今日の雑感 8

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     「信用できない人間は、簡単に人のことを『好き!』という奴だ」

    と、ある人は言う。

    安易に人を好きになる人は、安易に人を裏切る人でもある----と、いうのがその理由だ。

    近頃は、「好き」という言葉をあまりに容易く口に出し過ぎるような気がする。

    CMにも、「あたし、これ好き!」という女性が登場するものがあるが、一瞬見ただけの物を、どうしてそんなに軽く「好き」といえるのだろうか?

    そういう自分が人から可愛らしいと思われるのではないかという、狡猾な打算が働いているとしか思えない。

    その場限りの浮ついた言葉ばかりが飛び交う世の中は、とても信頼できるものではない。

    そして、そういう浮ついた人間も、またしかりである。




     何か問題を持ち出しても、最後は口癖のように、「俺には関係ないけどね・・・」という人がいる。

    関係あるから、その話題を出したのだろうに、自分は何とも思っていない----と、無理やり懐の深さをアピールする。

    どうして、そこまで虚勢を張るのか?

    最近は、とかくこういう自己保身タイプの人が多い。

    どれほど格好つけて冷静さを装っても、動揺は見え見えだ。

    傍から見ていても、お気の毒に・・・と、思う。

    そういえば、祖母が生きていた時、いつも人を見下すような態度で無言を決め込んでいたある男性を見て、こう言った。

    「何を聞いても自分はどう考えるかを言わずにいる者は、黙っているので一見頭がよさそうに思えるが、実際はおつむの中が空っぽだから物が言えないだけなんだよ」

    なるほど、そうだったのか・・・と、やけに納得したものである。




     それにしても、この寒さは異常だ。

    共同浴場で一緒になる近所のおばさんは、下着に使い捨てカイロを三つも貼り付けていて、まだ寒いと言っていた。

    わたしが子供の頃の冬の寒さは、こんなものじゃなかったと思うのだが、母親などは、

    「寝ている間に掛け布団の上に霜が降りた」

    と、言うくらいだから、相当なものだったのだろう。

    しかし、それでもこれほどに寒さは感じなかったのは何故なのか?

    「人の気持ちが常に前向きだったからじゃないの?」

    と、分析する人もいる。

    人間は、何かに目標を定めて頑張っている時、苦労を苦労とは感じないものである。

    かつての日本人には、頑張れば何とかなるという期待や希望があった。

    しかし、今は、どんなに一生懸命まっとうに生きても、行き着く先は老老介護に明け暮れる極貧生活かもしれないと思えば、日々気持ちの張りなど持てはしない。

    気持ちがしぼんでいるので、寒さも余計厳しく感じられるのであろう。

    「食べて寝て、トイレへ行ってまた食べて----人生それの繰り返し。生きているのがバカバカしくなる」

    三つもカイロを張り付けているおばさんは、そう言ってアハハと笑った。



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Posted by ちよみ at 17:28Comments(0)ちょっと、一息 35

病院で見かけた女性

病院で見かけた女性volunteer



    喉の辺りをしきりに触りながら、隣の人と話をしている50代とおぼしき女性がいた。

    病院内は、暖房が効いているとはいえ、それでも上着なしでは肌寒い。

    にもかかわらず、その女性はセーターを肘まで腕まくりして、平気な様子だ。

    いや、他のことに気を殺がれているので、寒さを感じないのかもしれない。

    「あたし、どうも甲状腺がおかしいらしいんだよね。腫瘍らしきものがあるんだって。今、首のエコー検査して来たんだけれど、甲状腺の機能が亢進しているのか、それとも低下しているのかも、よく判らないんだそうだよ」

    と、いうような内容を隣に座る年上らしき女性に、一生懸命訴えている。

    「身体の調子、悪いところあるの?」

    年上女性が訊く。

    「ううん、全然、何ともないんだよ。いたって元気。腕の骨に石灰が溜まって肩が上がりづらくなることはあるけれど、風邪もひかないし、頭痛がするわけでもないし、疲れるなんてこともないし・・・」

    女性は、そう言ってから、

    「でも、このままにしておくと、腫瘍が大きくなってしまって、物が飲み込みにくくなるということもあるらしいんだよね」

    言葉は元気だが、端々に不安がのぞく。

    確かに、見たところごく健康そうな女性だ。まさか、自分の甲状腺にそんなものが出来ているとは思えないだろう。

    わたしの知り合いにも、甲状腺腫を持っていて定期的な通院をしていた女性はいるが、その人のものは良性であまり大きくなるようなものではなかったので、今では一年ごとの経過観察で済んでいるという。

    しかしながら、いきなり「あなたの甲状腺に腫瘍があります」なんて言われれば、誰でも瞬間はパニックになる。

    年上女性が先に帰ったあとも、その女性は何度も喉の辺りをさすりながら、困惑顔で椅子にかけていた。

    身体に何の異常も感じないのだから、何か解せない気分もあるだろう。

    彼女の様子を横目で見ながら、他人事とは思えない気がして、わたしも思わず首の手術痕を触ってしまった。



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Posted by ちよみ at 11:41Comments(0)ちょっと、一息 35