。

    しかしながら渋温泉は安代温泉のことを一言もPRしようとしない。

    何故だろう?

    渋温泉は沓野区で、安代温泉は湯田中区だという理由だけではないようにも思う。

    戦後、世の中には深刻な食糧難が襲い、敗戦の放心状態に破滅的な感情が渦巻いて、人々が何に希望を見出したらよいか判らなかった混乱の時代、戦地から戻った安代温泉の若者たちは考えた。

    「温泉祭りをやらないか?」

    「温泉祭りって、何をやるんだ?」

    「とにかく、何でもいい。皆が楽しく騒げることをやるんだ。元気が出れば、やる気も起きる」

    そこで、安代温泉の若者たちは沸き出す温泉を樽に入れてそれを担いで街中を練り歩いた。

    腕に覚えのある者は、横笛や三味線、太鼓なども持ち出して愉快にはやし立てる。

    これには、近所の人たちも何事かと見物に集まると、一気に街は足の踏み場もないほどの人々で埋め尽くされ、お祭り騒ぎで盛り上がった。

    すると、この様子を見ていた渋温泉からも、

    「おれたちも、温泉祭りに加わらせてくれないか」

    との声があがる。

    「もちろんだ。どうせやるなら、安代、渋みんなで派手にやろう」

    安代温泉の人たちは、一も二もなく承諾し、安代、渋が一緒になって戦後の温泉場を活気づけたのだった。

    そうやって、戦後の混乱期の安代・渋温泉は再び温泉場本来のにぎわいを取り戻したのである。

    観光地は、何処も持ちつもたれつでやらなければ、景気回復などは望めない。

    自分たちだけ潤えばいいというような利己的な考え方では、先が見えている。

    今の渋温泉があるのも、過去に近隣の温泉場が協力を惜しまなかったからであろう。

    そういうかつての恩を決して無にして欲しくはないのである。

    因みに、今日からSBCで始まった再放送の韓国ドラマ「天国の樹」の撮影は、角間温泉や湯田中温泉が舞台。

    劇中に登場する主人公たちが通う高校は、山ノ内中学校を使用している。




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Posted by ちよみ at 15:36Comments(0)ちょっと、一息 28