教員免許・・・・・575

~ 今 日 の 雑 感 ~


教員免許



    わたしには、教員免許取得にまつわる、ちょっと変わったエピソードがある。

    普通-----とはいっても、どういうものが普通なのかは、よく判らないが、大学へ入り、教職課程を履修しようと思う者は、一学年から既にその課程に必要な単位を少しずつ取得して行くのが普通なのだそうだ。

    さもないと、その履修単位があまりに多いので、一度には取りきれなくなってしまうからなのだという。

    そんな訳で、もともと教育学部へ入っている学生は別にして、他の学部や学科で教職を目指そうと思う学生は、自分の専門分野+教員養成課程を履修しなければならなくなるのである。

    よって、勉強も大変になるので、入学から卒業までかけて教職課程を徐々に取って行くという方法が当たり前なのだ。

    わたしは、大学に入学して周囲の友人たちが教職を取り、地道に単位を重ねていた時も、ほとんどそれに興味がなかったので、一人のほほ~んと、一、二年生を過ごしてしまった。

    しかし、三年になる前の春休み、ふと考えた。

    「ちょっと、待てよ。このまま、卒業してしまっても何の資格もなしではもったいないぞ。取れる物は取っておかないと、チャンスは今しかないんだからなァ・・・・」

    そう思い立つと、いても立ってもいられずに、新学期が始まった時、即、大学の教務課へ飛び込んだ。

    「わたし、今年三年なんですけれど、遅ればせながら教職取りたいんです!」

    教務課の係の人の反応は、
 
    「お前は、アホか!?」(ーー;)

    と、いうような目でわたしを見ると、「そんな前例は、ありませんよ」と、にべもない返事だった。

    「でも、出来ないことはありませんよね?」

    「そりゃァ、出来ないことはないけれど、ものすごく大変なことになりますよ。卒業までには授業もかなりの単位数こなさなければならないし、一年生たちの教室で講義を一緒に受けることにもなりますからね。下手をすればあと二年では取れないかもしれませんよ」

    教務課の係の人は、やめた方がいいんじゃないかと言いたげだったが、

    「大丈夫です。わたし、寮生ですから一日中大学内にいるようなものですし、やらせて下さい!」

    そうして、教職課程を取ることに成功した。

    それからというもの、わたしは、ほぼ毎日大学内に入り浸っているような生活になったが、どうせ他にやることもないし、他の学生たちのようにコンパや部活、アルバイトに忙しいということもなかったので、そんな無謀なことをしながらも、案外有意義な学生生活を謳歌していたものである。

    それに、その頃は、『新聲会』という学内文芸誌を発行する会のメンバーの一人にもなっていて、休みの日はその活動にも加わっていた。

    四年生の時の教育実習時には、ちょうど中間試験が重なったために教授にお願いしてレポート提出で乗り切った。

    こうして、「前例がない」とまで言われたにもかかわらず、無茶を承知のたった二年間で取得した教員免許だが、今の今まで実際に活用する機会には巡り合わずにいる。

    でも、その大忙しの学生生活があったからこそ、あの頃は充実していたと振り返ることが出来るのかもしれない。

    人間、若いうちは忙しすぎるくらいでちょうどいいのだ。

    だから、『無駄』だと思うことも、積極的に貪欲に吸収しておくこと----それが大事なのだと思う。

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重い腰を上げさせる方法・・・・・574

~ 今 日 の 雑 感 ~


重い腰を上げさせる方法





    出版社に勤めているあなたは、作家である友人にどうしてもやって欲しいことがあり、それを頼みたいのですが、その友人はただでさえ忙しい身ですから、二つ返事でOKしてくれる訳がないことは判っていました。

    しかし、それでも諦められないあなたは、思い切ってその話を友人に持ち出しました。

    「なあ、おれ、どうしてもお前に今度出版する本の推薦文を書いてもらいたいんだよ。お前、売れっ子作家だから簡単には時間が取れないことも判っているんだけれど、よろしく頼むよ」

    しかし、おそらく、こう言われただけでは、友人だって、とても即座に「ああ、いいよ」とは返事をしません。

    では、こんな時、どんな言葉を付け加えたらいいかといいますと、あなたの台詞の中に、「友情」や「責任」「良識」といった道徳に関係する一言を盛り込むことが大事なのだそうです。

    つまり、相手のモラルを刺激するといった方法が効果的なのです。

    そこで、あえてこういう台詞を付け加えてみます。

    「お前、昔から本当に面倒見のいい奴だったからな」

    「お前の推薦文じゃなければ、編集長も出版にGOサインを出さないとさえ言っているんだよ」

    「お前は、困っている人間を見捨てるような奴じゃないよな」

    こう言われてしまっては、友人もそれでも否とは言えないはずです。

    そして、最後に、こうダメ押しをしておけば、間違いなく友人の重い腰を上げることに成功するはずです。

    「期待しているからな。頼んだぞ」

    

    人間の心理として、きみじゃなければダメなんだ-----と、責任の範囲を特定されることで、さらに断わりにくくなるという要素を持っているのです。

    その上、それが出来なかった場合は、どれほどの損害が起きるかということを具体的に話すことで、相手の中に自分と同じ危機感を植え付けることができるのです。

    そして、相手がその気になり始めた時に大事なことは、相手がどのような行動に出たらいいのかを詳細に想像出来るようなシミュレーションのためのサンプルを、間髪をいれず提供することなのです。

    
    実は、わたしがかつてSBCラジオで使うドラマの脚本を頼まれた時、ディレクターの方が、正にこの手法を使われました。

    「脚本なんか書いたことがありません・・・・」と、二の足を踏むわたしに、その男性ディレクターは、すかさず、ラジオドラマのシナリオ集を数冊テーブルに置いて、「これを見て、こんな風に書いてくれれば充分だから----」と、説得されたのです。

    こちらは、そうか、だったら書けるかな?----と、いう気持ちになり、その仕事を引き受けた経験があるのです。

    相手の重い腰を上げさせて、こちらの意図する仕事を実行させるには、こんな方法を駆使してみるのも一つの手なのです。
    

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